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開店 3

 昼食目当てのお客さんたちが店の中へと次々と入ってくる。

 外に並んでいた全ての者たちが店の中に入れるわけではもちろんないので、席に座れる人数だけ中に入れる。他の者達には申し訳ないが待ってもらうしかない。

 これだけ並んでいるのは初日だからだろうか。……もしこれからもずっと毎日のように、人が並ぶのならば対策を考えなければならないだろう。

 注文に応じて俺は料理を作る。ネノとメルは給仕に徹していた。あとは会計はネノがやってくれている。メルに関してはお金の計算が出来ないので接客だけしている。ネノとメルはお客さんによく話しかけられている。二人とも、とても人気者だ。

 ネノが人気者なのは、夫としたら嬉しいものだ。俺はネノの事が好きだから、ネノが好かれているのは素直に嬉しい。

 まぁ、ネノが嫌がるほどに群がられると困るけどさ。

 それにしてもどんどん人がやってきて、予想外で驚く。まぁ、俺の料理を美味しいって言ってもらえるのは嬉しいけれど。

 美味しい、と言われると嬉しい。その気持ちが芽生えたのは、ネノに美味しいと言ってもらえたからだ。誰かが自分が作ったものを美味しいということ、それが嬉しいと知ったからこうして店をやろうと決めたのだけど。

 注文をネノとメルが取ってくれるので、それを順番に作っていく。注文の順番が前後してしまったら大変だから、間違えないように作っていく。

 お会計を終えてお客さんが去ったと思えば、また入ってくる。

 それが途切れることもなく続いていく。

 中に客を案内するのもネノとメルがやってくれていた。

 やってくる者たちは、老若男女問わずだが、メル目当ての女性陣も多くみられた。人の姿をしたメルが美少年なのでキラキラした目で見つめている。中には危ない目をしているものもいるけれども、実害がないならばよいだろう。

「レオ、次はね――」

「レオ様、こっちはこれだよ!!」

 ネノとメルの声を聞いて、反応を示していく。これだけ大量にご飯を作ることは今までなかったことだから、あわただしさに驚いた。とはいえ、普段から体を動かしているから疲労するほどではないけれども。

 それはネノやメルも同じだ。二人とも体力が多いから、接客をほぼ休まず続けていても疲れた様子はない。

 とはいえ、短い期間で開けている昼ご飯の時間だけでこんなに忙しくなるとは本当に思ってなかった。

 一度、昼の時間が終わったらネノと一緒に色々と話し合いをして修正をしていかなければならないだろう。どうせなら、とことんお店が有名になるまでやりたいし。俺がお客として此処に訪れた時に、どんな風な接客をしたいかで考えた方がいいだろう。

 接客業ならば、その方がきっとうまくいくだろうし。とはいえ、俺自身も宿に泊まった事とかほぼないからな。そのあたりはネノの方が詳しいだろう。『勇者』として旅をしていたわけだしな。

 それにしても忙しいけれど、充実している初日であると言えるだろう。作りながらそんなことを考える。

 そうやって過ごしていたら、急に外が騒がしくなった。

 ざわざわとした声が聞こえてきて、何事かと少し驚く。

「メル」

「うん、レオ様、ちょっと僕見てくるよ!!」

 メルの名を呼べば、メルは元気よく答えて外に出て行った。

 ……結構、忙しく動いているのだが、メルは本当に元気だ。俺やネノと同じぐらい体力があるんだろうか? 今度、体力比べでもしてみたいななどと思った。

 俺とネノが中で対応をしていれば、外の様子を見に行っていたメルが「レオ様ー! ネノ様ー! どっちか来て!!」と、呼ばれた。

 食堂の中にいるお客さんには、料理が行き届いているので俺が外に出ることにした。

 外に出れば、見知った顔が居た。


「おう、レオニードよ!! 店が始まったのだと聞いて俺がやってきてやったぞ!!」



 ……何故か仁王立ちをして、偉そうに腕を組んで得意げに笑うのは第二王子であるテディである。

 テディは数多く並んでいるお客さんたちをかき分けて、店の前にいる。というか、先に並んでいるお客さんをかき分けるなよ。

 周りが道を開けたからと中に入る気満々なテディを止めようとしているのは一人の騎士である。ネノと一緒に旅した騎士かな? と思う。

 とりあえず、

「中に入れて、飯を食わせろ。此処までやってきて腹が減っているんだ。俺はレオニードの料理を食べようと道中に我慢を―――「いや、テディ、ちゃんと並べよ」

 中に入る気満々のテディにそう言っておいた。テディはショックを受けた表情だが、それに「食べたいなら並べ」と一言告げて、俺は店の中へ戻るのだった。

 その後、無理やり入ってくることはなかったのでテディは大人しく並んだか、此処で食べるのを諦めたのだろう。

 そう考えながら戻ってからは料理を作るのを続けた。






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