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『勇者』の帰還 3

ドラゴンの大きさ変更。

 ネノと一緒に山に入る。

 俺達にとって庭のような山で、自由に動き回る。

 ネノが『勇者』になるまではいつも入っていた俺とネノの庭。俺達は此処で、魔法の練習をしたり、剣技を磨いたり、魔物を退治したりずっとしていた。

 この山は標高がそれなりに高くて、上に登れば登るほど魔物が強くなっていく。

「レオと一緒……楽しい」

「ああ」

 足を動かして共に森を駆けながらそんな会話を交わす。

 ネノは今だからわかるけれど『勇者』としての素質を持ち合わせているからこそ、学んだ事をどんどん吸収していった。俺とネノは最初は村で魔法を使える村人から魔法を学んだり、兵士から剣術を学んだりと村の中でしていた。ネノは昔から学ぶ事が好きだった。自分が出来ない事を出来るようになるとネノは満足げに笑っていた。

 俺もネノに置いていかれたくなくて、必死に頑張った。

 ネノが「魔物狩りたい」と言い出した時も、正直まだ子供で魔物を狩りに行く事は恐ろしいと思ったけれどネノを一人で行かせたくなかったから一緒に入ったんだっけ。ネノは当時は『勇者』だとわかって居なかったがとても強かったから一人で入ってもどうにでもなるのは分かってた。本人も俺に止められても一人で入る気満々だった。その頃のネノは……俺の事を、好きでもなかったんだと思う。俺がついていくと言った時には勝手にすればって態度だったし。まぁ、俺はネノの事をその頃から好きだったからついていったんだけど。

 懐かしいなぁと昔の事を思い出すと笑みが零れた。俺にとってネノとの思い出はなんでも大切なものなのだ。

「レオ、どうしたの?」

「ネノと初めて山に入った時の事を思い出していただけ」

「ああ……そうなの」

「うん。あの頃のネノ、俺にそこまで興味なかったなって」

「……ああ、うん。でも、今は大好き」

 ネノは素直に当時、俺にそこまで興味がなかった事を口にした後、こちらをまっすぐに見て可愛らしく大好きと言ってくれる。ああ、可愛い。こんな山の中だけど、思わず引き寄せて口づけしてしまったぐらいには可愛かった。

「ん……レオ、此処、山だよ?」

「ああ、だからキスだけ」

「続きは家帰ってから、ね?」

「……ああ」

 本当にネノは可愛い。上目遣いでこちらを見てくるネノが可愛い。ネノが傍に居てくれて、こうして山の中を前のようにネノと共に過ごせる事に幸せを感じている。

 ネノと一緒に山菜を集めたり、果物を取ったりする。途中途中で見かけた魔物を討伐したりしながら、山の頂上に向かっていく。

「お肉、美味しかったって言う」

 俺とネノが初めて山頂に行った時に出会ったドラゴン。俺がネノの帰還のためにと尻尾肉をもらったドラゴンが山頂付近に住んでいる。ネノにこっぴどく負けてからというものの、絶対服従になっているドラゴンである。ちなみに俺は初めてドラゴンに遭遇した時、死にかけた。ネノが居なかったら俺はその時、死んでいたと思う。まぁ、悔しくてその後、必死になって頑張った結果、そのドラゴンに勝てるようになったんだけど。

 そのドラゴンに、ネノは尻尾肉が美味しかったという事を本人に伝えにいくつもりなのだ。

 まぁ、ドラゴンは俺達にいつか殺されるのではないかとはらはらしているみたいだけど俺達としてみればドラゴンはもう一人……いや、もう一匹の幼馴染みたいなものだから美味しいけど殺す気はない。

「ドラ吉……元気?」

「ああ、元気だったぞ」

 ネノはドラゴンの事をドラ吉と呼んでいた。

 山頂を目指しながら、二人で足を進める。途中休憩は寝る時以外は挟まなかった。山頂まで流石に一日ではつかないので、数日かけて登る。もう少し無理したらすぐにつくけれど、今回は久しぶりに二人で山に入るのだからゆっくりドラゴンの所へ向かおうという話になっていたのだ。

 夕食は《時空魔法》で作った《アイテムボックス》の中に入れていた料理道具を取り出して作った。この山の中で手に入った山菜と手持ちの香辛料を使ったスープだ。少し辛味の利いたものだ。

 食事をとった後は、魔物避けの魔法具を使ってから眠りについた。魔物避けの魔法具は俺とネノで昔作ったものだ。時々手入れをしているので、まだ使えている。

 魔物避けの魔法具だけでは色々問題もあるかもしれないので、人が入ってきたらすぐに分かるように障壁も張っておく。

 寝床を出したりもやろうと思えば出来るけれど、昔のように過ごそうという気分だったので外で寝るようの寝袋で寝た。

 何日かそんな風に過ごしながら山頂に向かう。それまでに倒した魔物は血抜きして《アイテムボックス》に入れる。《アイテムボックス》は中で分類分けが出来るようにきちんと改良してあるので問題はない。

 山頂に近づけば近づくほど魔物の数は減っていく。それはドラゴンの事を恐れていて、あまり他の魔物が近づかないからだ。

 そんな事を考えていれば、ドラゴンの姿が見えた。

 それは巨大なドラゴンだ。美しい透き通るような透明度を持つドラゴン。六メートルを超える巨大なドラゴンだ。

「――ドラ吉」

 ネノはドラゴンの事を可愛がっているので、ドラゴンさんの所へ駆け寄る。

 ドラゴンの大きな体にネノが魔法を放った。ドラゴンはそれにばっと飛び上がる。

『はわわああああああ、ちょちょちょ、いきなりはやめて。というか、レオ様、とめて、とめて!!』

 ドラゴンからそんな思念が聞こえてきたが、ネノが楽しそうにするので俺は止めない。ドラゴンにとっては涙目になる事かもしれないけれど、ネノにとってはドラゴンとの遊びなのだから。

 それからネノが満足するまで、ドラゴンは遊ばれてた。



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