表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/221

村人たちから見た二人について

 『勇者』ネノフィラーとその夫が村から飛び出していった。

 俺はこの村に腰を下ろして数十年になる。ネノフィラーとレオニードの両親のことも知っている。親をはやくに亡くしてしまった二人の事は、村人総出で育てたようなものだ。とはいえ、あいつらは昔から規格外だった。

 レオニードはまだ子供の頃は普通だったが、ネノフィラーに関しては最初からああだった。

 『勇者』だと知っている今は、その力も当然かと思うが――、正直村人たちの中ではネノフィラーが異常だったために、怖がっているものもいたのだ。何か悪いものでも取り憑いているのではないか……と今考えれば笑い飛ばせる話を本気で口にしていた者もいたのだ。

 俺としてみれば、幾ら子供らしくなかったり強かったりしたとしても村の子供は村の子供だと思っていたので、そんな奴らには反論していたが……。

 まぁ、今ではそういうのもなくなっている。

 というのもレオニードは幾ら子供らしくなくても、驚くほどに強くても、興味を持たれていなくても、ネノフィラーのことをいつも追いかけていた。追いつきたいと口にして、「ネノ」「ネノ」とその名を何度も呼んで。今の二人を見ていると信じられないかもしれないが、昔はネノフィラーはレオニードの言葉を無視したり、置いていったり、興味がなかったのだ。レオニードの名前もちゃんと覚えてなかったし。

 それがいつしかレオニードのことを「レオ」と呼ぶようになって、一方通行だったのが両方になった。

 あの二人の間に何があったかとかは、正直言って俺にはすべてが分かるわけではない。ずっとあの二人の事は見守ってきたが、常に傍にいたわけではないから。

 気づいたらドラゴンと仲良くなってたり、気づいたらレオニードも強さがおかしなことになってたり……、本当にあの二人は少し目を離していた隙に色んな事を起こしている。

 レオニードに心を許してからのネノフィラーは年相応になってきて、レオニードと仲良さげにしている姿はほほえましかった。そういうのを見て、何か悪いものでも取り憑いているのではといっていた連中もそんなことは言わなくなっていった。

 元々こんな辺境の村で一生を終えるような奴らではないと思っていたのだ。それは村人全員の総意であった。

 だって明らかに異常なほどの強さを二人は持っていたのだ。だから結婚して村を出ると聞いた時も「頑張れよ」という言葉しか出てこなかった。

 その後に、ネノフィラーが『勇者』だと発覚したのは驚いたけれど。

 『魔王』を倒す旅って、正直言って人によっては死んでもおかしくないような旅だ。それなのにネノフィラーもレオニードも『魔王』討伐ぐらいでネノフィラーが死ぬなどとは思っていないようだった。

 ネノフィラーもレオニードも何だか出稼ぎに出かけるような雰囲気で、ネノフィラーは「さっさと倒してくる」というし、レオニードは「じゃあ待ってる」と軽く言ってのけたのだ。本当にあの二人は色々とおかしい。

 さっさと『魔王』退治を終えたネノフィラーは、レオニードと共に旅に出てしまった。そのうちこの村にも二人の噂は入ってくるだろうと思ってる。だってあの二人が噂にならないはずはない。

 二人のことだからひょっこり帰ってくることもあるだろう。ドラゴンをつれて帰っていたしな。村にやってきたドラゴンは小さくなっていたが、本来は巨大なことを俺は知っているのだ。ドラゴンに乗ればここまでなんてすぐだろう。

 『勇者』パーティーがネノフィラーに夢中だという噂があるのでそれは心配だが、まぁ、あの二人ならばどんなものが立ちふさがろうとも夫婦としてあるだろう。そんな信頼感があるのであの二人が別れることは考えていない。

 いつか、子供が出来たら見せにきてほしいなとも思ってる。あの二人はあれだけ仲が良いので、そのうち出来るだろうと思う。村総出で見守っていた子供が大きくなって、子を成すのだ。見せに来てほしいと思うのも当然だろう。

 あの二人の子供だったらきっと赤ちゃんの頃からおかしいことになっているかもしれない。そうだったとしてもあの二人が親なら問題もないだろう。

 ネノフィラーとレオニードがどんな風な道を選んでいくのか、村の外でどんなふうに過ごしていくのか、それを伝え聞く未来を思い浮かべて俺は楽しみで仕方がない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ