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メルセディス・ドラゴアージはかく思う。

 僕の名前はメルセディス・ドラゴアージ。

 誇り高いエレメンタルドラゴンの一頭。ドラゴンの種類って、沢山あるんだよ。火が得意だったらファイヤードラゴン、水が得意だったらウォータードラゴンみたいな感じで盛沢山。ちなみに僕はそういうの全部使えるんだ。凄いでしょ? 得意不得意はもちろんあるけどね。僕まだ小さいし得意なのしかうまくできない。あと竜種で家名持っているのって代々続いている位の高い竜種だけなんだよ。

 レオ様とネノ様に会うまで僕強いんだーって思ってたんだけど、上には上が居るんだなって知って良かったなって思ってる。

 特にレオ様なんてすごいんだよ? 最初、僕に勝てなかったのにみるみる僕に勝てるぐらいまで成長していって、人間ってこんなに成長していけるんだって知って、僕、人間の事を見なおしたんだもん。もちろん、ネノ様も凄いよ。僕に最初から勝ってたし。

 僕、あのころ少し調子に乗ってたというか、誰も僕には勝てないんだと思ってたからね。馬鹿みたいに人間虐殺とかはしようとは思わなかったししなかったけど、僕の縄張りに入ってきた生き物は殺しても問題ないだろーって思ってたから殺そうとしたんだよね。でもネノ様に負けたんだよね。レオ様も僕に勝てないってぐらいの強さなのにあきらめずに向かってきて、命乞いとかもしない子供って不思議だったんだよね。

 それで殺されたくないから必死に謝ったら、殺さないでくれた。ネノ様ってその当時は『勇者』だとか判明していなかったけど、『勇者』だって判明して納得しかなかった。まぁ、『勇者』でもないのにあれだけ強くなったレオ様が一番ヤバい気がするけど。

 母様の所を飛び出してから、ぶらぶらしてたんだけど、あまりにも居座ると危険だーとかで変な人間とか来て面倒なんだよね。害がなければ突入してこないってところは楽なんだけど、僕って成体にまで成長してなくても人にとっては危険らしくて襲われたりしてたんだ。ちなみにドラゴンって成体になるまで時間かかるんだよ。人間よりも長生きだから。それで成体になる前に独り立ちするものもいれば、成体になってから独り立ちする人もいるんだけど、僕はさっさと独り立ちした。

 全然知らない場所に興味もあったしね。それで、何となく流れ着いたのがレオ様とネノ様の住んでいる村の傍の山なんだ。標高もそれなりに高くて、魔物もいて、過ごしやすかった。傍にあるのが村だけだったし、下手に竜を倒すぞーっていう連中がいない田舎だったしね。

 それでレオ様とネノ様に会ったんだ。レオ様とネノ様は怒らせたら凄く怖いし、僕より今は二人とも強くて気が変わって殺そうとかされたらってハラハラもしてたけど、契約を結んだし殺されはしないだろうとは思ってる。レオ様とネノ様の事は好きだし。一緒に居て楽しい。僕がドラゴンだろうと、対等にしてくれている。二人と一緒に色んなものが見に行けると思うと僕は楽しくて仕方ない。

 そういう気持ちって多分、ネノ様も感じていることだと思ってる。ネノ様は『勇者』として生まれ、生まれた時から特別だった。あれだけ幼かったのに僕に勝つだけの力を持ってた。レオ様が居なかったらネノ様ってもっと孤独だったんじゃないかなーって思う。

 僕が対等に接してくれてる(たまに扱いがひどいけど)二人と一緒に居て楽しいなぁって思ったりするのと一緒で、レオ様が追いかけてあれだけ強くなってくれた事にネノ様って嬉しかったと思うんだよね。

 母様の所飛び出して、僕が竜種なこともあって対等な人なんて出会えていなかった。自由に出来るのは楽しかったけど、家族みたいに僕を叱って諭してくれたり、対等に笑いかけてくれたりしてくれる人がいないのはちょっと寂しい気持ちはあったんだ。僕らは竜種だから「対等の存在なんてあまりいないから大切にするのよ」って母さんは言ってた。その意味を強く理解したんだよ。

 だから、ネノ様に負けた時は怖かったし、レオ様がどんどん追い上げて僕を追い越して強くなった時も怖かったけれど――、何だか嬉しいなって思ったんだよ。それもあって僕は最初に想定していたよりもずっと長く村の山に住まう事になったんだ。元々そんなに長い間、いるつもりもなかったのに。

 気づいたらやってくるレオ様とネノ様の事を待っていた。……いきなり魔法放たれてしまうのはびっくりしたけど、それでも心待ちにしてたんだ。

 寂しくなりたくないから、契約も結んでもらった。母様の所飛び出すときは、人と契約何て結ぶわけないって言ってたのに、どうなるか分からないものだなーって思った。

 今から僕たちは、宿屋を開店する。

 レオ様やネノ様ならお店やるよりも魔物倒したりするのが似合いそうに見えるけど、二人とも張り切っているし、予想外の事をやっていこうとしているのは二人らしいと思う。

 僕も初体験だけど給仕役をやるんだ。失敗しないように頑張らないと。レオ様とネノ様の役に立てるように僕は頑張るんだ。



 僕はこれからもレオ様とネノ様と一緒にいるんだ。いつか、二人は寿命で僕より先に死んでしまうけど、それまでずっと一緒に居たいなって思ってる。



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