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開店準備 5

 料理の準備をしたり、チェックインやチェックアウトの時間を決めたり、夜の間のための魔法具を作ったりして、開店するための準備が着々と進んでいった。

「レオ、私、可愛い?」

 そう言いながら目の前でくるりっと体を開店させるネノは、俺が作った給仕服を着ている。

 ネノが着ているのは、黒の侍女服のようなものだ。白いレースとエプロンを身に着け、白いカチューシャも着けている。靴下はハイソックスで、黒の靴もこちらで作った。ヒールがあったら動きにくいだろうから、ヒールなしの靴だ。可愛い。

 ネノの足を人にあまりみられるのは嫌だなという個人的な意見から裾を長くしているけど、本当、可愛い。好きな相手がどんな服を着ていても可愛く見えるものだろうけれど、普段しない恰好を見ると、余計に興奮する。見慣れてもきっと可愛いと思うだろうけど。

「ネノ、凄く可愛い」

「ありがとう。私、レオが作ってくれた服、着れて嬉しい」

「俺も嬉しい。ネノ、本当、可愛い」

「ねーねー、レオ様、僕のは!?」

 ネノに可愛い可愛いと口にしていたら、メルが不満そうに言った。

「ちゃんとあるぞ。はい、これ」

「やったー、じゃあ着替える!」

「待て、メル、この場で着替えようとするな。向こうで着替えて来い」

「え? 別にいいじゃん」

「駄目だ。というか、人型になっているならちゃんと人がいない所で着替えろ」

「えー。面倒くさい」

「そうそう着替えたりしないんだから、着替える時ぐらいは人前ではやめた方がいい」

「えー、なんで?」

「攫われるぞ?」

 外に出た時にメルは多くの人々から注目を浴びていた。外でこんな調子で着替えだしたら変態とか湧きそう。まぁ、メルは竜だし、そんな攫われたりしないだろうけど。万が一っていう場合はあるしな。そもそも外で裸体を晒すとか、色々問題あるし。

 ちなみに普段、人間に変化しているメルが着ている服はメルが魔力で生み出しているものらしい。それなら給仕服も魔力で生み出せばいいのではと思ったが、作ってほしいと言っていたので作った。

 メルは「攫われる!? 嫌だから、向こうで着替える!」と言って奥に向かった。俺もネノに「これ、レオの服」と渡されたのでメルが着替えているところで一緒に着替えることにした。

 着替えている場所に向かえばうまく着れなくて、一生懸命、シャツから顔を出そうとしていたメルがいたので手伝いをした。メルのはぶっちゃけ、ネノのほど気合を入れて作っていない。そもそもまだ成体になっていないので、もしかしたらそのうち背も伸びるかもしれないし。竜って、どんな風に成体になっていくのかはちゃんと聞いていないので知らない。

「着替えれた!」

 と満面の笑みを浮かべるメルは、ストライプのシャツに蝶ネクタイ、あとは黒のズボンに、靴といった服装だ。人型のメルは顔が良いから、この見た目だけでも寄ってくる人は多いと思った。良い客寄せになりそうな気がする。

 ちなみに俺用にネノが用意してくれたのは、厨房に立つ予定なのでコック用のシャツや前掛けエプロンなどだ。なんか着替えてみると、宿の従業員風な雰囲気になった気がする。いや、これから実際にやるわけだけど、こんな格好はしてこなかったから新鮮な気分になった。

「レオ様、似合ってる!」

「ああ」

「ね、僕は似合ってる?」

「似合ってる似合ってる」

 そう答えれば、メルは嬉しそうににこにこと笑った。本当に単純な奴。

 ネノの元へメルと共に戻れば、ネノは俺にくぎ付けになってくれた。普通に、嬉しい。

「レオ、かっこいい。流石、私の旦那」

「ネノも可愛いよ。流石、俺の奥さん」

「ネノ様、ネノ様、僕は!? 僕は似合ってる!?」

「メル、ステイ。私は、レオを見るので忙しい」

 メルはステイと言われて、大人しくしていた。ネノに逆らうのが得策ではないことをちゃんと把握しているからだろう。

 ネノは俺の腕に手を伸ばして、ぐるりっと俺の体を回転させる。表も裏も見て、じーっと細かいところまで見た後に、「やっぱ、かっこいい」と満足げに頷いていた。俺のネノは本当可愛いなぁと思ってならない。

「レオに変な虫つかないようにしないと」

「いや、俺よりネノだろ。可愛いからな」

「いや、レオの方。かっこいいもん」

「ネノが俺のだって見せつけないと」

「私も、レオが私のだって見せつける。そしたら、変なのよって来ないはず」

「まぁ、見せつけても寄ってくる奴はどうにでもすればいいだろ」

「うん」

 流石に『勇者』であるネノ相手に無理やり迫るような馬鹿はいないだろうけれど、そんな奴がいたら一先ずどうにでもしようと思う。俺に関しては、多分、ネノが心配しているようなことはないと思う。

 まずこの宿をやっていれば『勇者』のネノに注目が行くだろうし、『勇者』の旦那に手を出す奴などそうそう居ないだろうから。いたとしても相手にはしないしな。

 俺の言葉に頷いたネノはようやくメルの方を見る。メルは座り込んで俺達のやり取りが終わるのを待ってた。ネノが視線を向けると目を輝かせている。

「メルも似合ってる。良い客寄せ、なりそう」

 似合っていると言われてメルは嬉しそうに笑みを溢すのだった。


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