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『勇者』の帰還 2

「……美味しい」

 目の前でネノは美味しそうにドラゴンステーキ丼を食べている。

 ドラゴンの尻尾肉を炙って、特製のタレをつけたもの。また一緒に山で採れた山菜を添えている。米はこのあたりでは生産されてないものだが、商人から仕入れた米という食べ物がおいしかったため時々仕入れている。

 《料理》スキルが高レベルの俺が手にかけたものなのもあって、我ながら美味しく出来ていると思う。

 ネノはご飯を食べる事が好きだ。自分で作るのも好きだが、俺の作った料理を食べると嬉しそうにしている。ネノが嬉しそうにしているのを見ると、嬉しくなった。

 それにしても、半年ぶりにネノがこの家に居て、食事をしている。それだけで何だかいいなぁと思ってならない。今まで当たり前のように俺のすぐ側に居たネノ。『魔王』退治に出発して、半年も離れた。半年も離れたのは初めてだった。

「レオ……食べないの?」

 あまりにもじーっとネノの事を見すぎて、食事をする手が止まっていたらネノにそんな事を言われた。 ああ、可愛い。

 こちらを見るネノにそんな感想しか出てこない。

「久しぶりのネノだから、見たくなっただけ」

「……そう」

 『勇者』として活躍していたネノの噂は散々聞いていた。

 ネノは口数が少ないが、淡々と『勇者』としての責務をこなしていてクールだと噂されていた。表情をあまり変える事もなく、ネノの整った顔立ちも相まって余計にクールな美少女として知られていたらしい。今、目の前に居るネノは表情豊かだ。

 ネノが俺の前で表情豊かである事も、俺は嬉しい。

 じーっとネノを見ていたら、ネノも食事の手を止めて俺の事を見始めた。

「ネノ?」

「私も、久しぶりだから、レオを見てる」

 二人して互いにただ見ている。しばらく二人で見つめ合った後に、食事を再開する。こうやって何気ない一日の始まりが久しぶりで俺は嬉しかった。


 食事を終えた後、二人で村をぶらぶら歩く。


「あれ、ネノ、帰ってきてたのか」

 村の人達は俺達を見て、そう声を掛けてくる。『勇者』が村に帰還したのだが、村は平常運転だ。ただ長く村を離れていた存在が戻ってきたという認識しかない。

 ネノの両親も俺の両親も既に亡くなっているのもあって、ネノが帰ってくる場所は俺とネノの家だけで、ネノが帰ってくるというのは村の連中にとっても俺にとっても当然の事実だった。

 ネノと手を繋いで、村を歩く。

 ネノとこうして村の中を歩くのも半年ぶりだ。

 村の皆にネノが帰ってきた事を報告する。

「レオ、ネノ、今後どうするんだ? お前達、村を出ていくってネノが『勇者』として決まる前言っていただろう?」

「出る予定。元々ネノが『勇者』になったから先延ばししただけだからな。なぁ、ネノ」

「私は……レオが行きたい所にどこでもついていく」

 ネノは躊躇いもせずにそう言ってくれる。そう言ってくれるネノは本当に可愛くて、思わずネノの頭を撫でた。

「そうなると寂しくなるな……」

「まぁ、俺もネノも時々ここには帰ってくるけどな」

「それでどこに行く気なんだ?」

「まだ、決めてない。ネノとのんびり色んな街巡りながら決めようかなと思っているんだ」

 何処に行こうか、というのは決めていない。

 気に入った街があったらそこに居を構えようかと考えているのだ。ネノがいれば俺もどこでもいいと思っている。

 俺とネノの二人でならどこにでも行けるだろうし。

 それから色々な人に挨拶をしながら家への道を歩く。

「ネノはどういう所に行きたい?」

「何処でもいい」

「何か希望とかあるか?」

「レオがいればいい」

「じゃあとりあえずしばらくゆっくりしてから村を出るか」

「うん」

 行きたい街も俺の方で決めていいみたいだから行きたい場所をピックアップして考えていこう。

「そういえば、ネノ、『勇者』パーティーのメンバーから迫られてたんだよな」

「うん。なんか言ってた」

「ちゃんと断ってくれてありがとう、ネノ」

「私、レオの奥さん。断るの当然でしょ」

 心配はしていなかったけれども、改めてありがとうと口にしたらネノが笑った。

 ネノが笑ってくれて、俺の隣にいてくれる事がただ嬉しかった。ネノのパーティーメンバーはネノの事諦めているかとか分からないけれど、まぁ、来たとしても別に問題はないけれど。

「レオも、誰も寄ってこなかった?」

「こんな村にはそんな誰も来ないし、ネノ以外興味ないから」

「なら、良かった」

「俺がネノ以外に興味持つわけないだろ?」

「……うん!」

 ネノは嬉しそうにほほ笑んだ。

 それから家に戻って、今後の予定の話をした。




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― 新着の感想 ―
[良い点]  感謝、大事。良い夫婦だな。
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