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その後の話と、宿経営と ②

 レモニーフィアは例えば街の人々から襲われても返り討ちに出来るだけの強さは持ち合わせているとは思う。

 とはいえ、まだ子供だ。人ならざる者だとはいえ、いや、だからこそ――他の人族というものを知らない。

 いってしまえば簡単に騙されてしまう可能性もある。それだけレモニーフィアは危うい存在だ。

 街での暮らしに慣れていけば、また別だろうか。やっぱり知り合った子供がもしかしたら危険な目に遭うかもしれないというのは少し心配になる。

 レモニーフィアは魔女の悪評を流していた領主一族に対して、憎悪の感情などは抱いていないらしい。基本的に他の人族に対して悪感情があにのは魔女がそういう教育をし続けたからなのだろうか。

 レモニーフィアは何と言うか、危うい状況ではあるんだよな。仮にこれから先、他の人間達を憎むようになってしまったら――、大変なことにはなるだろうな。……出来れば将来、人族の敵にならないでいてくれた方がいいなとは思う。

 レモニーフィアは……というかこれはメルとかにも言えることだけどさ、寿命が長いからこそ俺やネノが亡くなった後もずっと生き続ける。その先の未来で、彼らが人間に討伐される対象となって、悪い存在として歴史に残るのも何だか面白くないなとは感じるから。

 まぁ、ただこれってあくまで俺がそうであってほしいなって望んでいるだけなので実際にはレモニーフィアがそう言った道を選ぶかは分からないけれど。

 忙しい時間帯を終えて、一息を吐く。大体朝と、お昼時は大忙しだ。その間、レモニーフィアとその父親はずっと宿に居た。

「宿ってこんなに混むんですね。びっくりしました」

「レオ様とネノ様の宿だからだよ! 普通の特徴のない宿だと、早々、人は集まらないよ! ネノ様が勇者であることとかで、人沢山来るみたいなんだー」

 レモニーフィアの言葉にメルがそう言ってにこにこしていた。

 俺とネノのことを自慢したくて仕方がないのか、ドヤ顔である。

「そうなんだ。私も……人の街で生きて行くのなら、お金ももっと稼げるようになった方が安全かな」

「レモニーフィア、金銭面の心配は要らない。どうにかなる」

「お父さん……。そうはいっても何があるか分からないでしょ? だから、少なくとも何かあった時のために私もどうにか出来た方がいいかなって」

 レモニーフィアはそう言って、父親に話しかけていた。

 少なくとも人族の社会で生きて行くならお金って大事だからな。レモニーフィアは父親と過ごせることに浮かれている一面もあるだろう。でもそんな中でも、ちゃんと先の未来のことを考えているらしい。そういうところは子供ながらにしっかりしているなとは思った。

「それは……そうだが」

 痛ましげな表情をしているのを見るに、子供に稼ぎの心配をさせることが嫌らしい。この人も領主一族に生まれ、特に生活に困らずに生きてきたんだろうな。

 だって平民だと幼い頃から生活のために働かなければならないなんてよくある話なのだ。俺やネノも幼い頃に両親を亡くしている。俺達の生まれ育った村は、孤児相手にも差別などをすることはなかった。俺はともかくとしてネノは例えば大人たちから疎まれていたとしても一人で生きていけただろう。そうなっていたら俺はネノと結婚をすることなんて出来なかったんだろうな。……そう考えると本当に幸いだった。

 ただ親が居ない子供と関わらないようにしようとする者達ってそれなりにいる。自分が生活をしていくために動かなければならないものだ。

 領主一族とかに産まれると、そういう心配って一切ないんだろうな……。まぁ、レモニーフィアに関しては別に人の世に関わらずに生きていくことも可能だろうけれども。

 もしかしたらそういうところの認識の差で、この親子はぶつかり合ったりはするのかもしれないなとも考える。

 種族もこれまでの生き方も、何もかも違うのだからそう言う未来も想像出来るよな。

 ……魔女のことを大切に思っていたのは確かなのだろうけれども、レモニーフィアのことを後々疎まない保証はないし。

 そう考えると老い先短いことは互いにとって幸いなのだろうか。だって親子として過ごす時間が短ければ短いほど、その違和感を感じずに済むだろうから。

「レモニーフィアが、街で生きやすいように、私も教える」

 いつの間にか傍に来ていたネノがそう言って笑う。

 ああ、ネノも俺と同じ気持ちでレモニーフィアのことを心から心配しているのだろう。俺達と同じく小さいうちに親を亡くしたから共感をしているのもあるのかも。

「俺も教える」

 俺達はずっとこの街に滞在するわけじゃない。まだまだ見たことのない場所をネノと一緒に巡りたい。満足するまで見て回りたいし、一か所に定住する気はない。

 ただそれでも出来る限りのことはレモニーフィアにしてあげたいなとは思っているので、夕飯時までメルに宿を任せることにした。



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