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王子 1

 キッチンやお風呂などを整えた翌日、俺達は早速次の店づくりの作業に取り掛かろうとしていた。内装がまだまだ十分な出来ではないのだ。こんな状況で、宿屋を開業する事は出来ない。

「さて、今日もやるか」

「うん」

「僕も頑張る!」

 俺の言葉にネノとメルが答える。ネノもメルもやる気満々である。やるぞ、と気合を入れているネノは本当に可愛い。俺のお嫁さんは本当に可愛くて仕方がなくて、見ているだけで表情筋が緩んでしまう。

 ちなみにメルは人型で作業している。

「レオ、にこにこしてる」

「……ネノが可愛いなぁって思ってただけ。本当可愛い」

「ふふ。嬉しい」

 可愛い、と口にすればネノが笑った。本当に可愛い。ネノはいつでもかわいいから、見ているだけで幸せな気持ちになる。

「もー、朝からいちゃつかないの! お店作りするんでしょー」

 二人で笑いあっていたら、メルにそんな風に言われたので、店づくりの続きを早速始める。

 昨日の段階でキッチンやお風呂場などは整えたが、まだまだ作らなければならないものは沢山ある。まずは食堂の机や椅子を作ろうと考えている。以前取ってきた木の余りを使って、丸太を魔法で加工していく。こういう時って本当に魔法って便利だと思う。

 ネノとメルは客室の家具の制作を開始している。二人は二階に上がって作業を始めたので、俺は食堂にする予定の場所で一人黙々と作業をしていた。

 テーブル席とカウンター席を作成する。また子供用の椅子なども作成しておく。どういう客層の人々がやってくるかは分からないが、作っておいて損はないだろうと思ったからだ。

 机と椅子を作成した後は、食堂脇にトイレを作っておくべきだろうとトイレの作成を始めた。トイレは水で流せるタイプの魔法陣を組み込む。そのまま放出する訳には行かないので、きちんと浄化するようにも設定しておく。これも誰でも出来るように魔石の補充で出来るようにしておく。あとはトイレにも換気のための設備を作っておく。そして鍵ももちろん設置する。男女それぞれのトイレを一階に作り終え、俺は達成感に満ちていた。

 あとは時計も――これも魔法具で作っていいだろうということで、さっさと魔法具として作った。1階の大体の設備の作成が終わったので、俺は二階に行き、メルとネノの様子を見に行った。二階の大部分の家具を二人は作り終えていた。三階はまだのようだけど、良い雰囲気の客室になっていると思う。

 設置されている家具はベッド、ランプ、棚、机、椅子といった簡単な家具である。床にはカーペットが引かれている。布団などはまだ用意されていないが、ベッドの大きさも広々としていて寛げそうな客室にはなっていると思う。寝ようと思えば二人で寝れるようなベッドだ。

「頑張った」

 ネノがそう告げてほめてほしそうにこちらを見ていたので、奥さんの望むままに頭を撫でた。「流石、ネノ」と口にすれば、嬉しそうに笑っていた。ついでにメルも褒めてほしそうだったので、一緒に褒めてた。メルも嬉しそうだった。


 そうこうしているうちにすっかり昼間になっていた。


 昼食を抜くという選択肢はないので、一旦外に食事を食べに行くことにした。俺が作ってもいいのだが、折角なのでこの街で美味しいお店も開拓したいというのもあった。俺もネノも食事をする事は好きなので、新しい味や新しい料理に出会いたいという気持ちもある。

「ネノ、食事行こう」

「うん」

「美味しいもの食べたい!!」

 メルも人間の食事を今までそんなに食べてなかったらしいが、すっかり美味しい食事の魅力に取りつかれているようだ。美味しいもの食べたいと口にしているその口からは涎が垂れている。って、作ったばかりの宿に垂らそうとするなと慌てて、ハンカチでメルの口を押えた。

 それから三人で街に繰り出す事にした。

 今日も周りからの影響がないように、魔法でこの場を隔離していた。その魔法を解いたら、何だか騒がしい団体が視界に入る。

 白銀の鎧を身に纏った集団――、村にもやってきてたあの騎士達と同じ連中のようだ。ただその中に一人、普通の騎士の鎧よりも華美なものを身に纏っている男がいた。

「ネノフィラー!! 探したぞ!!」

 ネノの名を呼んで、声を上げるその男は金色の髪を持っていた。なんかこう、全体的にキラキラしている。見るからに王侯貴族といった体のその男は、腰に剣を下げていた。

「ネノ、これ、誰?」

「第二王子」

「ああ、第二王子か」

 ネノの名を呼んでいるから『勇者』をしていた頃のネノの知り合いだろうと思って、ネノに聞いたら第二王子とかえってくる。

 第二王子、テディ・アリデンベリ。

 剣術と魔法共に優れており、『魔王』退治を達成した『勇者』パーティーの一員。ネノが俺と結婚していると幾らいっても信じなかったという第二王子。

 この第二王子、何しに来たのだろうか。






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