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魔女の娘と共に街を歩く ⑩

 翌日になってから早速箱の中に入っていた鍵について調べ始めることにする。レモニーフィアは今日は早起きだった。それはもうまだお店が開いてないよという時間から俺達の泊っている部屋をノックしていた。

 あまりに早くきすぎていて、ネノに「早い」と口にされて、慌てていた。

 どうやらよっぽど落ち着かなかったらしい。昨日の夜はよく寝たらしいが、今すぐにでも探しに行きたいのだろう。

 全く落ち着かない様子のレモニーフィアに、メルが話しかけている。

「そんなに鍵のことが気になっているの? でもレオ様とネノ様はまだ寝てるし、レモニーフィアも寝たら?」

「……でも、全然寝付けなくて」

「そっか。じゃあ僕が話し相手になってあげようか? 僕、すっかり目が覚めたし」

 俺とネノがまだうつらうつらしている間に、メルとレモニーフィアの会話が聞こえてくる。

「メル、話をするのはいいけれどレモニーフィアを困らせるようなことは言わないようにな」

 俺がそう口にすると、メルの「はーい」という元気な声が聞こえてくる。

「レモニーフィアはその鍵、何処の鍵だと思うの?」

「さぁ……? 私、お母さんからこういう鍵を残しているという話も聞いていなかったので。こう考えてみると、ずっと一緒に居たのに私はお母さんのことを全然知らないんだなぁ」

「落ち込んでいるの? 別に落ち込まなくていいと思うけれど。レモニーフィアのお母さんも何か考えがあったんだろうし」

「そうですか?」

「そうじゃない? そもそも気に掛けていなかったらこんな風に何かを残したりすることもないと思うし」

「でも……」

 レモニーフィアは、一夜の間に様々なことを考えてしまっていたらしい。それこそ悪い想像も含めて。

 考えてみれば幾ら『魔女』の娘で、普通とは異なるとはいえ……レモニーフィアはまだ子供だ。母親が亡くなった後に色んなことが重なって、不安に思っても仕方がない。

「僕だったらね、どうでもいい相手には何も残さないかなー。生きても死んでもどうでもいいって思うし。そもそも生前だからそういう相手とは関わったりはしないよ。でもレモニーフィアは、母親が沢山残してくれているんだよ。だったらそういう不安とか感じなくていいと思う!」

 メルはおそらく、本当に何も考えていない。あんまり不安に感じたり、深く考え込むことなど基本はしない。だからレモニーフィアに対して何を心配しているんだ? とよく分からないのかもしれない。

 こういう明るい性格は、メルの良い所ではあるとは思う。

「大体、血が繋がっているけれど知らないことが多いって楽しいことじゃんか。僕はね、母様のことは結構知っているつもりだけど、もちろん、僕が産まれる前のことって母様が好んで話すわけでもなかったし、知らないことも盛りだくさんだよ。でもそういう時に知らないなって落ち込むのってもったいないじゃん。僕は母様ってそんなろころあったんだ! って嬉しいけどなぁ」

 それにしてもメルなりに、レモニーフィアを元気づけようとしているのが分かる。あまり人間に対して関心のないメルだけど、レモニーフィアが人以外の種族の血を引いていることやしばらく共に過ごしていてそういう意見を言うぐらいには心を許しているのかもしれない。

「それもそうかも……」

「そうだよ! 僕、レモニーフィアのお母さんに興味津々だよ。『魔女』なんて呼ばれていて、面白い存在で。それでいてレオ様とネノ様が興味を抱いているんだよ! そういう『魔女』のことがその鍵で知れるんだって思うと僕はワクワクしているよ」

「そうなんですね」

「うん。そうだよ。でもね、『魔女』よりもレオ様とネノ様の方がずっと凄いんだから! 二人はね、レモニーフィアが思っているよりもずっと強くて、凄いんだよ」

「本当にメルセディスさんはレオニードさんとネノフィラーさんのことが好きですね」

「うん。だって二人とも強いし。人間なのに僕より強いし。それに昔から二人とも面白かったもん。一緒に居ると楽しいし。でも二人とも人間だから、すぐに寿命は来ちゃうだろうけれど……、きっとレオ様とネノ様はその短い時間でも凄いことを成していくんだよ」

「……そっか。二人とも本当にただの任人間なんですね……」

 メルが言っているように、俺とネノは種族的に言えばただの人間である。だから当然、種族としての寿命を終えれば、死ぬだろう。

 それにしてもメルは俺達に期待しすぎじゃないか? 俺とネノは好きなように動いているだけだから、メルが期待するような何かを起こすかとかは分からないのに。

「寂しくないですか?」

「今からそんな決定している未来のことを悲しんでいても仕方ないじゃん。あんなに強くて凄いレオ様とネノ様が寿命で亡くなるんだなって思うと凄く不思議だけど、そういうものなんだろうし」

「そうですか。……うん、そうですよね」

 レモニーフィアはメルと会話をしている間に、大分元気が出たようである。声の変化でそれが分かる。




 ――それからお店が開く時間になるまで、メルとレモニーフィアは話し込んでいた。



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