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魔女の娘と共に街を歩く ⑥

「……これ、どうやって開けられるんでしょうか」

 レモニーフィアは、店主から受け取った箱を前に唸っている。

 俺達は店を後にして、宿を取った。部屋は二部屋分取ってある。今は、レモニーフィアが俺達の部屋を訪れ、四人でじっと箱を見つめている状況だ。

 ちなみにこの箱、メルが無理やり開けようとしても開かなかった。ドラゴンであるメルの力技で開かないあたり、どんなことがあっても壊れないようにもなっているのだろう。普通のものならばメルが力を込めれば壊れるからな。

 そのことでメルは悔しそうな顔をしていた。

 やっぱりメルはまだまだ子供で、自分の思い通りにいかないことがあるとこうである。

「さぁ。どうだろうな。でも『魔女』がレモニーフィアのために残したものならば、きっと何かしらの解錠方法はあるはずだけど」

「ん。流石に絶対に開けないもの、残すはずない。ちょっと見て、いい?」

 俺の言葉に続いてネノがそう口にする。

 『魔女』が残したというその箱。中身が何なのか、俺は正直気になっている。もちろん、中身の確認はレモニーフィアが許可をしてくれないとしないけれど。

「はい。お願いします」

 レモニーフィアはそう口にして簡単に箱をネノに渡す。

 俺達を信頼してくれていることは嬉しいけれど、あまりにも簡単に渡すから少し心配になった。

 俺は魔力を流して、その箱について調べてみる。

 俺の魔力に対して反発はしているようだった。でもその状態でも調べることはできる。これも一種の魔法具のようなものだというのはよく分かる。俺やネノが魔法具を実際に作成したりしているからというのもあるだろうけれど、仕組みをなんとなく察することはできる。

 それにしても本当に複雑な仕組みがされている。

 これだけのものを、こんな小さな箱に内封されているなんて不思議だ。それでいて魔女と呼ばれていた存在がそれだけの力を持っていたというのがよく分かる。

 そのことは何だか面白く思える。

 ――俺自身が、魔法具というものが好きだからこそこういう素晴らしいものを残した魔女に興味がわく。生きている間に出会うことが出来たらきっと良かったのになとそんな気持ちも芽生えてくるほどだ。

 とはいっても流石に死んだ存在をどうにかすることは俺にも出来ないけれど。たまにそういう死者を蘇らせるためにととんでもないことをしでかすような人がいるらしい。そういう人の気持ちは正直よく分からない。だって、本人の意思に関わらずそういうのをするのはどうかと思うし。

「なるほどなぁ」

「何か分かったのですか?」

「何かしらの鍵がいるな」

「鍵?」

「そう、これを開けるための条件というものがあるんだ。この箱には鍵穴がないけれど、トリガーとなるものがある。それを見つけるべきだろうな」

 俺がそう口にすると、レモニーフィアは困ったような顔をする。そのトリガーとなるものが何なのか分からないのだろう。

「レモニーフィア、こういう箱、魔女は使ってなかった?」

 ネノが問いかけると、レモニーフィアは首を横に振る。

「分からない、です。……これってお母さんが、私に残したものなんですかね」

「分からない。でも、魔女が残すならきっと娘のあなたに」

 ネノがそう口にすると、レモニーフィアはまた考え込むような仕草をする。

 魔女はこの街に関わりがあり、人と交流を持っていたとはいえ……一番大切なのは娘以外ないだろうとは思う。様々な姿に変化が出来る存在だからこそ、それだけ多くの姿で違う人たちと接していたはずだから。

 ……俺とネノの両親は幼い頃に亡くなった。俺達はその点は同じような立場だったと言える。

 両親が残したものはそんなに多くはなかった。それでいて思い出も少ない。それでも――少なくとも俺にとって両親との思い出は大切なものではある。

 レモニーフィアは、最近母親である魔女を亡くしたばかりなのだからより一層色々思う所はあるのだろうと分かる。

「……お母さんとの、何かですよね」

「うん。魔女との、何かしらの思い出のものとか」

「思い出のもの……。お母さんとのものだというと……」

 レモニーフィアは悩んだ様子で、黙り込んでいる。

 きっと魔女との思い出が沢山ありすぎて、ぴんときていないのだろう。

 俺達はレモニーフィアが結論づけるのを待つことにする。こういうのは急がせる方が駄目だろうしな。逆に見つかるものも見つからなかったりするのではないかと思う。

「レオ、何が鍵なんだろうね?」

「なんだろうな。俺も検討が付かない」

「魔女だもんね」

「そうだな。魔女なんて呼ばれる存在と遭遇することはないもんな」

 俺やネノも、魔女なんて呼ばれる存在と関わることはなかったので、分からない。だからこそ、どんなものであの箱は空くのだろうかとそう考えると楽しい気持ちになる。

 俺とネノが顔を近づけて、こそこそと話していると――レモニーフィアが声をあげる。

「あっ」

 大きな声をあげたレモニーフィアは、目を輝かせていた。何かしらの心当たりに思い立ったのだろう。



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