店づくり 5
宿を建てた翌日になってから、俺達は内装や魔法具作りを始める事にした。もちろん、周りの煩しい声が聞こえないように今回も処理がされている。
まず、作るべきもののリストを挙げていく。それから材料を集めて、少しずつ作っていくことにする。
「ネノ、俺はとりあえず台所作る。水とか勝手に出るように魔法具完備する」
「うん。私、風呂いく。メルは?」
「ええっと、僕、魔法具とかあんまり作った事ないんだけど」
「作れないのか?」
「作れないの?」
「いや、作れないとは言ってない! でもなるべく簡単なのを!!」
メルがムキになっていった。やっぱり魔法具作りは心もとないようだ。となると、簡単な魔法具か。簡単な魔法具となると、呼び鈴とか? その位ならメルでも出来るだろう。
そう思ってメルに指示を出した。メルは頭を抱えていたが、作業を始めた。本当に出来ないというのならば、ちゃんと分からないとメルは言ってくるだろうからとりあえずメルの事は放置する。
さて、俺は台所の作成をしよう。
キッチンは、食堂とするのならば大きめにしたほうがいい。何処に魔法具的な要素を組み込むかと言えば、まずは蛇口。魔力を込めれば、水が出てくる仕組みにしてしまえば問題ないだろう。いや、それか魔力をためておいて、ためられた分だけ水が出るにしたほうがいいだろうか。前者でも俺やネノは問題がないが、もし従業員などが出来たとすれば前者だと魔力が少なければ水を出すだけでも大変なことになる。後者だと時々魔力を込めておけば、すぐに水が出るようになる。うん、一応、後者で蛇口は作ろう。ちなみに家では前者で作っている。あと、出した水はそのまま川などに捨てると川が汚れてしまうだろうから、汚れをすべて取ってしまってから川へ直接つないでしまうか。あと蛇口に関してはお湯も出せるように組み込むとして。
コンロに関しても、魔力で火がつく形にしよう。こちらも、魔力を時折魔力を込めて、使う形にしよう。ああ、でも誰でも使えるとか、持ち運びできるようにしたら最悪、誰かに盗まれるからそれを出来ないように固定もするとして。それで三口ぐらいにしておけば、使い勝手が良いのではないか。
冷蔵庫は……なくても《時空魔法》の空間から取り出せばいいけど、一応作っておこう。冷蔵庫の入り口を繋いでしまえば、直接取り出すことも出来るし。適度に魔力を込めるか、冷蔵庫も。いや、それか魔石で魔法具の効能を継続させてもいい。どっちでも出来るように作るか。
食器の収納スペースなども作るとして―――よし、大体、どんな風に作るか大まかにイメージが出来た。
紙にどんどんそれらの情報を書き加えていった。さて、やるか。
それから俺は台所を整える事に時間を費やした。流石にただ家具を作るだけではなくて、魔法具の作成なので時間がかかった。
材料を調達するために、街の外に出たりしながら少しずつ台所を完成させていく。
魔法具を作る場合は、魔法陣を組んで細かい調整をしていく。この魔法陣が、少しでも間違えると違う効能を発したり、そもそも何も起きなかったりして大変である。蛇口には、”魔力を水に変える”、”魔力をお湯に変える”、”蛇口をどれだけひねるかによって水量の調整をする”といった魔法陣を組み込んだ。片方の蛇口をひねれば水が出て、片方の蛇口をひねればお湯が出る。中々複雑な魔法陣の術式になったが、その部分もうまく調整出来た。水が流れ落ちる部分は、魔法具ではない家庭では排水溝につながっているだろうが、これは魔法具なので底がある。その底の部分に”たまった水の洗浄”と”たまった水を川へと移動する”という魔法陣を組んだ。蛇口の下の収納スペースも俺の好みで制作していった。
コンロの部分も、《時空空間》にあった鉱石などの素材を使いながらそれらしい形に整えたり、”魔力を火に変える”、”どれだけの魔力を火に変換するかの調整”が出来るように魔法陣を組んだ。また火事防止のために、異常事態では炎が消えるようにも組む。
冷蔵庫は、冷凍部分と冷蔵部分でわけて、効果が継続するように作った。ひとまずは魔力を時々込めて冷やす形にする。冷蔵庫は使っている最中に冷えるのがなくなってしまったら中の物が駄目になってしまうだろうから、どれだけの魔力が残っているか分かりやすくした。
あとからパンを焼く設備や米を炊く設備も必要だと考え、大きいものを作成しておいた。
それから食器棚を作成し、並べていく。
これで大体が完成した。いい出来だ。家を建てた時よりも、魔法具作りに慣れてきたからか、以前より時間が短縮できた。また性能もこちらの方がいいだろう。家の方の魔法具も、そのうちもう少しいいものに差し替えようと思った。
台所が大分出来たので、ネノとメルの様子を見に行く。
「お風呂、大体、完成。まだ、全部じゃないけど」
「流石、ネノ」
ネノは男女共の風呂場を大体完成させていた。水がたまる仕組みと、洗浄する仕組み、あとはシャワーも作っていた。あと換気のための設備も設置していた。あ、俺台所に換気のための設備作るの忘れてた。あとで作っておかないと。
二人でメルの様子を見に行く。
メルは呼び鈴をなんとか完成させて、正面の扉に設置していた。うまく音が鳴って、ご機嫌な様子だった。……もう少し早くやってくれればいいのだが。まぁ、褒めてほしそうだから褒めておいた。




