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魔女の娘と共に街を歩く ②

 レモニーフィアは色んなお店に入る度に目を輝かせている。その様子を見ているだけで、思わず俺たちは笑ってしまう。

 特にこれといって目的を持っていない状態で、色んなものを見るとやっぱり色々欲しくなるようだ。

 魔女は母親として、レモニーフィアにお金をそれなりの額を残しているみたいだ。とはいえ、何でもかんでも購入するとお金は尽きる。

 散財癖はつかない方がいいだろうから、どこまで止めるかは少し悩む。

「レモニーフィア、買いたいもの、ある?」

「……沢山あります。だからどれを買うか悩みます」

「ん。いっぱい買っても、使えないことある。レモニーフィアは《時空魔法》とか使える? それか《アイテムボックス》持ってる?」

「いえ、持ってないです」

「じゃあ、手に持てる範囲で買い物するのに慣れた方がいい。旅するならその辺大事」

「……結局購入しても持ち運べなかったら意味ないですもんね」

「そう。一人で旅をするなら、身軽な方がいい。冒険者とか観察すると、参考になる」

 ネノはレモニーフィアにそんな助言をしている。

 俺は《時空魔法》が得意で、当たり前のように家ごと運んでいるけれど……普通はそうもいかない。《アイテムボックス》を購入するにしてもお金がいるしな。

「なるほど……!」

 レモニーフィアがいちいち素直に頷いていて、俺は思わず笑ってしまう。

 大人の女性の姿に変化しているからこそ、一見するとネノの方が年下に見える。年下の女の子が年上の女性に教えているような構図になるので、お店の人は興味深そうにこちらを見ていたりする。

 幾ら見た目を変化させていても、中身がそうでなければこうやってちぐはぐな印象を与えたりというのは当然するんだろうなとは思った。

「旅で一番重要なのは美味しいものだと思うよー。レモニーフィアは一人旅をしても問題ない強さを持ち合わせてそうだし、食事は大事!」

 メルがそんなことを言い始める。

 まぁ、人によるだろうけれど常に美味しい物を食べたいって人には旅をするってあんまり向いていないかもしれない。保存食は味気ないものも多いしな。俺は《時空魔法》を使えるから、美味しいものをいつでもどこでも食べられるけどさ。

 後は一人旅をするなら何から何まで自分でやらなければならなくなるし。

 そういうのが出来たら旅を楽しめるのではないかとは思う。

「それもそうですね。……やっぱり旅だと食料は現地調達ですか? 向かった先で食べるものがないということがあるかもしれないんですよね」

「保存食とか、持ち歩く。あとは現地。食べられるものの情報、先に知っておくといいかも。処理の仕方知っていると、色々と食べれる」

 ネノはそう口にして、俺の方を見る。

「私、今はレオ、居るから幾らでも美味しいもの食べれる。でも旅してた時はそうじゃなかった。《アイテムボックス》はあったけれど、今の旅の方がずっと快適。レオもいて、最高」

 そんな嬉しくなることを言ってくれる。

 《アイテムボックス》にしても、容量とかの問題がやっぱりあるからな。俺と一緒だからこそ楽しいと、最高だとそう言ってもらえるのには自然と笑顔になる。

「なるほど……。そう考えると色々と悩みますね。どういうものを購入するべきか」

「勢いで買うのもあり。でも持ち運べないものは旅するなら、置いてくことになる。また戻ってくるかとか、必要かとか考えるの大事」

 レモニーフィアは人間よりは長生きをする種族だから、後からこの場に戻ってくるということも出来るとは思う。

 ただそれには長い時間がかかったりするだろう。

 ……俺がもし《時空魔法》を使えなかったらどうしていただろうか? その時はまた違った未来になっていただろうな。

 でもそういう何かしらの違いがあったとしても、ネノと出会ったら俺はネノに惹かれたと思う。そしてどういう形でも、ネノに置いていかれないように行動は起こしただろう。ただその場合は今よりもずっと不便な旅にはなっていただろうし、宿経営と言った形にはならなかっただろうけれど。

 結局、レモニーフィアは悩んだ様子を見せてから一つの髪飾りを購入する。持ち運びの出来そうなものだ。

 はじめての買い物に緊張した様子を見せているレモニーフィア。俺達はそんな様子を見守る。

「私たちに、子供出来たらこんな感じかも。こうやって見守る。きっと楽しい」

 ネノがそう口にした。

 俺もネノの言葉に想像してみる。俺かネノ、どちらかに似ている子供が一生懸命初めての買い物をする様子。うん、なんて幸せな光景だろうか。きっと子供が生まれたら俺は甘やかして、可愛がるだろう。あんまりそれをし続けると子供のためにはならないかもだから、そのあたりはちゃんとどう接するか考えなければだろうけれど。

「うん。俺もそう思う。いつか子供出来たらこうやって見守るんだろうな」

「ん」

 二人でそんな会話を交わして、手を繋いでレモニーフィアを見守るのだった。







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