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森の中に住まう少女 ⑦

 思ったよりもレモニーフィアが食事をするという行為を楽しんでいることに驚いてしまう。

 本人が言うにはここでずっと過ごしていた結果、同じような物しか食べてこなかったかららしい。

 ……なんだろう、この前会ったラポナといい、こうやって一定の場所に留まっている系の存在は美味しいものに出会うと感動するのだろうか? いや、きっと全員ではないだろう。世の中には本当に食事に全く関心がない人もいるから。

 なんにせよ、こんな風に食事を楽しんでいる様子を見ると思わず笑みがこぼれる。

 美味しいと口にしながらレモニーフィアはそれはもうよく食べた。

 正直、こんなに食べると予想していなかった。全然お腹いっぱいになった様子もなく、ぺろりっと食す。

「レモニーフィア! 僕ももっと食べる! 食べ過ぎ!」

「ごめんなさい。でも美味しくてつい……」

「さっきまで食事に対する関心なかったのに!」

 メルはレモニーフィアに対して、それはもう文句を言っていた。

 食べるの凄く美味しいよとすすめていたくせに、自分の食べる分を取られてしまったと不機嫌なようだ。

「メル、レモニーフィアに文句を言うなよ。追加で作るからちょっと待て」

 全く……と思いながら俺は追加で料理を準備することになる。俺とネノは普通の人間なので、メルやレモニーフィアほど食事を一気に食べられるわけではない。ある程度食べたらもうお腹いっぱいである。

 メルもレモニーフィアも、全く太る気配はないけれど食べた分はどうなっているのだろうか? 種族的に太らないとかあるのかな。ファンタズーアスに関しては食べた分を魔力に変換とかそういうのもしていそうなイメージだが。

「私も手伝う」

 ネノもそう言って追加の料理を作るのを手伝ってくれるようだ。

「思ったよりレモニーフィアも沢山食べているな」

「ん。レオの作ったもの、なんでも美味しいから当然。私も、レオの料理、凄く好き」

 ネノはにっこりと笑って、そんなことをいう。

 可愛い。

 思わず笑みがこぼれて、こうしてネノと一緒に並んで料理が出来るのは幸せなことだなと改めて思った。

「レオ、何作る?」

「そうだなぁ……。あの二人、幾らでも食べそうだからな」

「ん。出しただけ食べるかも」

 ちらっとメルとレモニーフィアの方を向くと、本当にひたすら食べている。でもがっついているとかそういう感じでは全くないんだよな。

「シチューでも作るか」

「いいね。美味しそう。私もちょっと食べる。余ったら、保存して明日食べるもあり」

 ネノの言葉に俺は頷く。

 ネノが切ってくれた食材をまず入れて炒める。普通にこうやって野菜や肉を炒めているだけでもいい匂いがしてくる。水を入れて煮る。しばらくしたら牛乳などを入れてそのまま待つ。その間にパンの準備も追加でしておいた。

 あとレモニーフィアにもっと食べる事にはまって欲しいから、こうやって追加で作っているというのもある。

 それらを準備して持っていくと、すっかり前に作ったものは全て食べつくされていた。

「もっと食べれるか? 追加で作りはしたけど」

 俺がそう言って声をかけるとメルとレモニーフィアは元気よく答える。

「食べる! レモニーフィアには渡さないもん」

「私も沢山食べます! これは何ですか?」

 なんか二人とも張り合っている? よく分からないが、まぁ、作った料理を楽しんでもらえるならそれはそれでいいけれど。

 それにしてもシチューとかも食べたことがないらしい。本当に毎日同じ物ばかりを食べていた感じなのだろうか? それはそれで飽きそうだなと思うが、同じ物を食べることが当たり前になっていたらそこまで気にならないのか。

 俺とネノも追加で作った者は少し食べた。流石にその前にピザを食べているから多くは食べられないけれど、ちょっと食べるだけでも美味しいなと思わず笑みがこぼれる。

 それらもメルとレモニーフィアが完食していて驚いたが、流石にそれ以上は追加で作らなかった。

「明日また何か別のものを作る」

 そう俺が言ったら、レモニーフィアは満面の笑みを浮かべていた。

 ちなみにだが、そうしている間もまだレモニーフィアは姿を変化させたままだった。いつ解けるんだろうか? これで混血という話だから、純血のファンタズーアスはもっと長時間そのままということか?

「私、一旦、戻ります。また明日お話してください」

 レモニーフィアはそう言って一旦、自分の家へと戻って行った。

 街へ彼女を連れて行くのは、本人の心構えが出来てからだからそれまではこの場でのんびり過ごそう。

 あとは何を作ろうかな?

 どんなものでも美味しそうに食べそうに見えるけれど、だからこそ悩む。

「街行ったら、色々食べさせてあげたいね」

「そうだな」

 ネノの言う通り、自分の作ったものを食べさせるのもいいけれど、食べ歩きとかさせてもきっと同じように楽しむのだろうなと思うと楽しみになった。




 

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