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森の傍の街 ④

 一旦、森の周りをうろうろしてみる。そして俺達が此処にいるということを示すために魔力を少し、森の奥へと垂れ流してみる。

 そういう強い魔力を感じるだけで、魔女が用心深いほどこちらに接触してくるのではないかと思ったから。

 というかそもそもこれだけの魔力を充満させているような存在は明らかに強者だしな。接近戦はともかく、魔法面で言えば魔女と呼ばれるにふさわしい実力があることが目の前の状況だけでも分かる。

「魔女、全然来ない」

 しばらく待っても魔女がやってこないことにネノは退屈そうにつぶやく。

 魔女が中々こちらに接触をしてこないことに、不思議な気持ちになる。

 中に入れてもらえるように働きかけているわけだけど、全然、来ないんだよなぁ。

「魔女の元へたどり着けないようにしているだけで、実際に家に居ないとか?」

「それ意味ある?」

 ネノは俺の言葉に不思議そうだ。

 魔女の住まいがおそらく森の中にはあるはずだ。

 だというのにも関わらず、俺達の魔力に気づかないというのは正直言って想像がしにくい。俺やネノ、それにメルだって自分の魔法に誰かの――それも強い力を持つ存在の魔力を感じ取れば何らかの接触はすることだろう。

 それをしないのならば――何かしらの理由があるのだろう。

「レオ様、ネノ様、これどうするのー? 無理やり中入る? 壊してしまっていい?」

 メルに関しては無理やり入ってしまえばいいのではないかと強行突破を考えているようだ。

「レオ、どうする? もう少し様子見する?」

「そうだな。もう少し魔力を伸ばしてみて、それでどうかだな。俺だっていきなり自分の住んでいる場所の魔法を壊されたら怖いし」

「それはそう。私もいきなり侵入されたら嫌」

 流石に森自体が魔女の拠点内だとは思えないが、俺ならいきなり自分の魔法が充満しているエリアに人が入り込むのは嫌だとは思う。

 これでいきなり入り込んで、その結果、魔女と敵対関係になるとかも勘弁したい。そう思っているのが正直な感想である。敵対したとしてもどうにでもなりはするが、なるべく穏便な方がいいしなぁ。

 そういうわけで引き続きもう少し様子見をする。

 が、やっぱり何も起こらなかった。多分、このまま待っていても時間がただ過ぎていくように思えた。

 メルに任せると、森全体に漂っている魔力を力づくでどうにかしてしまいそうだったので……。一先ずネノにやってもらう。

 ネノは魔力操作が本当に凄い。なんというか、ネノの場合だと膨大な魔力で力任せにどうにかするということも出来る。だけどネノはそうではなく、努力を続けて精細な魔力操作を可能にしている。

 そういう自分の力を過信することなく、自分の力を磨き続けているところも俺にとってネノの好きな所だ。

 ネノの心地よい魔力が、森を覆っている魔力に人が一人分通れるだけの隙間を作る。

 針の穴に糸を通すかのような、細かな作業。それを簡単に行って、ネノは得意げにこちらを見ている。

「流石、俺のネノ」

 俺がそう言ってネノのことを抱きしめれば、ネノは嬉しそうに抱きしめ返してくれる。可愛い。

「レオ様、ネノ様! いちゃついてないで、さっさと中入ろうよー。入って、閉じちゃおう? 他の人が入るとややこしいでしょ」

 抱きしめあっていたらメルにそんな風に言われたので、体を一旦離してそのまま森の中へと入る。そしてネノは開けた部分を閉じる。

 周りから人が入ってこないようにした後は、そのまま森の奥へと進んでいく。

 正直言って自分の魔法に穴を開けられるというのは、すぐに気づけることだと思う。だから魔女が飛んできたりするのではないかと考えていた。

 だけどやっぱり予想外なことに魔女は俺達が住まいである森にどれだけ影響を与えようが全く出てくる気配がないのだ。

「この森に魔女が居ないのか、弱っているのか……」

「どっちだろ?」

「それにしてもこの森の中って、結構色んな魔物が住んでいるね!」

 俺、ネノ、メルがそれぞれ口を開く。

 外から人が寄ってこないように遮断されている森の中には、多くの魔物達の姿が目に映った。人を見た途端とびかかってくるような獰猛な魔物の数は少ないように見えた。とはいえ、居ないわけではないけれど。襲い掛かってきた存在はメルが全て対応していた。

 森の中で珍しいものなどがないかなどを見て回りながら、奥へと進んでいく。

 魔力に満ちた池のようなものがあったり、魔女が住んでいる場所というだけあって面白いものがちらほら目に映る。一見すると普通のものだけど、よく見たら珍しい薬草だったりも生えていたりする。

 元からこういう珍しいものが多く存在していた場所なのか、それとも魔女が長年この森に住んでいたからこそ影響が与えられたものなのか。

 そのあたりは魔女自身に聞いてみないと分からないだろう。

 魔女が実際にこの森にまだ住んでいるのならば何を聞こうか。そんなことを考えていると、俺達は一つの木造りの一軒家に辿り着いた。

 俺とネノは顔を合わせる。

 おそらくここが魔女の住まいだろう。

 ノックをしてみると、中で小さな物音がした。だけどこちらを警戒しているのか出てくる気配はない。

 何度かノックしてみる。

「だ、誰ですか」

 そしてようやく聞こえてきたのは、何処か怯えたようなか細い女性の声だった。





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