森の傍の街 ①
「なんだかすごく雰囲気が暗いねー? こういう雰囲気の街って初めてかも」
さて、俺達は噂の魔女が住まうとされている森の傍にある街へとやってきた。
その街はメルの言うように雰囲気がとても重かった。これまで俺達が訪れたどの街とも異なる。なんというか、余裕がない。
……魔女に纏わることで、こういう事になってしまっているのだろうか?
状況はまだ分からないけれど、魔女を討伐した後などではなさそうなのでそれにはほっとする。
流石に死んでしまったらどうしようもないしな。
街の中へと入る際、門番には「今のこの街は危険だから寄らない方がいい」と注意を受けたりもした。
――この街が、危機に瀕しているとされている原因はやはり噂の魔女らしい。
あくまでそう言われているだけなのだが、すっかり魔女のせいでこの街が危機に陥っていると思われているようである。
この街は周辺に薬の材料になる植物が沢山生えており、調合師の数も多い。
まだまだ死に至る病と呼ばれているものに対しての治療薬に対する研究もとても盛んだとか。
それを目当てにこの街に周辺の村や街から訪れる人は多くいるようだ。……そういう外からやってくる人々も魔女の噂を聞いてほとんどいないのだとか。
外から人がやってくることで、街の宿や飲食店なども賑わう。寧ろそういう外からくる人向けに宿って経営しているわけだしなぁ。
……それがぱったりと来なくなっており、結構な死活問題になっているようである。
あとはその薬草が生えているのが、魔女が住むとされている森の周辺らしく……危険であるからと薬草を採取しに行く人も減っており、悪循環が起きているというのは軽く聞くことが出来た。
俺達は街の大きな宿に泊まる手続きをしたのだが、底の店主はぺらぺらとそれらの情報を教えてくれた。
魔女に関する感情は、悪いものばかりのようだ。
特に宿屋の店主は、お客さんが減ったことの文句を口にしている。
「お前さん達も、こんな時期に街を訪れるなんて災難だな。何かしらの薬を目当てに来ているのだろうが、残念ながら求めている薬が手に入る可能性は低いぞ。魔女のせいで薬を調合することもままならないからな」
店主はそう言って、嫌そうな顔をしている。
薬草の採取や調合に関しても魔女のことがあり滞っているらしい。
実際に魔女がそのことに関わりがあるのかは全く分からないが、それでも魔女の影響でそういうことが起こっているのは確かなのだろう。
実際に魔女はどういう存在なのだろうか?
街にいる人々からしてみると、魔女というのは悪であるとされる存在なのだろう。
片方の認識しかない人たちから情報を得ても結局新しい情報というのは手に入らない。ただどういう経緯でこういう噂が入ってきたかに関しての情報は集めておいた方がいいだろうけれど。
店主も宿を訪れた街の人々も――魔女に関することを俺達に沢山話してくれる。
ちなみに逆に俺達が薬などを目当てではなくこの街に来たと知ると、警戒されてしまった。
なんというか、魔女の手先ではないのかみたいなそういう風に疑われてしまったようである。まぁ、確かに薬に関する当たり前のような理由ではなく、他の理由で此処に来ているとなるとそう思われても仕方がない。
そもそもこの街は魔女のことがあって緊迫した雰囲気になっている。皆が余裕がない様子で、魔女のことで何かしらの大変なことが起こるのではないかなと思い込んでいるようだ。
俺達はそもそも、魔女に会おうと思って此処にいるわけだ。うん、それを素直に言ったら俺達のことも危険視しだしそうな気がした。メルは言おうとしていたけれど、それは止めた。理由は旅をしていてたまたま寄っただけとはひとまず告げておく。
旅先でたまたまこんな場所に来ているなんて……と同情された。
「ちなみに薬に関しては何処で買えるんですか? どういった薬が売ってあるかは少し気になります」
薬が目当てで此処の街に来たわけでは全くない。
とはいえ、どういった薬が売られているかは確認しておきたかった。あと有用そうな薬は購入して《時空魔法》にしまっておきたいなとは思ったから。
こういう風にその土地だからこそ手に入るものを沢山確保しておいた方がいいなぁと思っているのだ。何か不測の事態が起こった時に対応出来るようにしておきたいなって思うし。
「街の薬師たちのやっているお店がある。ただし薬は結構高価だぞ?」
「ありがとうございます。少しぐらい高くても欲しいものに関しては買えたら買おうかなとは思ってます」
俺がそう言うと、店主は少し訝し気にしていた。
なんていうか、俺達はそういう薬を買えるだけのお金を持っていないように見えるのだろうな……と苦笑してしまった。
それから俺達はしばらく店主や街の人々と会話を交わしてから、宿の部屋で情報を纏める事にした。
魔女に関することで現状分かっていることは、この街の脅威として認識され、街が大変な雰囲気になっていることだ。




