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冒険者の街からの旅立ちと、道中 ⑯

 イベントが終えた後に、しばらくゆっくり過ごしてから俺達は街を旅立つ準備をしている。

 イベントは好評だったので、『レアノシア』へのお客さんも沢山増えている。それだけ注目を浴びることは喜ばしいことだなとは思っている。

 こうして街の人々と交流を深めていくことで、予想外の話も聞けたりとか、色々するしなぁ。

 魔女に関する噂が相変わらず水面下で流れていたりはするようだ。ネノとメルが交流を深めている道場にもそれと同じように魔女のせいで魔物が現れているといった噂は流れているようである。

 表立って流れている噂に関しては、領主たちが「噂話を真に受けないように」と告げ、これ以上信ぴょう性のない噂が出回らないようにはしているらしいが……、正直言ってそれでもその噂は水面下で流されているようである。

 やっぱりこれだけ情報が流されていると、何かしら意図的なものは感じる。

「道場でも魔女を倒さなきゃって言っている人いたよ! なんだか過去に街を襲った魔物に関しても魔女のせいだって言うのも噂で聞いたって言ってて。なんかね、それで親が亡くなったんだって。だから魔女のせいなら魔女を倒さなきゃって言ってた。僕は本当か分からないよとは言っておいたけど」

 メルがそんなことを言う。

 ……何だろう、過去も踏まえて既に起こってしまったことの理由付けにもされているようだ。これまでそういう話はなかったのに、そういう噂が流れているのってやっぱり変だよな?

 しかも領主とかが、噂に対して対応を進めた後にそういう噂が新たに流れているのって不思議な感じである。

「大切な人の仇なら倒さなければならないってなるのは当然だとは思う。俺もネノが誰かに酷いことをされたら自分のことのようには怒るし。でも……それが本当のことかどうか分からない状況で動くのって結構リスクが高いと思うんだよな。いざ、倒した後に別人でしたってなることもあるわけだし」

 その道場にいる人が魔女に対して憎しみを抱くのは当然と言えば当然である。……だけどそれはあくまで噂が本当だったらの話である。

 急に流されてきた噂をなぜ疑わないのかと思ってしまうが、親の命を奪ったかもしれない原因だと思い込んで頭に血が上っているのだろうか……?

「うん。それは僕とネノ様で言っておいたよ」

「なんか、周りの人たち、親の仇なら倒すべきって背中を押してて危ないなって思った」

 メルとネノの言葉に俺は確かに結構危ない状況だなと思った。

 この街だけでもそういう噂が複数流れている。魔女の居る場所から距離があるというのに、魔女のことを悪いように噂している者達がそれだけ多くいるのだ。

 きっと他の村や街でも同じように噂は流されているだろう。いや、寧ろ魔女が居るとされている場所に近づけば近づくほど余計にもっと悪化しているかもしれない。

「早めに魔女の所に行かないと、魔女が倒されているなんていう事態にもなりかねないよな」

 俺は思わずそう呟く。

 ただでさえこの街にも魔女を倒さなければならないなどと、意気込んでいる人がいる。きっと憎しみとかそういう感情がなかったとしても、魔女を倒すことが出来れば箔が付くとかそういうしょうもない理由で魔女を倒そうとする者だって出てくるだろう。

 俺達が魔女の元へ辿り着いた際に既に亡くなっているなんてことになるのは、嫌だなとは思う。

 少なくとも生きている魔女に会って、どんな存在かとか知りたいし。

「それはそうかも。それにしてもこれだけ危険視されているなんて、何をしたんだろうねー?」

「何もしてないかも。それでも何かきっかけがあって、噂、流されている。ある」

 メルの不思議そうな言葉に、ネノがそう口にする。

 ああ、でも確かに何もしてなかったとしても何かしらの理由で噂を流されたりはあるだろう。『勇者』であるネノが本人は否定していても、テディ達との仲を噂されていたのは国や周りがそういう風な未来を期待してのことだろう。そういう意図があれば人は噂を流し始めるものである。

 ダンジョン関連でも俺の噂が意図的に流されていたわけだし。

 ……でも一つの街ではなく、広い地域で魔女の噂が流されているとしてどういう原因があるのだろうか?

 魔女が噂されているように本当に人を害するような存在ならともかく、そうでなかったら取り返しのつかないことになるしなぁ。

「予定より早いが、さっさと魔女の元へ行くか?」

 俺がそう問いかけると、ネノとメルはそれに頷いてくれた。

 二人とも俺と同じように折角魔女に会うのならば生きているうちがいいと思っていているようだ。

 その後、俺達が街を出ると急に言い出したことに人々は名残惜しそうにしていたが……、俺達はそんな彼らをおいて魔女がいるとされている場所へと向かうのだった。

 街を出る際に信ぴょう性のない噂で行動しないようにとは言っておいた。


 ――そうして真偽が分からない噂で魔女が倒されていることがなければいいなと思いながら、俺達は街道を進むのであった。



 第六章 魔の申し子と、魔女の噂 完

これで六章終わりです。七章も引き続き魔女の話になります。

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