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冒険者の街からの旅立ちと、道中 ⑭

 魔女に何があって急に噂されるようになったのか。そしてどうして悪い風に言われるようになっているのか。そのあたりの理由は正直言って定かではない。

 少なくともこの街は実際に魔女が居るとされている場所から遠すぎて、中々核心に迫るような情報は手に入らない。

 そういうわけで一旦魔女の事は置いておくとして、しばらく街でのんびり過ごしているうちに共同イベントの開催日になった。

 俺はひたすらに料理を作るのに今日は専念する。『レアノシア』に関しては、共同イベント中は閉めることにした。長期間、この街に滞在するのならば誰か雇ってもいいかなと思ったけれど、この街には長期間いるつもりではないのだ。

「レオの料理、いつ見ても美味しそう」

 ネノは街の人々との交流だったり、魔法を披露する準備をしたりで忙しそうだがちょくちょく俺が料理をする様子を見ている。ネノは俺の料理を作っている様子を見るのも好きだとよく言っている。

「ネノ、先に味見するか?」

「うん」

 笑顔で頷いたネノは、早速出来立てのその料理を味見する。

 今回作っているのは、この街の特産物をふんだんに使ったシチューや周辺に生息する魔物の肉を煮込んだものやステーキなど様々である。俺達との宿とのコラボということで、《時空魔法》でしまってあるこのあたりではとれない食材なども色々使っている。こういうのは期間限定で提供されるものだからこそ、特別感がでるのだ。

「美味しい。レオのごはん食べると、やる気増える。行ってくる」

「うん。いってらっしゃい、ネノ」

 料理を食べて笑みを浮かべたネノは、そう言ってそのまま自分の対応に向かっていった。

 ネノがこうやって楽しそうにしている様子を見るだけで、俺も頑張ろうというそういう気持ちになる。

「『勇者』様は噂よりも可愛らしい方ですね! あんな奥さんがいるのは羨ましいです」

「レオニードさんの前でだけああいう態度をするのが年頃の女の子って感じですね」

 一緒に料理を作っている料理人達にそんな風に言われる。

 ネノは本当に可愛い。

 俺の前では年相応の姿を姿を見せて、より一層可愛いネノを見ているといつも笑みがこぼれる。

 料理人達とそんな会話を交わしながら、料理を楽しみに来ている客たちと会話を交わしたりする。とはいっても基本的に配膳などは専用の給仕の人たちがいるから手が空いている時に話しかけられるぐらいだけど。

 それにしても俺の作った料理を美味しいと言って食べてくれる人がこれだけ沢山いるのは嬉しい。

 こうして料理を振る舞うことで『レアノシア』の評判も上がっていくしな。いい事尽くめである。

「レオニードさん、この食材は自分で狩ったんですか?」

「そうですよ。前に火山の方に行ったんですけれど、そこで狩った魔物ですね」

 俺が《時空魔法》から取り出した食材を料理人達は興味深そうに見ていたりする。これらは火山で狩った魔物である。

 このあたりは火山からは距離があり、こういう魔物を見ることも彼らにとっては少ないのだろうなと思う。俺のように《時空魔法》が使えたり、後は《アイテムボックス》を持っているならともかくそうでないなら自分の住んでいる地域外の魔物はどうしようもないしな。

 それに収納の魔法具に関しては基本的に持ち運び容量が決まっているのでその関係で大きな魔物の素材に関してはわざわざ遠くまで持って行こうとは思わないだろうしな。

 そういう魔物の食材になる部分について質問をされたら答える。

 狩った魔物は基本的に食べる用途で使うことが多いから、初めて食べる魔物に関してもきちんと調べてから調理方法を覚えておくようにしているのだ。

「やっぱり旅をしているとこれだけ多くの食材の知識を持ち合わせられるようになるのですね」

「私もいつか旅をして、まだ見ぬ食材を見つけて料理をして回りたいです。でも私は『勇者』様達ほど、戦う力はないので難しいかもしれませんが……」

「街と街の移動間で護衛を雇うことが出来れば旅は出来るかと。でももちろん、危険はありますけれど」

 俺やネノ、それにメルは魔物や盗賊をどうにかするだけの力があるので旅をする分には問題はないけれど、そうじゃなければ旅をしていくのは厳しい。旅をする場所の治安にもよるだろうけれど、旅の際に誰かが亡くなることはよくある。

 だからきちんとそのあたりは慎重に進めていく必要がある。

「ただちゃんと事前準備をした上でどうにかしないと駄目だと思いますが……」

 一応、それも言っておく。

 下手に料理人として旅をするのを推奨するのも、違うと思うから。それで俺に勧められるがまま旅に出て亡くなられても困るし。

 そうやって会話を交わしている間に、ネノが魔法使いたちと魔法を披露する時間がやってくる。

 イベントスペースのような場所に、沢山の人たちが集まっている。皆、『勇者』であるネノの魔法を一目見ようと目を輝かせている。



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