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冒険者の街からの旅立ちと、道中 ⑫

 共同イベントをどのように行うかという話し合いを終えた後、すっかりこの街では『勇者』であるネノが滞在していることが有名になっているのもあり……、宿を開いてほしいという要望が多数来ている。

 少しゆっくりしてからと思っていたけれど、皆、俺達の宿に来たいらしいのだ。

 商業ギルドに向かって、土地を貸してもらう。その後は、宿を取り出し、開店準備をせっせと進めていく。

 宿を取り出した段階で大変な騒ぎにはなっていた。

 食事などに関しても提供が出来るし、すぐに開いても問題がないので準備が終わった後はすぐに開くことにした。ただ短期間だけということは先に言っておく。

 あとは共同イベントをやる期間に関しては、宿を閉めることも張り紙などで告知する。このあたりのことは分かりやすいようにメルにポスターを描いてもらった。

 宿泊客はすぐに埋まった。この街の住民も、外から来た人も様々である。誰もが俺達の宿に泊まりたいと思ってくれていると思うと、それは嬉しいなと思った。

 食堂に関しては夜から開けることにする。夜の時間帯に開けることを言ったら、結構早い時間から皆並んでいた。

「この街でも人多いね」

「いいこと」

「流石、レオ様とネノ様の宿って感じ」

「開店して、まだ間もないからかも。あとからお客減る可能性はある」

「そんなことはないと思うけど」

「お客さんに、飽きさせないようにする」

 ネノとメルがそんな会話を交わしている。

 移動式宿という点や『勇者』であるネノが経営しているという点で、しばらくは話題にはなるとは思っている。だけどそれで慢心しているのは違うとは俺も思っている。だから今のうちにまた泊まりたいと思ってもらえる宿に整えるのは大事なんだよな。

 夜の食堂を開けた時間は大忙しだった。俺はひたすらに食事を作る。そしてネノとメルはそれを配膳していく。

 少しでも余裕があるときは、ネノとメルは沢山声をかけられていた。

 やっぱりネノとメルは目立つ。そして二人と話したいと思っている人たちは多くいるのだ。

 ネノたちの仕事の邪魔をするほど話しかけては来ていないようだ。流石にそういう迷惑客が居たら追い出すなりの処理を行うことになるだろう。

 注文された食事を色々と作っていきながらちらちら食事客の様子を見ているのだが、皆が美味しそうに食べていてくれていてそれは嬉しい。

 ネノやメルに話しかけたいけれど、話せない……という様子の人たちもそれなりにいる。まぁ、他の宿との共同イベントの際は街の人たちともっと会話を交わす機会は増えるのではないかとは思う。というかあれだな、普通の宿でこういう感じなのだから、共同イベントってきちんと抽選とかにしないと大変なことになりそう。

 そのあたりは相談しておこう。

 それにしてもやっぱりそれなりに大きな街だとこうやって人が集まるものだなぁ。ネノの名がそれだけ世界中に広まっている証だろう。でもそうだな。いつかは……もっと遠い土地、ネノのことを知らない人たちばかりの場所に言っても楽しいのかもしれない。まぁ、基本的に『魔王』を倒した『勇者』は世界の救世主ともいえるものだからその存在を知らない人たちっていうのは居るものなのかは分からないけれど。

 慌ただしい夜の食事の時間帯を終えて、俺達はゆっくりと一息をつくことにする。

「今日なんか、いっぱいお客さん来たね! 此処に居る間、ずっとこうかな?」

 メルはそう言いながら、俺が作ったパスタをバクバクと食べている。夕食の時間帯に食堂を開くから、自分たちの夕飯は事前にとるか、後にとるかのどちらかなのだ。

「分からない。ずっとかもしれないし、違うかもしれないし」

「そっかぁ。それにしてもここの街の人間、結構僕に興味津々な人が多そうだった!」

「ん。メルに皆、興味津々」

 俺達と一緒に旅をしているから、メルも結構有名になっているしな。後、見た目もメルは目立つし。

 そもそもメルって『勇者』であるネノと一緒に旅をしているから目立つではなく、メル単体が目立つからな。

「宿泊室も、満員。いいこと」

「そうだな。宿泊客と食事客が片方だけっていうのは嫌だしな。両方来るのはいいことだよな」

「うん。皆、泊りたいって思ってくれているのはいいこと」

 客室には限りがあるから、余計に俺達の宿に泊まることに特別感でも皆見いだしているのかもしれない。

 俺達はそんな会話を交わして、その後は後片付けを済ませた。食事客が沢山来た分、その分掃除もきちんとしておく必要がある。あとは明日の準備とかも含めて、やることは色々ある。

 それらを済ませて、その日は眠りについた。

 それからは共同イベントについての話し合いや準備を進めたりしながら、宿を引き続き開店するというのを続ける。その間に街の人たちともそれなりに交流を持つことが出来た。外を歩いていると声をかけられることも多い。ネノやメルも同様のようだ。

 メルに関しては子供達と遊んだり、街の大人たちに何かもらったりとかしているようだった。

 そうやって過ごしている中で、

「レオ様、ネノ様、道場破りしていいって言われたから、僕やってくる!」

 などと、よくわからないことをメルが言いだした。



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