冒険者の街からの旅立ちと、道中 ⑪
魔物の対応をした後は、共同イベントの話し合い進めることになった。どういったものを行うかに関しての会議では俺とネノ、メルと後は先方の宿側の店主と従業員複数名で行われることになった。
それにしても皆がネノに興奮したような目をむけている。俺に対しても同様の目を向けている人もいて、そういう人に関しては「私も『勇者』様達のように素敵な恋人がほしいです!!」とそう言って笑っていた。
俺とネノのセットにそういう視線を向けてくる人は結構いる。
素敵な恋人同士だと思ってもらえていると思うと、俺は嬉しい。
「どのようなイベントがいいと『勇者』様達は思いますか?」
宿屋の店主はそう口にする。
こうやってこちらの意見を尊重した上で、共同イベントを提案してもらえるのはとてもありがたい。
勝手に決めつけられたら、正直言って困るからなぁ。こういうイベントをやって欲しいというのを押し付けられるのも面白くないし。
「俺は料理に纏わるイベントにはしたいですね。料理を作るのは好きなので」
俺個人としてみれば、料理を作ったりするイベントの方が楽しいなと思っている。
料理を作ることと、その料理を美味しいと言ってもらえるとそれだけでも嬉しい。
「ネノはどう思う?」
隣に座るネノへと問いかければ、ネノは楽しそうに笑っている。
「私も、それありだと思う。私のレオが凄いっていうのを沢山示せたら嬉しいなって思う」
「俺もネノの凄さとか、俺にとっての自慢の奥さんなんだよって示せたらって思う。ネノの凄さを示すだとやっぱり可愛さとか、その魔法の腕とかかなぁ」
俺のネノは世界で一番可愛くて、そして強い。
「レオが共同で宿屋の人と料理作る。それで私は魔法を見せつけるとかいいかも」
「それもありだな」
俺達がそんな風に会話を交わしていると、宿屋の店主たちは目を輝かせている。
「それは素晴らしいかと思います。折角なのでこの街で有名な魔法使いたちも招集して、一緒に行う形にしてもいいでしょうか?」
「ん。いいよ」
ネノがそう言って頷くと、彼らは嬉しそうに笑っている。
俺とネノと一緒に共同イベントを行うことをこれだけ嬉しそうにされると、俺も嬉しいなとは思った。それにしてもこの街の有名な魔法使いってどのくらい魔法を使えるんだろうか? 俺やネノは魔法を日常的に使っているけれど、魔法についての専門家であるわけではない。
それこそ魔の申し子と呼ばれているジュデオンさんの方が詳しいと思う。この街の魔法使いだって俺達の知らない魔法や魔法の使い方に対する気づきなどを学ぶ機会になるかもしれないのだ。
「魔法使い、何人ぐらい来るの? どんなことする?」
「そうですね……。『勇者』様と一緒に魔法をお披露目したいと思っている魔法使いは多くいますから、まずは厳選をすることからですね」
「この街、魔法、使える人多い?」
「それなりの数ですね。少しでも魔法が使えるというだけでも『勇者』様と一緒に魔法を披露したがるでしょうし」
「それでもいい」
ネノはこの共同イベントをとても楽しみにしているのだろう。表情自体はいつも通りあまり変わらないけれど、やる気満々な様子である。
そういう一面もネノの可愛さなんだよなぁ。こういうネノを見ているだけで俺は嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「でしたら街側の魔法使いは人数多めでも問題ないですか? 折角の機会なので『勇者』様と共に魔法を披露する機会を多くの者達に与えたいのです」
「いいよ」
こういう共同イベントなどの時でなければネノは大勢と一緒に魔法を披露するとかやらなかったと思う。ネノは自分が興味があることでないと、こんなにやる気じゃないしなぁ。
俺は黙ったまま、楽しそうなネノをただ見てしまう。
「レオ様、何黙ってるの?」
「ネノが可愛いなぁって」
「……レオ様はそればっかりだね」
メルにはそんな呆れた表情をされる。
でもネノが可愛いのは自然の摂理だしなぁ。
「僕は何をしたらいいの?」
「そうだな。俺とネノの手伝いだな。魔法の披露をやりたいなら一緒に派手にやってもいいぞ? 何をやりたい?」
「んー。じゃあ、僕は両方のお手伝いしたい! だから両方やるよ」
メルはそう言いながらにこにこと笑っている。
「それか僕がドラゴンの姿に変化して遊ぶでもいいよ!」
「いや、それはなしで。流石に大混乱になるだろうし。メルも見世物になりたいわけじゃないだろう?」
「うん。それは嫌。じゃあ、やめとく!」
メルは俺の言葉に元気よく答える。
メルの本来の姿はあまり人前で見せない方がいいとは思う。俺とネノが契約を結んでいる相手だから問題ないかもだけど、本来ならメルが人里周辺に居たら危険視されることは間違いないだろうし。それだけメルって力が強い魔物だから。
そうやって俺とメルが会話を交わしている間に、ネノは魔法のお披露目に関する話が終わったようだ。




