店づくり 3
伐採作業を進める。
ノコギリなどはないので、魔法や剣を使ってざくざくと切っていく。
「……本当にレオ様もネノ様もすごいよね。簡単に木をざくざくと切っちゃってさ」
「これぐらい、余裕」
メルの関心したような声に、ネノが得意げな顔をしていて何だか可愛い。ネノの《浮遊》の魔法でいくつかの場所を移動しながら、木を集めていく。
集めたものは全部、《時空魔法》で収納していった。
《時空魔法》のレベルを上げていて本当に良かったと思うのは、こういう瞬間だ。《時空魔法》のレベル上げは結構大変だったけど、これからも《時空魔法》を使ってレベルを上げていこう。
「結構集まった」
「とりあえず、一度帰るか」
「うん」
木材を集めるために伐採をしていたら、もう昼間になっていた。なので一度、家に戻って昼飯にする事にした。
またネノが《浮遊》で、街の近くまで飛ぶ。飛んだまま街に戻れば、騒がしい事になりそうだと思ったから。ただ、街の外から街に入ってもどちらにせよ騒がしかったのでそのまま戻った方が良かったかもしれない。
「あの綺麗な男の子誰だろう?」
「一緒の家から出てきたらしいわよ」
人型のメルを見て、主に女性がきゃーきゃー言っている。確かに人型のメルは美少年というのにふさわしい。中には男でもギラギラした目で、メルを見ている者もいた。……危ない趣味を持っている者もいるようなので気をつけてやろうと思った。メルは自分で何とか出来るだろうけど、万が一何かがあったら寝覚めが悪い。
そう思いながらじっとメルを見れば、
「ん? どうしたの、レオ様ー」
とメルは男の視線に気づいていないのか、呑気だった。
「気にするな」
「えー、逆に気になる!」
「気づいてないなら気にしなくていい。……メルは何か食べたいものあるか?」
「んーっとねぇ、あ、あの屋台の奴食べたいかも!!」
話を変えたら、もう気にしなくなっているあたりメルである。
メルが目を輝かせてみている屋台に視線を向ける。魚の串焼きの屋台のようだ。確かに美味しそうだ。家に戻って、昼食を作ろうと考えていたけれど、折角なので屋台で食べるのもいいかもしれない。
「ネノ、屋台で食べ歩きするか?」
「うん。美味しそう」
「やったー。はっ、でもああいうのって人間ってお金いるんだよね!? 僕、お金持ってない!!」
喜びの声を上げたメルは、自分はお金を持っていないと悲痛そうな顔をする。人型のままそんな姿をさらけ出しているので、周りが庇護欲に駆られているのか「お金、上げたい」とか呟いている女性陣が一部いる。顔が良いというのは得だなと思った。
「別に、メルの分ぐらい、出す」
「本当!? やったー」
「そのかわり、キリキリ、働く。そのうち、お小遣いもあげる」
ネノの言葉に満面の笑みを溢すメル。ぐはっという声と共に、なぜか鼻血を出した危ない人種も周りにいたようだ。……確かに人型のメルは美少年だが、そこまでのものなのかと何とも言えない気分だ。メルは周りを一切気にしていないのか、にこにこしているし。
ネノは周りの様子に気づいているみたいだけど、どうでもいいやと思っているみたいだ。
「じゃあ串焼き買ってくる」
「うん」
「わーい」
ネノとメルには近くにあったベンチの席を取ってもらい、俺が屋台に買いにいった。屋台の店主はネノやメルと話したかったのか、少しだけがっかりしていた。
俺は気にせず、注文をした。店主もがっかりしていたとはいえ、接客態度が悪いとかそういうわけでもなかったしな。
魚の串焼きを買って、ネノとメルの元へと向かう。注目は浴びているが、『勇者』であるネノに近づくのが恐れ多いと思っているのか話しかけてくる者はいない。
「おいしい! レオ様、ネノ様、僕魚あんまり食べてなかったけど、魚も美味しいね」
「うん。美味しい」
「うまいな。流石、漁業が盛んな街だ」
左からメル、ネノ、俺と並んで魚の串焼きを食べる。流石、海が近いだけあって鮮度が違うのか、とても美味しい。
「本当に美味しい……げほっ」
「ほら、メル、水」
おいしいおいしい、と食べていたメルは喉に詰まらせてしまったのかげほげほしだした。《時空魔法》で取り出した水筒を差し出せば、水をごくごくと飲む。そしてぷはーと息を吐く。
「メル、慌てて食べちゃダメ。いったでしょ?」
「……うん、ネノ様、気を付ける」
注意をするネノと、しゅんとしたメルは何だか姉弟のようだ。
それにしても魚も取りに行きたい。店づくりを終えてからになるだろうけれど、新鮮な魚を《時空魔法》で保存しておきたいものだ。
「レオ様、ネノ様、僕、次あれ食べたい!」
魚の串焼きを食べ終えた後、メルが次の屋台を指す。沢山食べたいものがあるらしい。幾つかの屋台の料理をその後、食べ歩きする。どれも美味しいものばかりだった。
それから食べ歩きを終えて、俺達は店づくりを再開した。




