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冒険者の街からの旅立ちと、道中 ⑦

 ネノと手を繋いで、街中を歩く。

 日中の時間帯なので、多くの人々が街を歩いている。

 俺達が取った宿は大通りに配置してある。その人通りの多い道を進んで、周りを見て回る。

「あの建物、大きい」

「そうだな。何の建物だろう?」

 歩いていると大きな建物を見かけた。

 そのレンガ造りの建物は、大きな看板が掛けられている。

「同業者?」

「そうっぽい」

 じーっと見ていると、それが宿の一つであることは分かる。それにしても部屋数もかなりの数がありそうだ。

 出入りしているお客さん達の数はとても多い。それだけ繁盛しているのだろうなというのが伺える。

 俺達の宿は、俺が持ち運びしているからこそ様々な場所で開くことが出来ている。だけど、普通の宿というのは動かないものだ。動かない宿でこれだけ繁盛しているとなると、何かしらサービスが良いとかなのかな。

 それとこの街に、それだけ人が集まるような何かがあることも理由の一つだろう。人が集まらない所で宿を開いても結局何かしら人が集まる要因がないと宿は経営出来ないだろうしな。

 そう考えると俺達のように宿を移動できないのに、人があまり来ないところで宿を経営している人たちって凄いなと思う。

 俺達が宿の入り口の方を見ながら話していることに気づいたらしい、宿の従業員の一人が話しかけてくる。

「良かったら中に入りませんか? 現在、レストランで試食会をしているんです」

 そんな風に誘われて、折角なのでと中へと入ってみる。

 こういう人気の宿だとどういう料理が出されているのだろうかと気になったからというのもある。

 従業員の一人に案内されて中へと足を踏み入れたら、客の対応をしていた一人の男性がずかずかとこちらに近づいてくる。

「『勇者』様!?」

 ネノの顔を知っていたらしく、大きな声でそう言った。

 そのため周りにいた人々が一斉に騒ぎ出す。ネノを見て、皆、驚いた様子を見せている。ネノのことを初めて見る人たちはネノのように可愛い子が『勇者』だと知って大体が驚くからな。ネノの見た目は噂になっているけれど、それでもたった半年で『魔王』を倒した存在はもっと強そうな見た目をしているのではないかと勘違いしているのだ。

「まさか、『勇者』様がこの宿に足を踏み入れてくださるなんて! 今から店主を呼んできますね!!」

「ただ試食しに来ただけ、騒ぎにする必要なし」

 その男性は『勇者』であるネノが此処にやってきたことが嬉しいのだろう。興奮した様子を見せていた。

 ネノとの温度差が激しい。

 ネノが騒ぎにしなくてもいいと言っても、彼らにとっては放っては置けない事態なのだろう。そのままこの宿の責任者が連れてこられることになった。あと、周りにいた客たちも大変騒いでいたので結局、俺達は別室へと案内された。

「私が、街に居ること広まりそう」

「そうだな。泊っている宿に迷惑をかけないようにすぐチェックアウトするか」

「それがいい。そして、土地借りる」

 俺とネノは別室で、従業員が店主を呼んでくる間待っている。ちなみにその間、試食の料理も持ってきてもらったので、有難く食べている。

 こういう場所で『勇者』であることを騒がれてしまったので、このまま街中に広まっていくだろう。そうなれば静かに過ごしたいと思っても出来ないだろうし。それで今、泊まっている宿にも迷惑がかかりそうだ。

 なので、さっさと土地を借りて家と宿を置いてしばらく開くかなどと二人して考えているのである。

 多分、この街の人々もネノが街に居るなら、宿を開いてほしいと思ってそうだしなぁ。

 そんなことを考えながらネノと話していると、店主が連れてこられた。壮年の茶髪の髪の男性は、ネノを見るなり、にこにこしている。一応、俺達は同業者で、ある意味商売敵ではあるだろう。でもこれだけにこやかなのは、『勇者』であるネノがこの街に居ることのメリットの方が大きいからとかそういうのだからだろうか?

「『勇者』様、『勇者』の旦那様。我が宿へ、よくお越しくださいました。この目で『勇者』様を迎え入れることが出来るなんて喜ばしいことです。これからこの街で噂の宿を開くのでしょうか?」

 この街にも、俺達が開いている宿のことはすっかり噂になっているようだ。

「ん。少しだけ開く。でもそんなに長くは居ない」

「なるほど。期間限定で開かれるのですね。是非、私も足を運びたいものです!」

「お客さんとしてくるなら、迎え入れる」

 ネノがそう言うと、その男性は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 俺達の宿に興味津々なようだ。

「こうして別室にお呼びしたのは、『勇者』様への挨拶したかったというのが大きな理由ですがそれだけではありません。実は二点ほど、『勇者』様にお話があります」

 男性は、そう言ってネノの方をじっと見て続ける。

「一点は折角ですから、我が宿と『勇者』様の宿とで共同で何かイベントをしないかということです。『勇者』様の宿とイベントが出来れば我が宿の知名度も上がりますからね! もう一つは最近、この近辺で魔物の被害が多くみられております。こちら、報酬はお支払いするのでどうか倒していただけないでしょうか?」

 男性はそう言った。



 

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