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冒険者の街からの旅立ちと、道中 ⑥

 辿り着いた街に足を踏み入れた際に、入り口に立つ騎士はネノの顔を知っていたらしい。すぐにネノのことを『勇者』だと気づいた。

「『勇者』様!?」

 その騎士が声を上げると、他の騎士も騒ぎだそうとする。

 ネノが「騒がないで」と口にしたら、黙り込んでいた。

 この街は国内でも大きい街なので、王都に行ったことがある人もそれなりに多いのだろうな。

 流石に街の人すべてがネノの顔を把握しているというわけではなかったので、その後は特に問題なく宿まで迎えた。

「この街、どのくらいいる?」

「素通りでもいいけれど、結構見て回るのも面白そうだよな」

「うん。私もそう思う」

 今、訪れているこの街は、大きい。見て回ると楽しそうな場所が多いので、少しゆっくりしてから向かうのもありかなと思っている。

 宿の部屋の窓から外を見るだけで、レンガ造りの建物や教会、道の脇には色とりどりの花々が植えられている。なんというか、上から見る景観がとてもいい。

「なんか道場みたいなのもあるな」

「ん。剣術とかのかな?」

 俺とネノはどこかで特別に学んだというわけではなく、独学で剣術を習得した。どちらかというと実戦経験を経て、今の形がある。

 ああいうきちんと学んだ剣術だと、実践で学んだものとはまた違ったものになるのだろうなと思う。そういう場所で英才教育を受けている人だと、剣筋などが綺麗だったりするんだろうか?

「ねーねー。レオ様、ネノ様。前に本で道場破りっていうの、見たことあるよ! 行ってきていい?」

 道場の話をしていると、メルが急にそんなことを言い始めた。どこでそんな本を読んできたのだろうか? メルは本を読むより体を動かす方が好きだから、あんまり本は読まないはずだけど……。

 港街に居る間に、誰かから借りて読んだりしたのだろうか……?

「駄目」

「えー。なんで?」

「メルは強い。人、甚振っちゃ駄目」

 ネノに駄目と言われて、メルは少しだけ不満そうな顔をしていた。

 道場に通っている人たちと交流を持って、それで手合わせを頼まれたとかならともかくそうでないのならば下手に手手出しをしない方がいいだろう。ただの虐めみたいになるだけだしな。

「そっかー。んー、じゃあ、戦いたい人だけ集めるとかは?」

「メル、そんなに戦いたいの?」

「うん! だってこんなに沢山の人たちがいるんだよ。面白い人もいっぱいいるかもしれないじゃん?」

 ワクワクした様子でそんなことを言うメル。人が沢山いる街なので、それだけ面白い存在が居るのではないかと期待しているようだ。

「魔女とももちろん、どんな存在なのかなーって戦いたいけれど、その前に肩慣らしはしておきたいなって」

 魔女とも戦う気満々らしいメル。魔女と呼ばれる存在にも色々あるから、絶対に戦う力があるとは思えないけれど。

「メル、魔女が強いとは限らない」

 ネノも俺と同じことを思っていたのか、メルに対してそう言っていた。

「えー? 魔女って呼ばれるぐらいだから、強いんじゃないの? 流石にレオ様とネノ様ぐらいの強さはないと思うけれど、ある程度面白いかなって思っていたんだけど」

「魔女も、戦うの嫌いかも。嫌がることしない方がいい」

 ネノにそう言われると、メルは頷いていた。

「ネノ、この街でも期間限定で宿やるか?」

「それもあり。一定期間だけ宿経営するなら、話題になりそう」

 俺の問いかけにネノは楽しそうに頷いている。

 そういう今だけというものに惹かれる人は多い。ここだけでしか見れないとか、今だけしかやっていないとか、そういうものって特別だから。

 俺だってその場所でしか見れないものとかには興味を抱いてしまうし。

 多分、この街の人たちも勇者夫婦が期間限定で宿をやっていたら多く集まるだろうことは予想出来る。この後、魔女の所に行く前に稼いでおくのも一つの手だ。ずっと、人が居ないような場所で宿を開いていると資金が溜まらないからな。

「すぐ開くの? 今すぐ開く?」

「いや、メル、いきなりは開かないぞ。一先ず街をぶらついてからだ。そして商業ギルドに行って、手続きもしなきゃだし」

 すぐにでも飛び出していきそうなメルに俺はそういう。

 宿を開くにしても街中で開くなら手続きはきちんと必要だ。俺達と一緒にいくつかの街に顔を出しているのに、まだまだ人の世界のルールには慣れていないというか、本質がドラゴンなんだなというのが分かる。

 メルは俺達が寿命を終えた後は、人の街に顔を出したりしなくなったりするのだろうか? それとも俺達と一緒に旅をした結果、人の世界によく顔を出そうとするようになるのか。

 そういうのを想像するだけでも楽しいよな。

 その後、俺達は街を見て回るために宿を後にするのだった。

 ついでに商業ギルドを見かけたら、先に宿を開く準備だけ済ませておくか。土地だけ借りておけば宿を出すだけでどうにでもなりはするけれど、準備しておくに越したことはない。

「僕、一人で見てくる!」

「いいけど、問題起こすなよ?」

「ちゃんと、宿、帰ってきて」

 メルは一人で街を見て回るとはしゃいでいるので、俺とネノはそう答えて送り出した。

 そして俺とネノは二人で街を見て回る。



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