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冒険者の街からの旅立ちと、道中 ①

「ネノ、メル、忘れ物はないか?」

「うん。大丈夫」

「問題なし!!」

 俺の問いかけにネノとメルがそう言って答える。

 ――俺達はこれから、冒険者の街を旅立つ。自称『勇者』達のことやダンジョンでの宿経営、パーティーへの参加やダンジョンマスターであるラポナとの出会い。本当に思ったより色んなことがあった。

 期間としてみればそこまで長くなかったのだが、その間でこれだけのことが起こったのだと思うと不思議な気持ちになった。

 宿と家を《時空魔法》でしまって、そのままその足で街から出ていくことにする。

 盛大にお見送りをされた。街中の全ての住民が集まっているのではないかというぐらいに人が沢山いて、驚いたものだ。

「紙吹雪とか凄い振りまいているね」

「後から掃除大変そうだな……」

 紙吹雪をわざわざ準備したのか、振りまいていたりしている。あとはネノに握手だけでもしてもらおうと思っている一味とか。ネノは全部断っていたけれど。

 あまりにも人が多すぎたため、ネノが「邪魔」と一言言ったらすぐに道が開かれたけれど。

 街の外に出れば馬車に乗らないかとお誘いを受ける。ネノの方を見れば首を振っていたので、お断りしておいた。

 今日のネノは歩きたい気分のようだ。

 魔女が居ると噂されている森はまだずっと先なのでのんびりと進むことになる。とはいえ、整備されている街道を通るよりも整備されていない自然の中を突っ切る方が速そうだった。

「ネノ、メル、街道歩くか? それともこっち突っ切るか?」

 俺はどちらでもいいなぁと思っていたため、二人に問いかけた。

「突っ切る方が速そう」

「僕も突っ切る方に賛成!」

 二人も人気が全くない獣道を突っ切ることに賛成のようなので、その道を進むことにする。

「風、気持ちがいい」

 ネノは嬉しそうにそう口にしている。

 今日の天気は良い。穏やかな風が頬をかすめて、確かに気分が良くなるものである。

 そんな穏やかな空間だが、整備されていない場所なので当然魔物は生息している。気分よく歩いている中で、襲い掛かってこられた。その魔物のお肉が美味しいことを知っていたので、長剣で傷をつけないように狩っておく。

 ついでにその場で解体を進める。

 街を出る前に食事はとっているけれど、解体したてのお肉を一口食べるのもありだろう。ということで、細かく切ったものを焼いて食べてみる。うん、美味しい。

 ネノとメルにも焼いたものを渡しておく。二人とも美味しそうに食べていた。

 こうしてゆっくりと道中で、美味しそうなものを狩ったり、採取したりしながら進めるのは楽しい。人が多い街も楽しいけれど、元々俺達は田舎の村育ちなのでこういう人があまりいない場所は落ち着く。

 真っすぐに獣道を突っ切っていくと、川を発見する。川幅が広い。その水は透き通っていて、魚の魔物がちゃぴちゃぴと飛び跳ねている。

「魚も獲っておくか」

「うん。獲る」

 俺の言葉にネノが頷く。

 魔法を使って魚を獲るのもありだけど、折角なので釣りをすることにする。釣り竿をその場で作るところから始めてみる。ネノとメルも楽しそうに釣り竿作成をしている。垂らす糸に関しては、蜘蛛の魔物の巣から糸を持ってきた。こうやってその場で手に入れたものを使って、何かを作るのも楽しい。

「うまく出来ない!!」

 メルは力加減が上手く出来ていないのか、作ろうとした釣り竿を壊してしまっていた。というか、メルは細かい作業が得意じゃないからなぁ。

 ネノは器用にてきぱきと釣り竿を作っていた。

 メルの分は結局、ネノが代わりに作っていた。

 それから出来上がった釣り竿を使って、三人で釣りを始める。

 釣り糸を垂らして、ゆっくりと待つ。

 こうやってのんびりするのも楽しいものである。

「釣り、楽しい」

「そうだな」

「昔も、こうやって釣りしたよね」

「ああ」

 生まれ育った村だと、近くに川や池があったのでこうやってのんびりと釣りをしていることはよくあった。

 仲良くなる前のネノはこうやってゆっくり過ごすこともなかったけれど、ネノが俺に心を許してくれてからは誘ったらこういう風に過ごせるようになったけれど。ネノはなんというか、基本的に一人で過ごすのが好きな方だし、仲良くしている相手から誘われないと頷かないしな。

「レオ様、ネノ様、釣りって退屈! 早く、かからないかなー」

 メルは魚が食いつくのを少し待つだけでも我慢が出来なかったらしい。まぁ、元々メルはドラゴンの姿で大雑把に過ごしていた感じだからな。

「そんなにすぐかからないだろ」

「ん。ゆっくり待つ。メルは他のことしておけばいいと、思う」

 俺とネノは釣り竿を片手に木で作った簡易な椅子に腰かけて、ゆったりしている。メルは退屈で仕方がないようだが、俺達はこうやって特に何もなくのんびりするのも好きだから。

 退屈しているメルはそのまま地面に木の枝で絵を描き始めている。

 宿の絵をどうやら描いているらしく、楽しそうにしている。落書きをするのを途中で魔物に邪魔されて、怒ってその魔物を瞬殺していた。

6月25日に書籍1巻発売です。

書影を活動報告にあげているのでよろしくお願いします

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