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魔の申し子 5

 ネノをぎゅっと抱きしめたまま、魔法を行使する。俺の腕の中でネノは嬉しそうに笑っている。うん、可愛い。

 可愛い嫁を抱きしめられているだけで本当に幸せな気持ちになる。

 気分が良くなって、魔法を使うのも調子が良い。魔法を使う時は、本人の感情の状況というのも重要だ。

 魔法を操るだけの冷静さが失われていれば暴走を熾してしまうこともある。

 《時空魔法》で出来ることを見せていくと、色んな反応を見せてきて面白い。全て見せるわけではないけれど、少し見せるだけでこれだけ目をキラキラさせているとジュデオンさんは純粋だなと思う。まぁ、立場的な面もあるから上から目線だったりもするけれど。

「そろそろ終わっていいか?」

 様々な魔法を見せ続けたので、そろそろ終わらせていいだろうかと問いかける。

「いや、もっとみたいが……」

「そろそろ夕食時の準備をしなきゃならないんだよ」

 俺がそう言えば、渋っていたジュデオンさんはこれ以上魔法を見せてもらうのを諦めたようである。

 というか、いつまでも騎士達に店番を任せてもおけないしな。

「レオニード、ネノフィラー、夕食も食べたいがかなり並ぶんだよな??」

 近づいてきたテディにそんなことを問いかけられる。

「そうだな。この街だとかなりの人数が並んでいるからな」

「そうか……。一先ず早くから並ぶぞ!」

「並ぶのはいいけれど、周りに迷惑かかりそうだったらやめろよ?」

 『勇者』パーティーのメンバーが三人も揃っていれば、それだけ目立つことだろう。普通に並ぶのならば拒絶はしないが、周りに迷惑がかかるようならどうにかしてもらいたいけれど。

 そのまま俺達は宿へと戻った。騎士たちにお礼を言って、何か問題がなかったか聞いておく。特に問題がなかったようなので、そのまま帰ってもらった。

「俺達はダンジョンに潜ってくるぞ!」

 テディはそう言って、ドゥラさんを連れてそのまま去って行った。

 ダンジョンに入るのは初めてらしいので、くれぐれも周りの冒険者に迷惑をかけないようには言っておいた。まぁ、ドゥラさんがお目付け役をしているので大きな問題にはならないと思うけれど。

 ジュデオンさんに関してはテディ達と一緒にダンジョンに潜る気はないようで、街を散策すると言っていた。

「やっと静かになった」

 彼らが去った後、ネノはそんなことを言っている。

 元々ネノは騒がしいのを好んでいない。そう考えると『勇者』として『魔王』を討伐に行った時は散々騒がれて大変だったのだろうなと思う。

 現役の『勇者』パーティーなんて、今の騒ぎとは比べ物にならないぐらい騒がれただろうし。

 ネノの腕を引いて、その体を抱きしめる。

「急に、どうしたの?」

「ネノは『勇者』として頑張ったんだなって実感したから。あと俺が抱きしめたかっただけ」

「ん。頑張った」

 ネノはそう言って、俺の体に自分の手を回してぎゅっと抱きしめかえしてくる。

「私、レオに抱きしめられるの好き」

 そしてそんなことを言うネノはやっぱり可愛い。

 それからしばらく俺とネノはくっついていた。そろそろ夕食時の開店の準備をしなければならないと離したら、ネノは少し不満そうにしていた。そんな表情さえも本当に可愛い。

「テディ達、ダンジョンで問題起こさなきゃいいな」

「第二王子、騒動の元。何かは起こしそう」

「『勇者』として旅していた時はどうだったんだ?」

「色々首突っ込んでた。第二王子、元々目立つ。それに自分から色んな事に飛び込む」

 ネノの言葉にテディが色んな事に考えなしに飛び込んでいく様子はすぐに想像が出来た。そう考えるとドゥラさんは苦労したのだろうなと思う。

 その後、夕食時の食堂開店の際に、客からテディがダンジョン内でとある冒険者の私物を破損してしまったと聞いた。……何をやっているのだろうか? 謝罪して弁償したらしいが、考えなしに突っ込んだ結果らしかった。

 それに夕食の時間に並ぶと言っていたのに、どうやらダンジョン探索が楽しくなってしまい、並び忘れたようだ。ドゥラさんが「時間だ」といっても「もう少し!」と言って結局、此処で食事をすることは叶わなかった。

 ただジュデオンさんはきちんと並んでいたので、夕食を振る舞うことにはなったけれど。

 テディは本当に相変わらずだなぁと思った。

 メルに関してはテディに関する話を聞くと、「楽しくなって並ばないとか子供!」と自分の方が幼体なのにそう言ってゲラゲラ笑っていた。

 それからテディ達は数日、街に滞在していたわけだが……、流石にこれ以上王都を開けるわけにはいかないらしい。

「俺はもっとダンジョンに潜りたい!」

「駄目に決まっているだろうが! もう帰らないと問題になる」

 テディはごねていたが、ドゥラさんにそう言われて王都に帰ることになった。

「私はもっと魔法を上達してみせる」

 ジュデオンさんに関しては、俺の魔法を見てそんな決意をしていたらしい。


 そうして彼らは帰って行った。



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