報酬とこれからのこと ①
「見てみて、レオ様、ネノ様。このきんきらしたのもらった!!」
さて、ダンジョンの暴走の芽は俺達で摘んだわけだが……。
メルは先に危惧していた通り、特に実用性もないキラキラした装飾のついたものをもらっていた。自分で身に付けることもないネックレスとか、そういうのを貯めこもうとするのはドラゴンの習性か? それともメルが子供だからそういうのを集めたがっているのか。
俺達は領主からも、ラポナからも報酬をもらった。
領主からは単純にお金をもらった。これから宿経営をしていくにあたって、お金は幾らあっても損はないから。地位などを与えようとされたけれど、正直言ってそんなものは俺達にとっては不必要なので当然断った。
そういうものを最初からネノがそういう地位を求めているのならば、さっさとその地位をもらっているはずだ。国としては『勇者』であるネノを留められるのならば、手元に置いておきたいと思っていたはずだから。
俺とネノはラポナが準備できるダンジョン産の宝物の中で面白そうなものをいくつかもらってきた。攻撃力が異様に高いフライパンとか。ラポナはダンジョンの宝物に紛れ込ませたことはないらしいけれど、中々面白いものだなと思って出してもらった。あとは一定量の魔力を込めると定期的に宝石を吐き出す不思議な箱とか。そういう面白そうなものを色々ともらった。
後は売ったら価値がありそうなものとか。
流石に根こそぎもらうと、ラポナが今後のダンジョン経営に困ってしまうということだったので全てはもらわなかった。流石にダンジョンの暴走の前兆を食い止めただけでダンジョンの資産と言えるものを根こそぎ奪おうとは思っていない。
「ネノ、そのブレスレッド、よく似合っている」
「うん。いいものもらった」
ラポナからもらったものの一つがこのブレスレッドである。このブレスレッド、中々面白い効果がある。
それは――、
「これで、レオと会話できる」
ネノが言っているように、これは対となるものを身に付けているとそれぞれの声が聞こえるようになるという便利なものである。離れている時にも会話が出来るというのは楽しいことだろうから。
「ああ。こういうのが手に入ったのを考えると、ラポナのお願い聞いてよかったな」
「うん。ダンジョンマスターについても色々知れたし」
「そうだよなぁ。周りが全然知らないことを俺達だけが知っているっていうのも面白いよな」
他でもないダンジョンマスターであるラポナから直接話を聞いているので、少なくともこの街のダンジョンに関しては俺とネノが他の人たちよりもずっと詳しくなっているだろう。そう思うと、俺達だけ知っている情報だと思うと面白い。
これから先、こうやって俺達だけが知っている情報がどんどん手に入っていくのだろうか? うん、そういうものをどんどん増やしていけると思うと楽しみで仕方がない。
まぁ、こういう大きな街で過ごせば過ごすほどそれなりに面倒なこともあるわけだけど。
このダンジョンで過ごさなかったらラポナと出会ったり、ダンジョンマスターについて知ることもなかっただろうし。
「むー、僕もそれ欲しかったなぁ」
「仕方ないだろ。メル。二つしかないんだから」
メルは俺達の身に付けているブレスレッドを見て、少し不満そうな顔をしている。このブレスレッドは二つで対になっているものなので、メルの分はなかった。というかお揃いのものを身に付けるのならば俺とネノが身に付けるものにはどうしてもしてしまうしな。
「メル、今度、三人でお揃いのもの探す?」
ネノがそんなことを言えば、メルの表情ががらりと変わる。一気に明るい表情になって、メルの考えていることは本当に分かりやすい。
「探す! 僕もレオ様とネノ様と一緒がいいもん!!」
そう言い切ったメルの頭を、ネノは撫でる。
それにしてもお揃いの何かか。メルが喜びそうなものだとどういうものを用意した方がいいだろうか?
すぐに消費してしまうものではなく身に付けられるものがいいよな。そう思いながらもすぐには思いつかないので、そのうち思いついたら渡そうと思う。どうせなら、前触れなく渡した方が面白いだろうな。
そういうことを考えるだけで俺は楽しみな気持ちになる。だって絶対にメルの反応が愉快なことになりそうだから。
「そういえば、売れそうなものも色々もらったんだよね? 売るの?」
「まぁ、色々確認してからな。売ったら面倒そうなものは売らない方がいいし」
多分、ラポナからもらったものの中には今まで世に流通してこなかったような貴重なものも多くありそうなのだ。そもそもダンジョンマスターという種族と邂逅することが出来る人と言うのがまずいないから、貴重なものをぽんっと渡されている可能性もあるからなぁ。
売った後にダンジョンマスターの痕跡を探られたりしたら、ラポナが大変そうだしなどと俺は思う。
「ふぅん。そうなんだ」
「考えて行動しないと面倒なことになるからな」
俺がそう言ってもメルはよく分かってなさそうだった。基本的にメルは何も考えていないからなぁ……。
「ねぇ、この街っていつまでいるの?」
ふいに、メルが俺達にそう問いかけた。