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ダンジョンの暴走の食い止め方 ⑤

 目の前でラポナが小さな口で、焼き立てのパンを食べている。

 バターを混ぜ込んだパン生地を焼き、お手製のジャムを塗ったもの。ラポナはパンも気に入ったようで、もぐもぐとそれをどんどん口に含んでいる。

「もっと、欲しい」

 籠いっぱいに作ったパンを置いていたのに、もう食べきってしまったらしくすぐに催促される。

 こういう様子を見ているとなんだか餌付けしている気分になった。

「僕も食べる! ラポナ、食べすぎ」

「だって美味しいです」

「レオ様の作るパンは確かに美味しいけど、僕だって食べたいのに」

 ラポナがパンを全て食べてしまったことに、メルが不満そうにしている。

「ドラゴンさん、そんなに食べたいなら先に食べればいいだけです」

「……ラポナ、結構僕に言うようになったね? 僕、ラポナのこと、どうにでもできるよ?」

「やらないですよね? 『勇者』さんと『勇者』の旦那さんが許可しない限り、ドラゴンさんは私に手を出せないはず……!」

「そうだけど! 僕もパン食べたい!」

「えっと、じゃあ、また『勇者』の旦那さんに作ってもらおう。そしたら一緒に食べましょう」

「じゃあそうする。レオ様、また作って!!」

 メルとラポナの会話はまるで兄妹か何かの会話のように聞こえる。それにしてもすっかりラポナは食べることを気に入ってしまっている。二人とも食べるのが大好きで仕方がない様子に思わず笑う。

 ちなみに今、二人がパンについて言い争いをしている間、ネノが魔物の相手をしている。俺は料理を作ったり、教えたりしていてあんまり魔物の対応はしていない。まぁ、ネノも美味しい料理を食べたがっているし、いいかとは思っているけれど。

 俺は追加のパンを作ることにする。ラポナもパンの作り方を知りたいようで、一緒に作る。メルはネノの様子を見に行った。

「ラポナ、数日間、魔物を倒しているけれど暴走を止めるにはもっと時間がかかりそう?」

「まだかかります……。ごめんなさい、私が考えなしに成長させてしまったので……」

 俺の言葉にそう答えたラポナは落ち込んでいるようである。

 まぁ、『魔王』が半年で討伐されることなどラポナは考えてもいなかったのだろう。ラポナって何歳なのだろうか? 考えなしでこれだけのことをやるというのならばまだ若い? ただこの街のダンジョンって昔からあるはずだからそのくらいの年齢は重ねているんだろうけれど。

「なるほど。まぁ、あまりにも時間かかりそうだったらすぐに解決できそうな方法探すか」

「……はい」

「あまりにも時間かかったら、ネノとメルは飽きそうだからなぁ」

 うん、特にメルは時間がかかりすぎると暴走を止めるための対応を飽きて、やらなくなるかもしれない。メルは子供である。だからこそ飽きっぽいし、忍耐力がいることは出来ないのである。

「『勇者』の旦那さん、パンも色んな種類ありますか?」

「そうだな」

 ダンジョンの話をしながらパン生地をこねこねしていると、パンのことをラポナに聞かれる。ラポナは俺の振る舞ったパンしか知らないだろうから、色々と教え込んだら楽しそうだ。

 パンそのものにも色んな種類があるし、つけるジャムとか一つで色々と変わったりする。俺はパンも米も両方好きだけど、どちらを食べたがるかはそれぞれの好み次第だろう。

 パン生地をこねて、焼いて、その沢山のパンを持っていくとネノも一旦休憩することにしたらしい。四人でパンを食べる。というかさっきも食べていたはずなのに、メルとラポナはまだ食べる気なのか?

 魔物であるから幾らでも食べれるとかあるのかもしれないが、食べすぎじゃないか……? と呆れてしまう。

 パンを食べながら笑みを浮かべているラポナには、《時空魔法》でしまってある読み終えた料理の本をいくつかあげた。そしたらとても喜んでいた。

 このままラポナが料理にはまったら料理が趣味なダンジョンマスターが爆誕し、なんだか面白そうだなと思った。まぁ、ラポナはダンジョンマスターという種族だからこそ、誰かに料理を振る舞ったりはしないかもしれないけれど。

「ラポナってダンジョンの外には出れないのか?」

「む、無理すれば一応出れるかもですけど、離れるとダンジョンの管理権が外れますし、そもそも私みたいな戦闘力皆無の魔物が外に出たら死ぬ確立の方がずっと高いですし……」

 ラポナは俺の問いかけにそう答える。

 ダンジョンマスターは基本的に引きこもりのような種族なのかな? 本当にダンジョンとダンジョンマスターというのは興味深い。

 そんな風に俺たちは時折、ラポナに色々と質問をしながら核から生み出された魔物の対応を進めるのであった。


 ――事態が動いたのは、それからまた数日後である。





「あわわわっ」

 これまで通り、ラポナが魔力を込めてもらっていたのだけど――、ラポナがやらかした。

 核が、異様な光を纏っている。そしてその隣には動揺しているラポナがいる。

「どうしたの?」

「ゆ、『勇者』さん! 私、魔力を、込めすぎてしまったっていうか、核に思ったよりも魔力を吸い取られてしまいました!! このままだとダンジョン内に魔物がいっぱい出ます……。それにもしかしたら外に出てしまうかも……」

 ラポナはネノの問いかけに言いにくそうにそう言った。

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