ダンジョンの暴走の食い止め方 ②
少し話した後、ダンジョンの核があるという部屋へと向かう。
――そこは厳重に封印されているようなそんな場所だった。そのままにしておくと、魔物が飛び出してしまうとかそういうのだろうか。
「なんか魔力が渦巻いている?」
「魔物が出現したがっている状況です」
「このダンジョンの核って、この場所にとって大切なもの?」
「はい。核を壊されてしまえば、ダンジョンは保てません。って、ドラゴンさん、舌なめずりしないでください! ま、まさか核を食べようとしているんじゃ……」
「食べれるの?」
「や、やめてください!!」
その封印されている扉を開く際に、ネノが結界のようなものを生み出す。
その先にあるのがダンジョンの核と呼ばれるものである。大きな石のようなものがその場に鎮座している。俺たちに接触してきたあのひし形の石を大きくしたようなもの。その空間は大きく広がっており、それはそれだけ大きな魔物をそこに置いて置けるようにだろうか?
「そこまで言うなら食べないけど、ちょっとかじるとかは?」
「ドラゴンさんならダンジョンの核を食べることぐらい出来るだろうけれど……、でもかじるでもやめてほしいです。そうなったらダンジョンが弱体化してしまいます……。あ、でもどうしてもというのならば、こっちならまだ大丈夫です。でもこういうの食べて悪影響があっても私には責任はとれません!!」
そう言いながらラポナは俺たちに接触してきた時に使っていたひし形の石をメルに渡す。メルは好奇心旺盛で、体が丈夫だからこそ確かにそういう石ぐらいは食べても問題ないかもしれない。とはいえ、ダンジョン産の食べ物と認識されてなさそうな石を食べたら流石のメルも何かしらの不具合が出るのではないか……? と思ってしまう。
「メル、食べない方がいい。そういうの食べて、メルが不調、困る」
「ネノ様がそういうなら食べるの諦める!!」
ネノも俺と同じことを考えていたらしく、メルに注意していた。メルは結局それらを食べることを諦めたようで、ラポナがほっとした様子を見せている。
「食べないでいてくれるなら、それはそれで嬉しいです。えっと、じゃあ、このまま魔物を出していいですか?」
「自由自在に出せるのか?」
「ある程度は。でも暴走すると勝手に出てきますね……。ちょっと意図的に今回は強めの魔物を出すので、ぎりぎりまで弱らせていただけると助かります!」
ラポナの言葉を聞きながらダンジョンマスターという種族って本当に様々なことが出来るんだなと思って不思議な気持ちになった。ダンジョンの地形を変えたりとかもそうだし、帰還ポイントに関してもダンジョンマスターが設定しているようだし。魔物たちの中でも中々独自の生態系と力を持つ種族なんだろうなと思った。
「レオ様、ネノ様。僕が倒していい? 僕、倒したい!」
「いいぞ」
「うん。大丈夫」
暴れたくてうずうずしている様子のメルは、ダンジョンの核からどんな魔物が出てくるかというのが楽しみな様子である。
ラポナはダンジョンの核へと手を伸ばし、魔力を流しているようである。
どういう仕組みで、どんなふうに魔物を増やしているのかは分からないが核と呼ばれるものから自由自在に魔物を生み出せるというのは凄いなと思う。あの核から魔物を生み出せるのはダンジョンマスターだけなのだろうか? もしそれ以外でも魔力を込めれば魔物を生み出せるのならば大変なことになりそうだ。核を狙って色んな人がダンジョンを訪れそうだ。
ダンジョンマスターが普段過ごしているであろうダンジョンの深部まで訪れられる存在がどれだけいるか分からないけれど、その種族自体が戦う力を持たないのならば――その力を利用しようとする人って多そう。そういう懸念があるからこそダンジョンマスターたちは基本的にその存在を知られないように動いているのだと思う。
――そしてそんなことを考えていると、核がぴかっと光り、その場に魔物が出現する。
それはメルと同じようなドラゴンの一種だろうか。大きな茶色の翼と、凶器のような爪を持つ。ぎろりと黒い目が俺たちを見る。動こうとしたその魔物の真下には魔法陣のようなものが描かれており、そこからは動けないようだ。
「ああああ、やっぱり私じゃ制御出来ない魔物が出てきました…! 拘束や服従させることは無理なので、このまま私の制御を離れます! ドラゴンさん、よろしくお願いします!!」
「うん。まかされたよ」
あの魔法陣のようなものが制御に関わっているのだろうか。それにしてもラポナが制御できる範囲の魔物が出たら、そのままダンジョン内に通常の魔物か階層のボスとして配置されるってことかな。
「あの魔法陣、複雑」
「そうだな。少し見ただけではどういうものが組み込まれているか分かりにくいよな」
「うん。でもじっくり見たら分析できそう」
ネノは初めて見る魔法陣に興味津々のようである。俺もあの魔法陣、どんなものなのか気になる。
「『勇者』さん、『勇者』の旦那さん。出来たら分析とかしないでもらえると嬉しいです……」
青い顔をしたラポナにそう言われたので、一旦分析はしないことにする。ダンジョンマスターにとってあの魔法陣のようなものは重要なものっぽいから。
そういう会話をしている間に、パキンッという音と共に魔法陣が壊れた。そしてその魔物の制御が離れる。その魔物に向かって、メルが意気揚々ととびかかった。