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街での宿経営と、ダンジョンの話 ⑤

「じゃあ行ってくる」

 メルから話を聞いた翌日、早速お昼時の時間を終えた後に俺はダンジョンへと向かうことにした。

「いってらっしゃい、レオ」

「いってらっしゃい!」

 ネノとメルから送り出され、宿を出る。

 ダンジョンへと向かう最中にも視線は当然向けられている。領主が対応を進めてくれたのもあってか、俺への視線は少し以前とは変わっている。相変わらず俺のことを悪い風に噂している住民たちもいるけれど。

 例えダンジョン内で何かしらのことが起こったとしてもどうにか出来るだけの物資は持っているので、どうにでもなるだろう。俺がしばらく宿に戻らなかったとしてもネノたちは《アイテムボックス》を持っているのでしばらくはそちらも問題ない。

 さて、ダンジョンでどんな話が聞けるだろうか。

 そんなことを考えながらダンジョンの中へと足を踏み入れた。

 俺は『勇者』であるネノの夫だからというのもあり、ダンジョンにはすぐに入れた。まぁ、ダンジョンの入り口にいる兵士たちは俺たちのことをよく知っているし。

 ついでにそこでダンジョン内の異変に関しては聞いておく。

 ここ最近で特に異変が加速しているように思えるとのことだった。元々少しの変化は俺たちがこの街へと訪れる前から起きていたことらしい。

 ――そういう事情があるからこそ余計にネノがこの街にやってきたことにそのことを感じ取っていた人たちは期待していたのかもしれない。

 ネノはなんというか、運が良いというか、何かしらやっぱり持っているんだろうなと思う。タイミングが良いというか。

 俺はそんなことを考えながら、魔物たちの相手をする。

 確かに少しは魔物の量は増えているのかもしれない。街で宿を始めてしばらくの間で色々と変わっているのだろうか?

 ダンジョン内には冒険者たちの姿はあまり見られない。

 以前よりも人気が少ないのは、それだけ危険度が増しているということかもしれない。

 さて、俺がこうしてダンジョンにやってきたわけだけど今の所はメルが接触されたものには接触されていない。

 ダンジョンに来て欲しいという旨は聞いたけれど、何処に行けばいいかなどは全く分からない。メルもダンジョン内を徘徊していたら急に話しかけられたと言ってたし。そうなるとひとまずぶらつきながら向こう側から接触をされてくるかどうかを確認するべきか。

 まぁ、今日接触をしてこなかったらそれはそれでいいか。その時はまたくればいいし。

 それに向こうから来て欲しいといっているだけであって、俺が絶対にその声の主と接触しなければならないというわけではない。もしこれで何度かダンジョンに赴いて接触がなければ、そのままにしても俺たちにとってみれば問題はないのである。

 そういうわけでダンジョン内を一人でぶらぶらする。

 現れた魔物を狩りつつ、下層へと進んでいく。

 途中で魔物に襲われている冒険者パーティーを見かけた。そのパーティーは、こういう状況のダンジョンに入ることを許されているだけあって難なく魔物の相手をしていた。

 特に危機には陥ってなかったので、手を出さなかった。そういうのは途中から手を出すとややこしいことにはなるからな。

 彼らもダンジョンの異変に関しては調べているのだろうなと、それも思う。

 彼らが戦っていない時に話しかけて、色々と聞いてみると良いかもしれない。とはいえ彼らからしてみればダンジョン内でゆっくり話をするというのは難しいかもしれないが。

 料理でも振る舞って、代わりに話を聞くのもありかもしれない。ダンジョンの中だとそういうほかほかの温かい料理を食べることは難しいらしいから。俺は《時空魔法》が使えるから何処でも美味しい料理を食べれているけれど。

 途中で見かけた冒険者に実際に料理を渡してみる。そして代わりに話を聞いてみる。

「ダンジョンの中でこれだけ美味しい料理が食べられるなんて」

「流石、『勇者』の旦那様だ」

 そうやって彼らは嬉しそうに声をあげていた。

 彼らから聞いたダンジョン内での異変に関しては、事前情報で集めていた通りのことでしかなかった。

 あとはひし形の石に関してはたまにダンジョン内で見かけることはあるものらしい。ただしそれは見かけるだけであり、それ以外の動作は見られていないんだとか。となるとそのひし形の石から話しかけられたという状況って珍しいのではないかと思う。

 ダンジョン内で不思議な声が聞こえてきたというのも聞いたことがないらしい。ただし時折よく分からない事象はダンジョンでは起こるものらしいのだ。だからよっぽどの異変じゃないと結構皆、気にしなかったりするようである。

 彼らはダンジョンの暴走が起きたら嫌だと痛ましそうに口にしていた。冒険者の街と呼ばれるこの街は、昔にダンジョンから魔物が溢れた記録は残っているのだ。目の前にいる冒険者たちは実際にそれを経験したことはないだろうが、そういう記録を知っているからこそ起こってほしくないと思っているのだろう。

 そういう冒険者たちの話を聞いた後、俺はまた一人で奥深くへと潜っていく。

 そしてその最中に、

『そこの『勇者』の旦那さん、私と話をしてくれませんか!』

 メルが言っていたひし形の石が、目の前に現れてそう話しかけてきた。



 

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