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到着 2

 海でしばらく遊んだ後、俺達は今日の宿をどうするかという話し合いをすることにした。とはいっても《時空魔法》で家を持ち運びしているのもあって正直土地さえ貸してもらえれば宿に泊まる必要性は一切ない。それか土地を借りる事が出来なければ街の外に家を出して寝泊りする事もありだけど、この街でお店をやるとするのならば街の中で寝泊りをすることを考えた方がいいだろう。

「土地、借りれるか、聞いてみる?」

「そうだな。広めの土地を借りる事が出来たら、店舗用の建物を建てられるだろうし」

 土地だけ借りるのであれば、そこまでの値段もしないだろう。とはいえ、田舎と都会では土地の値段も大きく異なる。生まれ育ったような村であれば土地代なんてあってないようなものだっただろうけれど……。田舎だから手続きとかもなかっただろうし。でもこういう大きな街だと色々とややこしいはずだ。そんな風に村長が言っていた。

 街中を歩いていると、『勇者』のネノとドラゴンのメルが一緒に居るからか周りから視線を向けられてしまう。一々気にしていても仕方がないので特に対処はしないけれども。

『レオ様、ネノ様、まずは何するの?』

「不動産、扱ってるところ探す」

「商会とかに行った方がいいか?」

「うん。大きめの商会がいい」

『土地をわざわざ借りなきゃならないって人間って面倒だよね! 僕らの世界だと住みたい土地があればそこに住んでる連中を追い払ったり、こっちの方が強いんだぞって見せつければすぐ住めるのに』

「そりゃあ、メルはドラゴンだからな。ドラゴンの世界だとそれでいいかもだけど、人の世界でそれは駄目だろ」

 ドラゴンの世界では住みたい土地があれば自分が強者な事を見せつけて奪ってしまえば問題ないかもしれないが、人の世界でそれをやってしまえば色々と問題だ。正直、俺とネノなら奪って解決であるのならば簡単に土地とか色々手にする事は簡単だけれども——、俺やネノはそういう物騒な手段で生活をしようなどと思っていない。

 そりゃあ、やろうと思えば出来るけれど基本的に俺もネノも平和主義だ。力づくで人の物を奪ったりすることに快感を覚えるような危ない性格の人も世の中には少しはいるらしいけれど、生憎そういう趣味はない。

 というか、メルは言葉は通じようともあくまで人ではなくドラゴンだ。人間である俺達とは感覚が違う部分があるだろうし、人の街で過ごすのならばメルが何か問題をやらかさないように俺達で見ておかないと。

 まぁ、俺は生まれ育った村から出たことはほぼなかったし、ネノも『勇者』として旅をしていて普通とは違う生活をしていただろうから、街での常識とかは分からないけど。でも、少なくともメルが言っているように力づくで土地を奪うとかが駄目なのは分かるからそういうのは止めよう。

「どういう土地がいい?」

「海が、見えるところ。ね、レオ、魚捕ろう。レオの魚料理、食べたい」

 どういう土地が良いか問いかければ、ネノは海が見えるところがいいと笑った。そして俺の料理を食べたいという。そういうネノの言葉とか態度に、俺は毎回可愛いと思ってならない。こんなに可愛いネノが俺の奥さんなんて、俺って本当に幸せ者だ。そんなことを考えたらニヤけてしまっていたらしい、ネノに「何か嬉しい?」と聞かれた。

「ネノが可愛くて、ネノが奥さんで嬉しいなって思っただけ」

「……私もレオがかっこよくて、レオが旦那さんで嬉しいって思う」

「一緒だな」

「うん。一緒。……奥さん呼びも、あり。時々呼んでみて?」

「俺もネノが旦那とか、旦那さんとか呼ぶのありだと思うからたまに呼んでほしいかな」

「ふふ。旦那様、ってなんかいいね」

「そうだな、俺の奥さん」

 何だかネノが”奥さん呼びもいい”というからそうすれば、ネノが花が咲くような笑みを零した。可愛い。たまに旦那呼びされるのもいいよなーって俺も思っているけど。

『もー!! 何で隙あらば二人で見つめ合ってにこにこしているの!? 通行人たちが何か見てはいけないものを見てしまったのでは? みたいな恥ずかしさとかから目をそらしているよ!?』

 メルにそう言われて周りを見れば確かに結構顔を赤くしながら視線をそらしていたり、こちらをちらちら見ていたりしていた。まぁ、でも周りがどう思おうが別に関係はない。ネノが可愛いのは事実だし、周りにどれだけ人が居ても問題はない。

「別に、周りがどう思っても関係ない」

「うん。俺もそう思う」

『恥じらいを覚えなよ! 本人たちが良くても、その、僕とか周りはうわあみたいな気になるからね!! 近くでいちゃいちゃされても周りは困るからね??』

「困るなら、見なきゃいい」

「だよなぁ」

『もー、マイペースなんだから』

「メルも混ざる? メルも家族みたいなもんだし」

「ネノがいいなら混ざってもいいぞ?」

『何でそうなるの!? か、家族みたいっていうのは嫌じゃないけど! 僕は人前で好き好き言い合うのとか恥ずかしいから嫌だからね!?』

 人前は嫌だけど、人前ではなければいいらしい。ネノと視線を合わせる。二人とも同じ事を考えていると思う。

 今度、三人の時にメルに「家族みたいに思っている」とか言ったらどうなるか試してみようと二人で決意した。


 そんな風に会話を交わしていれば、ようやく目的の商会にたどり着いた。



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