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街で宿の開店と噂話と ②

 外に並んでいる客たちを中へと入れる。食堂の客席数も限られているので、全員を入れられるわけでは当然ない。ダンジョンの中でしか宿をやっていなかったので、その分食べにこれなかった客たちが押し寄せてきている感じのようだ。

 しかしまぁ、事前情報を集めていない人が多いみたいだ。

 食堂で振る舞う料理は俺が作っているわけだけど、『勇者』であるネノの手料理を食べれると思っていた人も多いようだ。『勇者』が作った料理だからといって何も特別なものはないのだけど……、なんだろう、ネノが作った料理だと何か特別な効果があると思っているのだろうか……? ここが冒険者の街だからこそ余計にそういう特別を期待するのかもしれない。

「『勇者』様の作った料理を食べたら強くなれると思ったのになぁ」

 ……本気で流石にそんなことを思っているわけではないと思うが、そうやって簡単に強くなれたら世の中は強い存在だらけである。

 ネノだって昔から特別ではあったけれど、その強さに関して言えば努力の成果でもある。幾ら『勇者』だったとしてもネノ自身が強くなろうとしなければ今のネノはいないしなぁ。ネノがたった半年で『魔王』を倒すことが出来たのもそれが大きな理由だろうし。

 ネノの料理を期待していた人たちも、俺の料理を食べて満足して「美味しかった」と言ってくれていたのでそれに関しては喜ばしい限りだった。美味しいものを食べるとちょっとした不満なども吹き飛んでいくものである。

「『勇者』様の旦那様は料理が上手なんですね」

「ん。レオ、ご飯作るの上手」

 ネノが客とそういう会話をしているのが耳に入ってくる。俺が褒められて嬉しそうにしているネノは本当に可愛い。こちら側から表情は見えないけれど、嬉しそうにしているんだろうな。

 お昼の時間帯、俺はひたすら手を動かして料理を作った。

 ネノは接客をしていて、メルは外に並んでいる人たちを案内しており、三人とも大忙しの状況だった。

 街で開く初日のお昼時なので、通常よりも長めに食堂に客を入れる時間を取っていた。とはいえ、思ったよりも並ばれており流石に全員を中に入れて料理を振る舞うのには無理があった。というかそんなことをしたら夕食の時間帯までかかりそうだったのだ。

「えー。入れないんですか?」

「こんなに並んだのに……」

 大抵の人は大人しく帰ってくれたけれど、一部の者たちは文句を口にしていた。これだけ並んでいたのだから食べれるのが当然とでも思っていたのかもしれない。

「レオ様、ネノ様、人、凄く多かったね!」

「そうだな。明日以降には少し減ってくれるといいが」

「ん。あまり多いと大変」

 これだけの人を相手にしたのにメルはとても元気である。まぁ、俺とネノも体を鍛えている方だから疲れは感じていないけれど。

 こういう接客業に関しても体力って重要だよなと宿をやっていると思う。

 それにしても初日だからこの忙しさだとは思いたい。流石に街にいる間、ずっとこんな感じだと大変すぎるからなぁ。

 食材に関しては《時空魔法》でかなりの量を保存しているので足りるとはいえ、補充しに行く必要もある。

 食堂の片づけを終えた後、俺たちも食事をする必要があるので遅めの昼食を食べた。

 俺が食べたくなったので魚の照り焼きを作った。タレに関しては事前に自分で用意していたものになる。砂糖や少量の酒、あとは商人から買った醤油などを加えたものである。醤油を購入した商人から、米と一緒に食べた方がいいと言われているので米を炊いて一緒に食べることにした。

 前に買い込んだ米が少しずつ減っては来ているので、米を売っている商人を見かけたら多めに買っておきたいな。

「レオ様、これ、おいしー!!」

「うん。美味しい」

 ちなみに米と照り焼きに関しては今回は食堂のメニューには入れてない。ダンジョン内で少量の客だけの場合は米を振る舞うこともあるが、流石に米はそこまで量があるわけではないから。

 俺も自分で食べていて美味しさに満足した。いっぱい働いた後に美味しいものを食べると、それだけでやる気が出てくる。

 食事を食べた後は、夕食時に向けて準備をいろいろしてみることにする。仕込みと掃除と、洗い物――そのあたりを三人で分担して進める。後は宿泊客からの要望を聞いたりとか、やることは色々ある。

「俺、ちょっと買い出し行ってくる」

「いってらっしゃい。私、留守番してる」

 ある程度、準備を終えたので俺は買い出しに行くことにした。何か面白そうな食材があったら買い足しておきたいし、このままの調子だと少なくともしばらくは食堂もかなり混雑しそうだしな。

「いってらっしゃい、レオ様。僕は何しようかなー」

「メル、暇なら街の外で狩り。《アイテムボックス》渡す」

「ダンジョンじゃなくて街の外?」

「ん。ダンジョン、素材消える。街の外で魔物狩ったら全部素材使える」

 メルはネノから狩りに行くように言われて「じゃあ行く」と口にしていた。そういうわけで俺とメルはネノを宿に残して、外に出る。

 俺は街で買いだし、メルは街の外へ狩りに向かうのだった。



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