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街で宿の開店と噂話と ①

 街での宿を開店する。

 ネノが『勇者』だと露見してから俺たちはずっとダンジョン内で宿を開店していた。

 しばらくの間、ダンジョンにこもっていたから少しは煩わしい噂もなくなったかなと思ったけれどまだ色々噂話は出回ってそうだった。

 街での宿に関しても自称『勇者』達に関しては宿には入れないようには相変わらずする予定だ。

「おー、人、多いね」

 メルが宿に並ぶ人たちを見て楽し気に声をあげる。

 街の人たちも泊れるようにツアーなども行っていたわけだが、まだまだこの街には宿に泊まりたい人たちは多くいるようだ。これだけ客が来るのは良いことである。

「そうだな。先着順で泊めるとして、他の客には予約してもらうか」

「ん。そうする」

 これだけ並ばれても客室に限りがあるため、全員を通すことは出来ないだろう。

 空き地を借りて、その場に宿を出している状況のわけだけど周りには他の店舗もあるので迷惑にならないようにしなければならないだろう。別に周りが何を言おうがいいけれど、お店の評判は下げない方がいいだろうし。

 開店すると次々と客が入ってくる。

 メルが客たちを中へと案内し、その後に並んでいた客たちに関しては予約と言う形にしてもらった。部屋を取れた客の中には「数日泊まりたい」と口にしている人も多かったけれど、待っている人も多いので一泊だけに調整してもらうことにする。

 ダンジョン内で増室作業はしたけれど、それでも部屋数は足りない。

「折角『勇者』様の宿に泊まれるからと遠くからやってきたのに泊まれないなんて!!」

「私たちを誰だと思っているんだ」

 そんな風に文句を言っている人たちも中にはいたけれど、メルが力づくで黙らせていた。

 それにしても少し力を見せつけられたら文句を言わなくなるなら、最初からそういうことを言わなければいいのにと思わなくもない。基本的には説明をすればそのまま帰っていく人の方が多いけれど、世の中にはいろんな人がいるものである。

 『勇者』であるネノに対して、「『勇者』とはかくあるべき」とそう主張して、その想像通りの『勇者』でなければ勝手に幻滅していたりするようだ。

 それにしてもここが冒険者の街と呼ばれるような場所だからこそ、より一層『勇者』という存在が特別で。『勇者』に対する関心が非常に高いのがよく分かる。

「ダンジョンの中の方が、客、聞き分けいい」

「そうだな」

 ダンジョンでの宿泊客も食事客も基本的に冒険者で、そういう職業をしている相手だからこそ自分よりも力が上の存在のことはすぐに聞くのだ。強さというものが一つの基準なのだと思う。

 ダンジョンの外の街の方には当然、戦うことをしたこともない普通の客も多い。

 面倒な自称『勇者』たちは本物の『勇者』であるネノがいるので、それを名乗ることはなくなっているようだ。その自称『勇者』業で生計を立てていた者たちは苦労しているらしい。

 というか、自称『勇者』たちをそのまま放置していた領主たちもよく考えたらアレだよな。まだネノが温厚というか、細かいことで怒るタイプじゃなかったから良かったけれど――、『勇者』であることにプライドを持ち、自称『勇者』など許さないといったタイプの人間だったならば問答無用で直接処罰されていたのではないかと思う。

 パーティーで領主と話す機会があるのならば、聞けたらどういう意図があって放置していたのかは聞いておいてもいいのかもしれない。自称『勇者』たちがあれだけのさばっていたのはそれが受け入れられる環境があったからだし。

 それで俺とネノは少なからず迷惑はかけられているし。

 自称『勇者』を名物として観光客を呼んでこの街を発展させたかったとか? まぁ、それならまずは当の『勇者』であるネノに許可をもらってからやるべきだったと思う。結局何かしら名物を作るにしても、そのあたりの手回しをしておかないと後から綻びが出来るものだ。

 俺も何か始める時はちゃんと手回しをして行わなければなと、そんな気持ちになる。

「あまり面倒だと、ダンジョンだけにする?」

「ちょっと様子見してからな。街でも宿やった方が楽しそうだし」

「それはそう」

「というかあまりにもアレだったらこの街からさっさとずらかるのもありだしな」

「ん」

「領主はネノと交流を持ちたがっているし、すぐにずらかるの止めるかもしれないけどな」

「その時は、交渉」

「面倒な連中をどうにかするならこのままとどまるって交渉するのもありだよな」

「そう」

 ネノは俺の言葉に頷く。

 それにしても領主はこの街の状況をどのくらい理解しているのだろうか? 『勇者』に対する噂が色々出回っていたり、自称『勇者』たちの件に関してもそこまで対処していないようにも思えるし。

 ネノにこの街に留まって欲しいとそう思うのならば、もっと何かしらやることがあるのでは? と思った。

 その後、お昼時になるまではのんびりしていた。

 そしてお昼時になると、泊れなかった客たちも含めて沢山の人数が外に並んでいた。





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