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メルセディス・ドラゴアージはかく思う。②

「よいしょっと」

 僕はダンジョンに潜っている。

 ネノ様が『勇者』であるというのが露見してから、僕は一人でダンジョン内をうろつくようになっている。

 元々ダンジョン内でレオ様とネノ様は宿をやっていたけれど、これから街の方で宿をやるんだって。僕は「ダンジョンで遊んでくる」と言ってここにいるんだ。

 ダンジョンというのは不思議で、面白い。

 僕は母様から色んな話を聞いていたし、それなりに生きているのだけどダンジョンというものに入ったのは今回が初めてなので毎回楽しい。だって突然魔物が湧いたりするし、なんでだろうって思う。

 ダンジョンの外だとあたり前だけど突然魔物が現れるなんてことはない。

 十階層ごとに謎に帰還ポイントというのがあるのも、宝物がおいてあるのも、それでいて倒した魔物の処理を早めにしないと一部の素材を残して消えてしまうのも――うん、よく分からない。

 なんていうかダンジョンって、人間からしてみれば大変な場所らしいけれど僕はそこまで危険な場所には思えなかったりする。

 だってさ、ダンジョンってものは入ってくる人に対して優しいというか、かなり配慮がされたもののように思えるから。

 誰がどういう理由でこういうダンジョンを作っているのかは分からないけれど、一度潜ってしまえば帰れないではなくて、帰還するための場所があるってかなり優遇されていると思う。しかも人に対しての配慮というか、この場所って人がやってくることを想定して作られているようなそんなよく分からなさがある。

 まぁ、僕にとってはダンジョンがどういう意味を持つかなんてどうでもいいことだけど。

 こうしてレオ様とネノ様と一緒にダンジョンに来れただけで楽しいし、こういうダンジョンがどういう意味を持つかも僕にとっては何の関係もないことだしね。

 どちらにしても僕にとっては楽しい場所でしかない。

 どんな味するかな? って気になるものも沢山あるしね! でも前に危ないもの食べた時にレオ様に注意されたから、ちゃんと食べていい物か聞いてから食べることにしている。僕は人間よりも体が頑丈だし、めったなことでは食べ物で倒れたりはしないけれど……それでもレオ様とネノ様に迷惑をかけたくないもん。

 僕、二人に嫌われたらすごく悲しくなる自信あるよ。

 そういえば、僕たちがダンジョンで宿をしている間に結構よく分からない噂が出回っていたりしたんだよ。僕、何言っているの!? ってなった。

 ネノ様が凄くて特別だから、レオ様と結婚したのは偽装結婚で何かしらの目的があるみたいななんか難しい話! 偽装結婚ってなんだろうって思っていたらレオ様が教えてくれた。

 好き同士じゃないのに一緒にいて結婚することらしい。僕はそれを聞いて意味が分からなかった。だってレオ様とネノ様って隙あらばくっついていて、仲良くしているんだよ!! 誰がどう見ても二人とも互いに大好きなのに、よく分からないこと言わないでほしいよね!

 そもそもレオ様のことを皆、馬鹿にしすぎなんだよ。レオ様、凄いのに! 僕はよく理解出来ないのだけど、人の世界だと肩書っていうのが重要なんだって。ネノ様には『勇者』って肩書があるのに、レオ様にはそれがないから皆がレオ様をどこにでもいる普通の人だと思っているらしい。そんなわけないのに。

 僕はレオ様のことを周りが全然理解せずに好き勝手言っているのを聞いてむしゃくしゃしたんだよ。でも力任せにぶちのめしたら死んでしまうかもしれないから、イライラした気持ちをダンジョン内で発散している。

 レオ様とネノ様がそういう噂に関しては自分たちでどうにかするって言ってたし。

 それにしても今度、パーティーっていうのに参加することになっているんだ。そのパーティーでもよく分かんないことを言ってくる人いるかもって二人は言っていた。

 ネノ様には本当に我慢できないこと言われたらぶっ飛ばしていいと言われているけれど、なるべく二人に怒られないようにはする予定! 美味しいものも沢山あるって聞いているから、そのあたりは食べるの楽しみだったりはする。

 何より、レオ様とネノ様がとっても楽しそうだから僕は嬉しいしね。

 それにしても人間って不思議だよね。貴族とか、平民とか、そういうので色々違いが多いみたい。強いか強くないかで上に立つかどうかを判断するなら分かるけど、貴族ってよくわかんないよね。

 レオ様とネノ様がパーティーに参加することで皆、騒がしくしてるみたい。ネノ様はそういうパーティーっていうのにあんまり参加しないんだって。

「きゃあああああ」

 パーティーのことを考えながら、ダンジョン内をぶらぶらしていたら悲鳴が聞こえてきた。

 放っておいたら死にそうだし、一応助けてあげることにする。僕がそちらに向かうと、大きな魔物に人間が追われてた。

 その四つ足の魔物を思いっきり殴って倒しておく。

「あ、あなたは『勇者』様のところのメルセデス様ですか? あ、ありがとうございます!」

「お礼を――」

「要らない」

 なんか色々話しかけられたけれど、僕は特にこの冒険者たちと話すつもりはなかったのでそう言ってそのまま去った。



 そのままダンジョン内で思いっきり遊んでレオ様とネノ様の元へ戻ったら、「メル、帰宅するって言った時間過ぎてる」とネノ様に注意された。楽しいなと思っていたら帰ると言っていた時間を過ぎてしまっていたみたい。

 ネノ様に注意されたので、今後、言ったとおりに戻るように気をつけようと思うのだった。




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