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ツアーの開催とパーティーの準備 ⑰

 パーティーが楽しいものになればいいなと思う。

 着飾っているネノと一緒に参加できるだけで楽しいことであるのは間違いないだろうけれど、面倒な貴族が居ないとは限らない。そういう存在のことをネノは気にしないだけど、俺はネノの夫として、ネノが不愉快になるようなものは取り除きたい。

「レオ、何考えてる?」

 俺が考え事をしていたら、ネノが俺にくっついてそう問いかけてくる。

「貴族は面倒なことを言う人もいるかなって」

「いるかも」

「俺がそういう相手からネノのことは守るよ。貴族だろうとネノに嫌な思いさせる人は許せないから」

「ん。ありがとう。私もレオのこと、守る。私の方が貴族との対話、慣れてる。それに『勇者』に文句言う人少ないから」

 俺の言葉にネノはそう答える。

 当たり前の話だけど、『勇者』をやっていた時のネノを俺は見ていたわけではない。それ以外の期間はいつでも一緒に過ごしていたからその半年間の間には、俺の知らないネノがいるわけだ。

 こうして一緒に外を見て回っているからこそ、俺の見れなかったネノのことを垣間見ることが出来て嬉しいと思う。きっとネノは貴族たち相手でも本当に最低限しか喋らなかったのだろうなと思う。簡潔に、言いたいことだけを喋る。

 それはネノが『勇者』だからこそ、許されていた対応である。

 ネノは可愛くて、まっすぐで、人を惹きつける魅力で溢れている。だから『勇者』として過ごしていた時に俺の知らない沢山の人たちを魅了してきたんだろうなと改めて思う。

 うん、そんなネノが俺の隣に帰ってきてくれて、俺を選んでくれたこと。本当に幸せなことだよな。

「レオ、にこにこしてる」

「ネノが俺の隣にいて、幸せだなって。なんかこうやってパーティーに一緒に参加できると、俺の知らない『勇者』をやっていた頃のネノを知れるなって嬉しい」

 たった半年で『魔王』を倒したからこそ、ネノには色んな逸話がある。俺が知っているのは噂で聞いたことと、ネノが話したことだけだ。でもきっとネノが特に気にも留めていないけれど、周りにとっては偉業であることなんて沢山あるんだうなと思う。

「結構、話したよ?」

「でもほら、実際にパーティーに参加したり、周りから聞かされないと分からないことってあるだろ?」

「そうかも。私も離れていた間の、レオのこともっと知りたいって思うもん」

「俺は村でのんびりいつも通り過ごしていただけだけどな」

 『勇者』として『魔王』を倒したネノとは違い、俺は半年間お金を貯めながら村で生活していただけだしなぁ。正直一日一日の細かいことなんて記憶に残っていないぐらいである。

 ……なんか、半年の間のことでネノに話したことないことあったっけ?

 散々話した気がするけれど、細かい点だと話してないことはあるかもしれない。

「あ、そういえばさ。村に移住したがっている人とかはいたなぁ。田舎だし、不便だろうけれど『勇者』に憧れているって言ってたっけ」

「ふぅん」

「本気か分からないけれど、次に戻った時には村に住んでいるかもな」

 俺とネノの故郷の村は田舎である。それでいて都会暮らししかしたことない人からしてみれば本当に不便だと思う。昔から村に住んでいる人たちは生きていく術を知っているけれど、そうじゃないと大変だからな。

 ネノが帰ってくる前に移住したいと言っていたその人は、家族を説得したり準備をするなどと言って一旦今住んでいる場所に帰っていったのだ。結局、村に住むかは俺は知らない。

「『勇者』、憧れ、なんで?」

「ネノが戦っているところ、見たって言ってたよ。もしかしたらどんどん移住者も増えるのかもな」

「そっか。……私、レオに話してないこと考えたけど、分かんない」

「思い出した時とかでいいよ。それに凄く小さなことでもいいし」

「んー……」

 ネノは周りに対する関心が低いから、あまり覚えていないのかもしれない。

「私、早くレオの所帰るしか考えてなかった。レオに会えないの寂しいとか、そういうのばっかり。魔物倒して、必要な交流しただけ」

 本当にネノらしいなぁとその言い草に思う。

 折角参加するので、パーティーで客観的に見たネノがどういう感じだったかとか、ネノが気にも留めていないやり遂げたことの話とか、そのあたりも色々聞けたらいいなと思うのだった。

「レオ様、ネノ様、何話しているのー?」

 ネノとのんびりしていたら、別の部屋で本を読んでいたメルがやってきた。

「パーティーの話。メルの衣装も決めたからな」

「ん」

 俺とネノがそう言えば、メルは楽しそうに笑った。

「今度参加するっていうパーティーの衣装? うわっ、動きにくそう! なんかすぐ破れそうじゃない?」

「大丈夫だ。パーティーでそれだけ衣装が破れるほど動き回ることはないから」

 パーティーを何だと思っているのだろうか……。メルが普段遊んでいる時のように思いっきり動き回れば、確かに破れるかもしれない。ただそれだけ動きまわることはまずないだろう。

 そうして俺たちはパーティーについての話をしばらくしたのであった。


 ――パーティー開催まで、間もなくである。









  第四章 冒険者の街と宿経営 完

 


長くなりそうなので、一旦ここで章区切ってます。

第五章も引き続き、冒険者の街とダンジョンにまつわる話になります。

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