ツアーの開催とパーティーの準備 ⑧
「レオ、ただいま」
「おかえり、ネノ」
ネノは宿へと帰宅すると、俺の方に寄ってきてにっこりと笑う。
他のものにめもくれずにこちらにくるネノが本当に可愛い。その後ろにはメルや冒険者たち、ツアー客たちがいる。ツアーの客たちは一日歩き回って疲れたようだ。後、お腹を空かせている人も多そうだった。
まぁ、ダンジョン内を歩きなれてない人が歩き回ったら疲れるだろうからなぁなどと思う。
準備していた食事を並べたら、皆、喜んで口にしてくれる。
「レオ、ダンジョンの中はやっぱり不思議」
「何か面白いものでもあったのか?」
「ん。私、見たことない現象。突然、魔物が消えたりしてた」
「へぇ」
「半透明とかじゃなくて、消滅。なんでか分からない。ダンジョン内だけかも」
ネノは俺の隣で食事を摂りながら、そんなことを言う。
俺も一緒になって食事を摂る。自分で作ったものだけど、美味しい。ネノも「レオのごはん、やっぱり美味しい」と嬉しそうにしている。
「ダンジョン内だけで突然消えるってなんだろうな。何かそういう仕組みでもあるんだろうか」
「どうだろ? ダンジョンって、普通の場所と異なる場所だから色々ありそうだけど、仕組みわからない」
「俺もさっき不思議なもの見つけたんだよなぁ」
俺はそう言ってネノが居ない間に見つけたあのひし形の石みたいなものを見せる。灰色に変わったままである。
「なに、これ?」
「土を掘ったら出てきた。黄色で、動きもしていたが、急に灰色になって動かなくなった」
「不思議」
ネノは俺が説明をすると、不思議そうな顔をする。俺も本当にこれは何なのだろうかと不思議で仕方がない。
「ネノの見た急に消えた魔物のことも、この石に関しても解明出来たら面白そうだよなぁ」
「うん。ダンジョンにどのくらい関わりがあるか分からないけど」
「こういう細かい発見がもしかしたらダンジョンの根幹にかかわるかもって思うと面白そうだよな」
「うん。私もそう思う。他の人にも、聞いてみる?」
「そうだな。ダンジョンによく潜っている冒険者たちなら、知っているだろうから」
そういうわけで食事を終えた後に聞いてみることにした。ちなみに今、俺とネノは二人で食事をしている。メルは冒険者たちと一緒に食事をしている。冒険者たちとメルは結構仲良くしている。まぁ、メルと模擬戦をした冒険者ばかりなのでそこで交流を持つようになったのだろう。
「あと、結構皆、怖がってた」
「ダンジョン内をか?」
「そう。私やメル、それに冒険者もいる。だから、魔物出ても大丈夫」
「大丈夫だって頭では分かっていても実際に魔物を目にすると怖いんだろうな」
「そういうもの?」
「ああ。そういうものだ。ネノは『勇者』をやっている時にそういうのには遭遇してなかったのか?」
「たまに。怖がりすぎって思ってた」
「そっか。次にツアー客入れる時は、もっと事前説明を詳しくするようにした方がいいかもな。あとはメルの強さとかを事前に見せとくとか」
「メルが魔物倒したら皆、びっくりしてた。宿に連れて行くまでに戦ってたと思うのに」
「結構強い魔物だったのか?」
そう問いかけたら、その魔物の名前を教えてくれた。
その魔物は一般的に見て危険なものであった。この宿に来るまでの道中では見かけないであろう魔物なので、そんな魔物をメルが倒したことに驚いたのだろう。
人の姿をしているメルは本当にただの綺麗な少年にしか見えないのだ。あとメルの性格や雰囲気を見るとそんな風に強い風には見えにくいだろう。実際にまだ幼体なのもあり、メルは凄く無邪気だからなぁ。
「冒険者たちも頑張ってた。でもあんまり強くない魔物にも苦戦してた。あれだとダンジョン潜るの、大変そう」
ネノはそう言いながら少し不思議そうである。
苦戦しそうな魔物がいるダンジョンにわざわざなんで入って、冒険者をやっているんだろうと思ってそうである。
「そういう苦労をしてでもダンジョンに潜りたいんだろうな。ここは夢がある場所だから」
「ふぅん。レオは、さっきの石以外には何かあった?」
「木に擬態した魔物には襲われたな。同種の魔物をどんどん呼ばれて少し大変だった。全部どうにかしたけど」
「仲間呼ぶ系は、ちょっと厄介」
「だよなぁ。全部倒したけど、宿の周辺にいたか?」
「ううん。いなかった」
「ならよかった。後は掃除とか、宿を整備したりぐらいしかしていなかったなぁ。ネノは他に何かあったか?」
「特に目立ったことはなかった」
ネノはそんな風に言っているけど、おそらくツアー客たちにとっては驚くようなことは色々あったんだろうなとは想像が出来る。
ネノにとっての目立ったことと、ツアー客たちにとってのそれは違うだろうから。
ひし形の石について聞く際に、感想色々聞いてみようかな。
「レオ、明日はツアー客にどうする?」
「一応いくつかパターンは用意してあるから希望を聞いてからだな」
「早く聞かないと、すぐ寝るかも」
「皆、疲れてそうだもんな」
明日の事をネノと俺はそんな風に話すのだった。