ツアーの開催とパーティーの準備 ④
「レオ、美味しい」
「それならよかった」
俺の作った料理を美味しいと言ってにっこりと笑うネノ。
ネノは基本短い言葉を発することが多いけれど、ちゃんと自分の気持ちは口にする。俺の料理に対しても毎回感想を口にしてくれていて、本当に可愛い。
「街で宿だと、お客さん多い。良いこと。でも今みたいにレオとゆっくりするの少なくなる。だからダンジョンでの宿、楽しくていい」
またネノが可愛いことを言っている。
思わず笑みがこぼれてしまう。
そうしていると、どこからかぐぅうううと大きなお腹の音がした。
ネノはそれに関心もないのか視線も向けない。俺がそちらを見れば、ダミニッテさんがいる。どうやらお腹がすいているらしい。ちらちらこちらを見ているのは食事を摂りたいからだとは思う。
「レオ、何処見てるの? 私と食事中。私のことだけ見る」
「うん。俺、ネノのことだけ見とく。ネノは俺の方をじっと見てて可愛い」
「レオのこと、見ていると幸せ」
ネノはじーっと俺の方ばかり見ていて、そんなことを言って小さく笑う。
ダミニッテさんと会話してネノはちょっとうんざりしていたんだろうなというのがよく分かる。ちょっと甘えた様子のネノを見ていると、俺も幸せな気持ちになる。
「俺もネノを見ていると幸せだよ」
俺とネノが話している間も、じーっとダミニッテさんから視線が向けられている。
……ご飯が食べたいなら言ってもらえれば準備するんだが、先ほどネノに怒られたので話しかけにくいのだろうか。
まぁ、ネノは俺とゆっくり食事を摂っているのを邪魔されたら少し不機嫌にはなるかもしれないけれど。
あまりにもお腹を鳴らして、こちらを見ているので流石にしばらくしてから声をかけることにした。
「――ダミニッテさん、お金払ってくれるなら準備しますよ。すぐ食べたいなら残り物になりますが」
「……お願いします」
声をかければそう言われたので、食事の準備をすることにする。
「レオ、優しい。自分から言わないのなら放っておいてよかったのに」
「流石にあれだけ見られたら気になるからなぁ」
そんな会話をネノと交わした後に、キッチンに立っているわけだけどじーっとネノがずっとこちらを見ている。俺がご飯の準備をしているのを見ているのが楽しいのか、時折笑っている。
ひとまず簡単に作れそうな炒め料理を作ってみる。
ダミニッテさんはお腹がすいて仕方がない様子みたいだし。
でもあれだな。冒険者ってダンジョンに入る時は保存食などを持ち運んでいたりするものだろうけれど、それらは持ってきていなかったのだろうか? 今回はこの宿に辿り着いたから問題はなかったけれど、辿り着かなかったら自分で狩って、料理をしてとしなければならなかったと思う。……考えなしにネノがいるダンジョンだからと潜ったのだろうか?
牛型の魔物のお肉と野菜をいためたものと、パンを用意してダミニッテさんの前に出す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お礼を言ったダミニッテさんは、そのままそれを口にし始める。本当に勢いよく口にしている。途中でむせたりしないかと心配にはなった。
ダミニッテさんへのご飯を作った後はネノの元へと戻る。
「レオ、お疲れ様」
ネノがそうやって迎えてくれるだけで嬉しくなった。
「レオ、記念品の加工、どんなのがいい?」
「持ち運びしやすい小さめのものか、大きめの目につくものが良いかだよな」
「うん。どっちでもよさそう。一旦、小さいの作る? ツアーごとに、記念品変えるのもあり」
「そうだな。その方がいいかもな。あとはちゃんと盗み防止の加工はしなきゃだけど」
「それはそう」
あまりにも目立つ特別なものにすると、それを盗もうとするよからぬ輩などもきっと出てくるだろう。世の中、そういう悪いことを行う人はいないわけではないから。
「ネノ、俺もネノが作った記念品欲しいな」
「うん。私とレオの分も作る。記念品、折角だから取っておきたい。ちょっと特別なものにする」
ネノも俺と同じことを思ってくれているのか、そう言ってくれる。
こうやって思い出のアイテムが増えていくのは良いことだよな。
「私、記念品の準備してくる。レオ、何する?」
「宿泊客の対応とか俺がしとく。だからネノは作ってていい」
「うん。レオ、あの冒険者の対応もする?」
「そうだな」
「じゃあ、注意してからいく。レオ、あまりにも目につくようなら追い出して」
「うん」
ネノはこれから記念品の準備をしてくると言っていた。ダミニッテさんのことを少し警戒しているのか、注意している。ネノが姿を消した後に、ダミニッテさんが俺に嫌なことをしないかと心配しているのだろう。
ダミニッテさんはネノから注意をされて緊張した面立ちでこくこくと頷いていた。
そしてネノはそのまま部屋へと籠っていった。
残されたのは、俺とダミニッテさんと、食堂で食事をした後会話を交わしている宿泊客だけである。




