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『勇者』だと知られてからのこと ④

 俺とネノがパーティーに参加するという噂は、街にすぐに広まっている様子だった。

 それは領主が『勇者』であるネノと懇意にしているというのを示すためであろう。それに伴い、商人たちが俺たちの元へよくやってくるようになった。

 ネノはそういう商人たちに「パーティー用の衣装のリスト、作って。それあとで届けて」とだけ言ってそれ以上話は聞かなかった。

 冒険者の街であるこの場所では、あまりそういう貴族向けの商会は少ないらしい。その数少ないパーティー衣装に携わっている商会と、あとは近隣の街からも営業しに来ているらしい。

 ネノ相手にどうにか商品を売りたいと必死なのだろう。あとネノって『勇者』として過ごしてきた時も必要な時以外はパーティーに出たりしていなかったみたいだから。

 冒険者の街、リュアジーンにとって『勇者』という存在はより一層特別なのかもしれない。

 戦闘職の者が多いからこそ、圧倒的な力を持つ『勇者』に焦がれるとか、そんな感じなのかも。

 ……というか、商人たちの中には「お代は要りません」と言っている者も一部いた。

 こういう商人はネノがパーティーでドレスを着てくれればそれでいいと思っている様子である。ネノが自分の商会の衣装を着てくれればそれだけで宣伝になると思っているからだろう。ネノは払うって言っていたけど。

「レオ様、ネノ様、パーティーって美味しいもの沢山あるの?」

 メルに関してはパーティーに参加するように言えば、そんな風に楽しそうにしていた。

「そうだな。良いものが沢山あると思う。ただメル、ちゃんと大人しくするんだぞ?」

「僕だってちゃんと大人しく出来るよ!」

「嫌なことを言われたら俺かネノにいうようにな」

「そういう人いるところなの?」

「俺とメルはネノの付属品だと思っているような連中もいそうだから、中には何か言ってくる連中もいるかもしれない」

 俺がそう言ったらメルは驚いた顔をする。

 あくまで俺とメルは、ネノを招待するための付属品の扱いをしてくる人っている気がする。

 俺は貴族と全然関わったことがないけれど、どういう感じなのだろうか? ネノと一緒に参加するから心配はしていないけれど、ネノやメルが不快に思うことを言ってくる人間が居なければいいと思う。

 ネノと縁を結びたくてパーティーに呼ぶわけだから、そういう不愉快な連中はあまりいない……と思いたいけど。まぁ、そういう連中が居たらすぐに帰ればいいだけだが。

「そういうの居たら嫌だよ! というか、レオ様は凄いのにそうやって侮る人間は馬鹿だよ!」

「俺はネノと違って、何かを成したわけではないからなぁ」

「レオ様もネノ様と同じぐらい凄いもん! それに僕のことも侮るのは嫌だよ。人間なんて僕がちょっと小突いたら死ぬのに、生意気だよ!」

「メル、本当に大人しく出来るか? 出来ないなら留守番させるけど」

「やだよ、僕も行く! ちゃんと大人しくする」

 ……本当に大丈夫か? と思うものの、まぁ、メルが大人しく出来なかったところでそれはそれでどうにか出来はするけれど。

「メル、本当に我慢できないことあるなら、ぶっ飛ばしてもいい」

「本当? じゃあ、そうする」

 というか、ネノが本当に我慢できないことならと許可出しているし。

「ネノ様も綺麗な恰好するんだよね? キラキラした感じ?」

「ん」

「僕キラキラしたもの集めるの結構好きなんだよなぁ」

「メルにも買ってあげる」

「ありがとう、ネノ様!」

 メルは衣装に関してはどうでもよさそうだが、光物に関しては興味があるらしい。ドラゴンは割と宝石とか蓄えているイメージ。メルも宝石類は好きなのだろう。

「ねぇねぇ、レオ様、ネノ様、ダンジョンの中にはいついくの?」

「これから行く予定。それからしばらくは街に戻る気はない。けれど、便りは来る予定だからメルにはダンジョンの入り口と宿を往復してもらうことになるかもしれないけれど、いいか?」

「うん! 全然いいよ。その間、ダンジョンで思いっきり遊んでいいってことだよね!」

「まぁ、その辺は問題ないけれど、あんまり人に迷惑かけすぎないようにな」

「そのあたりはちゃんとする!」

 そんな会話を交わした後、俺たちは宿を一度チェックアウトしてダンジョンの奥へと向かうことにした。

 宿屋のおばあさんには残念がられたけれど、ダンジョンの中で宿をやると言ったら「流石だねぇ」と関心された。街で宿を運営する際はお客さんとして来てくれるとも言っていた。

 昼間からダンジョンの方へと向かったので、色々話しかけられたりした。

 大体はばっさりとネノが有無を言わさぬように断っていた。しつこい連中は黙らせてたし。

 ダンジョンに辿り着いたからは奥の方へとどんどん下って行った。

 ひとまず三十階層までどんどん進み、そこは森のエリアなので木を伐採して平地を作る。そしてそこに宿を出して、魔法を行使する。魔物が宿内に入ってこないようにすると、俺たちは開店の準備を進めた。




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