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道中 3

「む、村を出た? 『勇者』様は何処に向かうつもりなのですか??」

「決めてない。レオと行きたい所いく」

「レオとはこちらの人の事ですか?」

「うん。レオと一緒に、行きたい所行く。時々は村戻るけど、当分は戻らない」

「えええぇ……私は『勇者』様の出身地の村で商売をするように父様から命を受けているのですが……。『勇者』様が村を出られるとなると、どうしたら……」

「知らない。私居なくても、私の出身地ではあるから、商売したら?」

 ネノは狼狽する茶髪の少女、アレグラに対してばっさりとそういう。

 正直人が目の前で亡くなるのは目覚めが悪いのもあって、助けただけなのでついてこられるのも面倒である。

「そ、それもそうですね! ではこちらを! 何か御用があれば、是非ともホラン商会をご利用ください!!」

 それにしても、この商人一行、俺やメルに対して関心はないらしい。やっぱり、『勇者』としてのネームバリューは凄いのだなと思った。まぁ、『勇者』であるネノが居るからってことで俺やメルに意識がいっていないみたいで特に話しかけてこない。

「うん。そうする。もう行っていい?」

「ええ、大丈夫ですわ! では、またお目にかかれる日を楽しみにしております!!」

「うん」

 アレグラは嬉しそうに声をあげて、そのまま、俺とネノの生まれ育った村へと旅立っていった。

 『勇者』であるネノに挨拶が出来た事で満足したようで、それ以上俺達に何か言う事はなかった。

 商人一行が去った後に残るのは、俺達と盗賊達だけだ。

「じゃあネノ、こいつら連れて進むか」

「うん」

 ネノとそんな会話をする。盗賊の連中は魔法で体を浮かせて、次の村まで運ぶことにした。

 途中で捕えられた盗賊たちが目を覚まして煩かったので、喋れないようにネノがしていた。

「もうすぐ次の村」

「そうだな。とりあえず食堂とかするなら村より大きい街だよな」

「うん。そっちが良い」

「大きい街で建物作ってしばらくやって、それから移動するなら収納すればいいよな」

「そうだね。土地を借りればいいだけにしたい」

 二人で会話をしながら歩く。その隣でパタパタと翼を広げて飛んでいるメルは後ろをちらりと向いていう。

『中々シュールな光景だよね、これ。ネノ様とレオ様の和やかな会話の後ろで、人間達が浮いているとかさ。さっさと殺しちゃえばいいのに』

「殺すより資金にしたほうがいいよ」

「そうそうお金はあるだけ困らないだろ」

『そうだけど。というか、最悪、僕の鱗でも売ったらお金稼げるんじゃないの? 母様が言ってたよ? 僕の鱗とかって人間には凄い高いんだって!』

 メルは簡単にそんなことを言う。

 確かに竜の素材は高値で取引されるとは村長も言ってた。そんな高価な素材を簡単に売れば? とか言うあたり、メルはいつか人にだまされるのではないかという気にもなってしまう。

 それに、

「気が進まない。お金は、自分で稼ぐもの」

「そうだよな。あんまりメルの事を金稼ぎの材料にしようとは思わないし」

 なんというか、お金は自分で稼ぐものなのだ。俺とネノはそういう認識なのだ。だからこそ、メルの素材をあてにしようという気は今の所ない。まぁ、自分で魔物退治をしてその素材を売るならともかく、メルの素材を売る気はしないというか、気が進まない。

「メルそんなこと言ったら、悪い人間、だまされるよ?」

 ネノも同じ事を考えていたらしく、メルに向かってそんな事を言う。

『いやいや、僕、流石に誰にでもこんなこと言わないからね? ネノ様とレオ様は……えっと、結構無茶ぶりするけれど、流石に僕が死ぬまで素材剥いだりとかはしないでしょ? そういうの知っているからだよ!!』

「まぁ、いつでもやろうと思えば殺せるしな」

『確かにそうだけど、その言い方なんなの!?』

「殺さないからびびるなって。少なくとも幼馴染みたいなもんだし、そんな必要がなければ殺さないって」

『必要あるときって、何なの!?』

「俺とネノと敵対した時とか? それ以外は特にない」

『そんなこと、僕がするわけないじゃん!! こわすぎるからね!?』

 メルは大きな声を出して、俺の言葉に返事をする。

 まぁ、でも尻尾は美味しくいただいてはいるけれど、俺やネノに敵対する事がなければメルの事を殺したりとかはするつもりはない。

『レオ様達って……怒らせたら怖そうだけど、案外沸点高いよね。中々怒らないから安心なんだけど』

「まぁ、別にそんな怒ることもないし」

「うん。別に、怒ることない」

 メルの言葉に、俺もネノもそう答える。特に、怒るような事はない。

 俺はネノと楽しく過ごせればそれだけで幸せなのだから、それが覆される事がなければ怒る事なんてないと思う。多分、ネノも同じ気持ちだろう。

 

 そんな風に話しながら進んでいれば、ようやく道の先にあった村へとたどり着いた。



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