表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/221

ダンジョンに潜る ⑤

 今日もダンジョンの下層へと進んでいく。

「んー。あんまり強くない。面白くなーい」

 メルは詰まらなさそうな声をあげながら、ダンジョンの魔物を蹴散らしている。

 今日もメルは元気である。俺とネノもダンジョン内の魔物を倒したりしているけれど、メルの方が気合十分である。

「よっぽど奥まで行かないとメルが楽しめる相手はいないだろうな」

「じゃあ、ずっと奥まで行きたいなぁ」

「俺たちはもうすぐ宿を開くけど、その間メルはもぐりたかったらずっと潜っててもいいけど。良いストレス発散にはなるだろうし」

「そうだね! でも一人で潜れるかな?」

「俺たちが宿を始めれば、メルが『勇者』と一緒に居る少年だって広まるし、大丈夫だろ」

「それもそうかー」

 そんな会話を交わしながら俺たちは奥の方へとどんどん潜っていく。

 ボスに関しては交互に倒したりした。七十層ぐらいまで降りてみたけれど、今のところ特に苦戦はしなかった。

「メル、右」

「うわっ、しかけが発動したよ!! これで死ぬ人いるのかな?」

「いると思う」

 七十五層目ぐらいで、罠が発動した。

 何がきっかけで罠が作動したかは分からなかったが、一気に飛んでくる矢だった。

 毒が塗ってあるらしいそれは、普通の人なら死を迎えるような恐ろしい毒っぽい。ただメルにとってはどうでもいいものらしい。寧ろその毒を味見していた。毒に関してもメルは効かないからな。

 ネノはネノで罠に対して涼しい顔で対応しているし。

 そうやって罠の対応をしたりしながら奥へと進んでいっていたら、苦戦しているパーティーを見かけた。

 身に着けている防具や武具が性能がよさそうなものなので、それなりに名の知れた冒険者たちなのかもしれない。その冒険者たちがワイバーンに襲われている。

 複数体のワイバーンに襲われていて、悲鳴をあげている。

 メルが目をキラキラさせる。

 よだれが垂れているところを見るに、食糧として見ているらしい。

「ねぇ、レオ様、ネノ様、あれ食べていい?」

「いいぞ」

「じゃあ」

「って、ちょっと待った。今、ドラゴンの姿になろうとしているだろう。それはなしで。あとでかぶりつくのはいいけど、ひとまず倒すのはそのままの姿で倒してからにしろ」

「はーい」

 メルは本来の竜の姿に戻ってから、ワイバーンにかぶりつこうとしたらしい。ダンジョン内は広々としているので、本来の姿へメルが戻っても問題はないけれど……流石に襲われている冒険者たちの前でそういう姿に変わったら大騒ぎになってしまうから。

 メルは元気よく返事をしてからワイバーンたちにとびかかった。

 そして悲鳴を上げている冒険者たちは、ワイバーンたちを蹴散らしたメルに目を見開いている。

「き、君は……」

「ねぇねぇ、レオ様、ネノ様、これ僕が全部もらっていい?? 食べる!」

「いいぞ」

 メルは冒険者たちのことを無視して、俺に話しかけていた。

 でもその冒険者たちがいなくなるまでは我慢しようと思っているらしく、人の姿のまま静かに待っている。

 待てされているペットか何かのようである。

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ」

「怪我はしていますか?」

 数名の冒険者たちが俺の言葉に頷く。怪我を治した方がいいだろうから、回復薬を渡した。すぐに飲み干して怪我が治った。

 その冒険者たちは高価なものだからと、街に戻ってからその分の支払いはしてくれるらしい。

「……その、君たちはもしかして本当の『勇者』夫妻じゃないか? この街には『勇者』夫妻を名乗る者が多くいるが、君たちは本物に見える」

 そんなことを言われたので、俺はどうしようかとネノを見る。

 やはりこの階層まで降りてくることが出来るような高位の冒険者だからこそ、そういう風に俺たちが『勇者』夫妻だというのが分かったらしい。

「ん。でも秘密」

「ああ。分かった。この街で本物の『勇者』パーティーがいるなんて大騒ぎになるからな」

「そのうち、宿開く。それまで、秘密」

 ネノはそれだけ言って、「早くワイバーン食べたいなぁ」などと言っているメルを見る。

「メルがワイバーン、おやつにする。驚かないで」

「え?」

 ネノは冒険者たちに『勇者』夫婦だとばれたからか、そんな風に言ってメルの方を向いたまま頷いた。

 メルは嬉しそうな顔でドラゴンの姿へと戻る。

 それと同時に冒険者たちは悲鳴をあげそうになって、なんとかそれをおさえたようだ。ネノから声をあげないようにと言われたからだろう。

『食べる!!』

 メルは嬉しそうな声をあげて、ワイバーン数体をバリバリ食べている。

 冒険者たちが青ざめた顔をしているが、メルは満足そうだし、ネノも嬉しそうなので良しとする。

 そしてメルがおやつ(ワイバーン)を食べ終わると、俺たちは助けた冒険者たちを連れて地上に戻った。

 その助けた冒険者たちはそこそこ街で有名だったらしく一緒にいることに驚かれた。

 まぁ、俺たちが冒険者たちに助けられたと誤解されていたのは良かったと思う。俺たちが助けただと宿を始める前に目立ってしまうからなぁ。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ