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ダンジョンに潜る ③

 ドラゴンであるメルを満足させるようなボスというのは中々出てこない。それも当然だろう。寧ろメルを満足させるボスがどんどん出てくるレベルのダンジョンなら、誰も攻略など出来るはずがないしな。

「んー、あんまりおもしろくないなぁ」

「メル、ダンジョン攻略に面白いも面白くないもない。でもダンジョンにいるだけでも面白いこと多いと思うけど」

「ネノ様は楽しい?」

「ん。レオと一緒だから」

「ネノ様は本当にレオ様が大好きだよね!」

 ネノはメルの言葉に、小さく笑う。

 本当に俺のネノは可愛い。俺もネノの言葉に嬉しくなって笑った。

「それにしてもダンジョンって不思議な場所だよな」

「うん、不思議」

 そんな軽口を聞きながら、俺たちはどんどん下へと下っていく。

 途中で魔物に襲われている冒険者に遭遇した。そのまま死なれてもなぁと思って、一応助けておく。ただ助けない方がよかったかもしれない。

 どうやらその襲われていた冒険者は、面倒な連中だった。

 貴族のお遊びというか、そんな感じのようだ。俺にはよく理解出来ないことだが、こういったダンジョンで結果を残すことで貴族社会でも優位に立てたりするらしい。わざわざ死ぬかもしれない真似をしてまでそういうことをするのはどうかと思う。しかも自分の実力というよりも、強い冒険者で囲んでダンジョンに潜る人が多いみたいだ。自分の実力で潜れなければ誇るものではないと思うけれど。

 自分自身が潜らず専属契約を結んでいる冒険者たちだけで潜るのならばまだアリだろうけれども……。

 俺たちは帰還スポットまで送って別れようとしたのに、中々面倒な連中だった。

「わたくしが貴方たちを雇いますから、もっと下まで連れて行きなさい!!」

 何で命令口調なのだろうか、と思う。でもそれこそ貴族としての当たり前の傲慢な態度と言えるだろう。

 俺は平民だし、王侯貴族とのかかわりなんてネノ関連でしかない。今思えばテディは偉そうだし、ちょっとおバカな雰囲気を醸し出していたが、此処までではなかった。

 こういう場所でも貴族としての品位などを大切にしているのか服装も、冒険者としてのものではない。貴族の令嬢だと分かるものである。年は俺たちと同じぐらいだろうか? ダンジョンに潜るにしても男とか、もっと戦える存在とかを潜らせることは出来なかったのだろうか。

 そして俺たちがそれに頷くのが当然と言う態度は正直鼻につく。

「嫌。帰還して」

「え?」

「お嬢様になんて口を!!」

 ……ちなみにだが、よっぽど金を出し渋ったのか想定外のことがあったのかこのお嬢様の雇ったであろう冒険者たちは既に事切れていたり、怪我をしていたりである。後ろの冒険者たちは今すぐにでも引き返したい雰囲気を醸し出している。

 このお嬢様たちは俺たちを雇ったとしても怪我人たちはどうするつもりだったんだろうか? 放置? そう思っている俺の目の前で、ネノが押し込んで生きているものたちを帰還させていた。ネノの勢いに押されて、お嬢様たちはそのまま帰還していった。

「何だかダンジョンから出たら煩いかもな」

「ん。でも関係ない」

「レオ様とネノ様に、ああいうこと言うなんて馬鹿だよね!」

 ダンジョンから出た後に、あのお嬢様たちに絡まれる可能性はあるが、まぁ、それはそれだろう。あまりにも面倒だったらこの街からさっさとでても問題がないわけだし。

 それにしてもああいう態度でダンジョンに潜っているのならばあのお嬢様たちは悪い意味で有名だったりするのだろうか? ダンジョンから出たら情報収集だけしておこうかな。

 頭の片隅にその情報を留めておかせることにする。

「ねぇねぇ、ネノ様。僕ね、ぶっ飛ばそうかと思ったけど我慢したんだよ」

「ん、ああいうの、ぶっ飛ばすと面倒」

 ネノはそう言いながらメルの頭を撫でている。

 まぁ、明らかなお嬢様をダンジョン内で何かすると面倒そうだもんな。それにしても助けられておいてああいう態度だと、助ける方もやる気がなくなりそうだ。

 そんなことを思いながら引き続きダンジョンを下へ下へと降りていく。

 その途中で先ほどのお嬢様たちのように救援を必要としている冒険者たちもいた。助けておいた。彼らは先ほどの貴族と違って、お礼をきちんと言い、報酬ももらえた。

 あの貴族たちはそういうものはなかったが、ダンジョンで救援されれば対価を払うのは当然らしいと俺たちが助けた冒険者が言っていた。

 あとその助けた冒険者たちに聞いたところ、最近少しだけダンジョンの魔物達が強力になっている傾向があるらしい。

 それでそういう普段より強力な魔物に遭遇して命を落とすものや行方不明になるものなどもいるんだとか。それの調査依頼も冒険者ギルドから出されているらしいが、俺たちは登録していないので関係ない話だろう。



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