冒険者の街に到着 ①
「何だか馬車に乗るのも久しぶりだね。ネノ様、レオ様」
「ああ。そうだな」
「ん」
俺たちは火山を後にして、馬車に乗っている。
街道に出て冒険者の多い街――リュアジーンを目指している。歩いて、冒険者の街への乗り合い馬車のきている村にたどり着いたので、馬車に乗ってみることにしたのだ。
その目的の街はそこそこ遠いみたいだしな。
ちなみに他にも乗り合い馬車に乗っている客はいるが、ネノが『勇者』だと気づいていないのか騒ぎにはなっていない。別にバレたところで何もないけれど。
自分用の馬車も購入してもいいかもなぁ。それでドラゴンの姿のメルに引かせるのも面白いのかもしれない。いや、まぁ、メルを使うならそのままメルに乗った方が早そうだけど。ただメルに乗って移動すると周りの景色とか見れないからな。こうやってゆっくり見て回る方が色々発見もあるしいいものだよな。
馬車に乗っている人たちの数は少なかった。
だけどそういう人たちも『勇者』の話をしていた。
『勇者』であるネノがしばらく人前に姿を現わしていないことは、それなりに噂にはなっているらしい。俺たちが宿を始めたことも噂になっていたっぽいし、その後消息がつかめなかったので話題にはなっているようだ。
これ、冒険者の街に宿を置いたら益々噂になりそうだな。客がくるなら全然いいけれど。
「おっ、魔物が近づいてきているね」
「そうだな」
「冒険者の街の周辺の馬車だと、周りの魔物どうしているんだろう?」
冒険者の街と呼ばれる場所は、それだけ魔物が多いということだろう。そういう場所だからこそ、魔物に襲われないための対応はしているだろう。
なんて考えながら、気配を探っていると魔物の気配がなくなった。誰かが倒したのだろうか。
「近づいてきたら面白かったんだけどなー」
メルは、魔物が乗り合い馬車に近づいてきた方が面白かったなどと言っていた。この乗り合い馬車に乗っている普通の客にとってみれば魔物何て近づいても欲しくないだろうが……メルは退屈なのかもしれない。
「メル、退屈なら冒険者の街でやりたいこと考える。そういう話だけでも楽しい」
「そうだね! ネノ様。冒険者が沢山いるってことは魔物の素材を使ったものとか沢山あるのかな?」
「ん。あると思う。有名な冒険者とかもきっといるはず」
「それは興味ないかなー。だってレオ様とネノ様の方が絶対に強いもん」
ネノとメルがそんな会話をしながら笑いあっている。
周りでその会話を聞いている人もいただけれど、冗談を言い合っていると思っているようだ。
ネノは『勇者』だと知らなければ可愛い女の子だし、メルもドラゴンだと知らなければ美少年にしか見えないだろうからな。
魔物の素材を使用した道具や装備で面白いものがあったり、特産物を使った料理があったりとかするんだろうか。そういうのを学べたらもっと宿も盛況するだろうしな。そう考えると俺も楽しみになってきた。
俺とネノが面白く戦えるような相手もいたりしたら、それも面白いし。まぁ、あんまりそういう相手と遭遇したことはないけれど。
そうやってネノとメルと会話をしながら乗り合い馬車に揺られてしばらくして、冒険者の街へとたどり着いた。
とても活気があふれる街である。
人が沢山いる分、俺たちのことが今のところ目立っていない。
これでネノのことが『勇者』だって発覚したらすごく目立つんだろうけれど。人が多い分、ネノと同じ真っ白な髪の人もそれなりにいるから、公に言わなければ目立たないのかもしれない。
「ネノ、数日はのんびりするか?」
「ん。それもあり」
正直お金に関しては困っていないので、数日は宿も経営せずにのんびり過ごしても問題ない。
「レオ様、ネノ様、じゃあ宿泊まる?」
「それもいいし、街の周りで野宿してもいいかなって思っているけど、ネノとメルはどっちがいい?」
「私は宿泊まりたい。参考にする」
正直宿に泊まろうが、野宿しようがネノが一緒なら問題ない。でもネノが宿に泊まりたがっているので、どこかの宿に泊まることにする。折角だから、街の隠れ家のような宿を探してもいいし、街一番の大きな宿も探してもいいかな。
「じゃあどういう宿がいいか探してみるか」
「うん」
「ネノはどういう系統のがいい?」
「あんまり騒がしくない所。あと面倒なのがいない所」
「まぁ、それは大事だよな」
人が多い街なので、ネノと手を繋ぐ。ネノは反対の手でメルとも手を繋ぐ。特にメルははぐれそうだし。
ちょっと人が混んでいるエリアから外れて、俺たちは裏通りの方に向かう。裏通りとはいえ人はそれなりにいるけれど、先ほどの通りよりは少ない。
そこで街の人たちに宿について聞いた。
この街には宿が沢山あるらしい。その中でその女性の知り合いのやっている宿があるということで、そこに向かうことにした。




