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道中 2

 俺とネノと、メルはひたすらに道なりを歩く。騎士達に追いつかれると面倒だろうという事もあり、最初は駆け足で動いた。それなりに進んでからはゆっくり歩いている。

『ねー、早くつきたいなら僕に乗ってもいいんだよ?』

「メルに乗ったら、騒がれそう」

「そうそう。メルは目立つドラゴンだからなぁ」

 そう言ったらメルはちょっと残念そうだった。役に立ちたいとでも思っていたのかもしれない。

「立札発見」

「左右に行けるみたいだな。両方に村があるみたいだけど、どっち行きたい?」

「どうしよう?」

「俺はどっちでもいい」

「私も、どっちでもいい」

「「メルは?」」

 ネノと同じ言葉を口にしてしまった。

 メルはネノと俺に見られて、えっという顔をしている。

『なんで僕に聞くのさ!? いいけどさ! でも僕どっちの村もよく知らないよ。決めた後から、あっちが良かったとか怒ったりしない?』

「しない」

「しないから、決めろ、メル」

『もー、じゃあ適当に勘で行くからね。じゃあ、右!!』

 メルが右に行く事を決めたので、俺達は右の道を進む事にした。この先には一つの村があるらしい。

 その村を俺達は目指す。

 ネノと一緒にこうして道なりを歩いているだけでも、何だか嬉しい気持ちになってならない。ネノと手を繋いで、共に居れる事に俺は心が温かくなって仕方がなかった。

 この先で、ネノと一緒に沢山の思い出を作っていけるのだと思うと楽しみで仕方がなかった。

 

 そんな風に先の事を考えている中で、誰かの悲鳴が聞こえた。


「ネノ」

「うん」

 俺が名を呼べば、ネノは心得たとばかりに頷く。そして二人で悲鳴が上がった方へと駆け出した。

 丁度、俺とネノがその悲鳴の上がった場所にたどり着いた時、目の前に広がっていたのは一組の馬車が盗賊に襲われているところだった。

 その馬車は装飾が施されていて、何人かの騎士が倒れていた。

 盗賊達の数が多いので、護衛達は対応が出来なかったのだろう。まだ、何とか立っている護衛はいるけれども上手く対処出来ていないようだ。俺達の住んでた村って田舎だし、都会ほど警備が安定しているわけではない。俺はあまり村から出ていなかったから把握していなかったけれど、盗賊が力をつけていたのかもしれない。

 まぁ、いいや、とりあえず助けるか。

「ネノ」

「うん」

 俺とネノは、その言葉と同時に護衛達にも盗賊達にも悟られないように動いた。

 メルは『……ちょっと、待ってよ』と小さな声をあげながらついてくる。

「《光の矢ホーリーアロー》」

 ネノが一言呟けば、光り輝く何かが盗賊達に向かって飛来する。それは『勇者』であるネノが一番適性の高い《光魔法》によって生み出された矢。

 ネノはまるで簡単な事をこなすかのようにその魔法を生み出しているが、それはネノだから簡単に出来る事だ。

 俺はネノが魔法で攻撃を繰り出し、盗賊達の気を引いているうちに、襲われている者達の事を《時空魔法》で移動させる。盗賊達の側から一瞬で移動したのもあって、襲われていた者達は「え、どういうこと?」「な、何が起こったの?」などと言った声が聞こえてきたが、一旦放置する。

 ネノが盗賊達に傷を負わせて、行動不能にする。

 殺す事は簡単に出来るけれど、確か、盗賊とかはしかるべきところに突き出せば報奨金が手に入るはずだ。それもあってその場で殺しはしなかった。

 そもそも殺そうと思えば簡単に殺せるだけの力量差があるのだから、無理して命を奪う必要もない。

「終わり」

 ネノがそう口にして、盗賊達を魔法で拘束する。

 俺はそんなネノに近づいて、「お疲れ」とだけ声をかける。

「レオ、こいつら突き出そう」

「おう、そうしよう」

 俺とネノはそんな会話をして、ようやく襲われてた連中に目を向ける。

「大丈夫?」

「盗賊達はこちらで突き出すのでもう行ってもらっていいですよ?」

 生き残っているのは両手で数えられるほどの人数だ。

 一人は俺達と年が対して変わらないぐらいの茶色の髪を持つ少女。

 馬車を操る御者。

 そして護衛だろう男たち。

 その者達は固まったままこちらを見ている。そんな中でネノをまっすぐに見据えながら、少女が震える体で口を開いた。

「あの……貴方は『勇者』ネノフィラー様ではないでしょうか?」

「そうだけど、それが?」

「わ、わたくしはホラン商会の娘であるアレグラ・ホラン。父様の命により、『勇者』様の出身地の村で商売をする事になったのです!! よ、よろしければ村まで連れていってくださりませんでしょうか!?」

 『勇者』であるネノに話しかけるのに緊張しているのだろう、決意したような眼差しでネノを見ている。

 だけどネノはばっさり答えた。

「行先、村じゃないから、無理。すぐにつくから自分達で行って」

「え、村にはお帰りにならないのですか?」

「私、村出た。ついさっき。だからすぐには戻らない。すぐ着くから頑張って」

 その言葉に、少女や護衛の者達は驚いたような表情を浮かべるのだった。





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