第八話 ロリショタは世界を救えるよ。
キリがいいので短めです。
「見えてきたよ」
グレートウルフに襲われてから一時間後くらいであろうか、モルドさんが声をあげた。視線の先を追うと、そこには三メートル程の木の柵があった。柵の上からは、家の屋根らしきとんがりがちらちらと見える。
馬車が近付いていくと、足音を聞きつけたのか木の柵の僅かな切れ目からロリショタ達が顔を覗かせた。
「入口が見当たらないんですが…門とかあるんですか?」
そう、この村には入口が見当たらない。見回す限りの村の範囲はぐるっと柵で囲まれていて、隙間があるとすれば先程ロリショタ達が顔を覗かせていた20センチ程の隙間のみだ。馬車が通れるはずがない。
「いや、あれは…たぶん、入口を塞いでいるんだと思う」
言うが早いか、馬車が近付く毎に柵と柵の隙間が広くなっていく。なるほど、スライド式か。
「…普段は、門を塞ぐなんてことないんだけどね」
モルドさんが苦々しげな声を出す。
当たって欲しくはなかったが、モルドさんの読み通り村に何かあったらしい。
ガラガラと音をたてて開いていく門を潜る。馬車が完全に止まると、ロリショタ達が我先にと駆け寄ってきた。どのロリショタも一様に悲痛な表情をしている。
「モルドさん! お薬は無いの!?」
「グランドさんが…」
「っ!? グランドが!?」
御者席から飛び降りるように地面に着地したモルドさんは、布が被せられた荷を漁り、中から小さい壺のようなものを取り出した。薬だろうか。
ゆったりとした大人の男の印象であったモルドさんだが、グランドさんとやらの負傷に動揺しているようだ。
そんなに、そんなに大切か。
「…そんなに慌ててんじゃねえよ」
完全に置いてけぼりを食らっていた私は、渋い声がした方に視線を向ける。そこには、包帯とは言い難い、大雑把に切られた布を至る所に巻いているナイスダンディがいた。めっちゃ反動のデカい銃とか懐に忍ばせてそうな感じがあるワイルドダンディだ。
「グランド!」
「落ち着きの無いやつだな。ほら、チビ共もどいたどいた」
左手でロリショタの海を掻き分けてきたグランドさんは、ゆっくりとした歩調でモルドさんに近付いてきていた。
「…お前…」
「なんだぁ? いい男になってて驚いたか?」
鳶色の瞳が面白そうに細められる。
しかしその鳶色の片方は布に覆われていて伺えず、右腕に至っては通されるべき袖がだらんと伸びているだけだった。