第七話 首狩りしたいお年頃。
大剣に纏わり付いた血を大振りで弾き、緩く振り向いてモルドさんに微笑む。
いやん、私めちゃめちゃにダンディ。惚れちゃう。年上のダンディなおじ様とか、個人的にホモ抜きですごく好みです。
モルドさんはぽかんとしたまま、ただ私の視線を受け止めていた。
「馬、もう走らせなくて大丈夫ですよ」
「あ…ありがとうフォスト君…」
大剣を鞘に納めて座っていた位置に戻る。だんだんと馬の歩調はゆっくりとしたものになっていき、ウルフに襲われる前のスピードに戻っていく。
「強いんだね」
幾分か落ち着きを取り戻したのだろう、モルドさんが柔らかく微笑む。
ずっきゅん。
守りたい、この笑顔。
「そうですかね?」
「少なくとも私はグレートウルフを一刀両断する冒険者には会ったことがないよ」
武器の性能の良さから戦えるとは思ったんだがマジか。完全に武器頼みだったのに自分が強いのではと錯覚してしまう。レベル1だった気がするけど。あ、もうしかしたらグレートウルフの経験値でレベルが上がっているかもしれない。
来い、ステータスウィンドウ。
“名前:フォスト(フォスト①)
性別:男
種族:人族
レベル:7
HP:453/453
MP:118/118
ATK:73
DEF:68
AGI:60
INT:45
LUC:82”
レベルが6もあがっている。しかしながら、INTの上がりがよろしくない。このままでは脳筋になってしまうぞ。MPはあるから一応魔法は使えるはずなんだがな。
っていうかグレートウルフの経験値おいしいな。あと十匹は首狩りしたい。
それとなんだ、こう、具体的な数字で成長を見ると心做しか体が軽くなった気がする。単純な生き物ですまんけど。
「それにしても助かったよ。本当にありがとう」
「えっ? いえいえ、わた…俺…も、モルドさんにはすごく助けられましたし」
「そうかな?」
「物凄く助けられました」
あのまま草原にぶっ倒れてたら多分死んでたしね。
「まさかこの森でグレートウルフが出るなんて思わなくてね。今度から護衛雇おうかなぁ」
「…ああいう、上位?のモンスターって珍しいんですか?」
全然それとなくないが聞いてみる。モルドさんはフォストの事を冒険者だと思っているので怪訝そうな顔を向けられたが、そこは丁寧に教えてくれた。
「そうだね。この森は狭くてウルフを狩る村も近くにあるから、ウルフ自体の数があまり増えないんだ。だから、群れのリーダーになる上位種もあまり発現しないんだよ」
「なるほど」
つまり、上位種は群れが大きくなると出来やすくなると。ふむふむ、少し賢くなったぞ。
「…もしかしたら、村でなにかあったのかもしれない」
少し強ばった声色でモルドさんが言う。
「…と、言うと?」
「村には狩人がいて、ウルフが増えすぎないように適度に狩っているんだ」
狩人に何かがあり、ウルフを間引き出来ないからグレートウルフが発現したということか。
「…急ぎましょう」
「そうだね」
一瞬、手綱を握るモルドさんの手に力が篭ったのを、腐女子は見逃さなかった。