表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青色の下で・・・静岡聖陵編  作者: オレッち
第壱章~新たな出会い~
9/178

9話:練習試合

明輝弘と望月の会話から翌日のとある練習の日。

練習が終わると春瀬監督は選手らを集めた。


「今度の日曜日に練習試合を行うことになった」


その一言に選手らは驚き喜んだ。

待ちに待った試合に選手らは隣の者と顔を見合わせながらザワザワと話を始める。


「ほれ静かに。相手は沼津北高等学校で俺らが沼津まで行くからな」


「んだよ向こうが来いよ」


「バカ言うな。ここでは試合できる大きさのグラウンドは一つしかない。それにその日は他の部活が使う予定だからな。試合を組んでもらうだけ有難い話だろ」


とぼやく明輝弘に言葉を返す春瀬監督。

続いて春瀬監督は詳しい試合時間と集合場所を伝え解散となった。


部室では先ほどの試合の話で盛り上がっており、まずは対戦校がどんなレベルかで討論になっていた。


「なぁ山本、沼津北ってどうなん?」


「いや俺が知るかよ」


「え?そうなん?見るからに何でも知ってそうな顔だったからつい。眼鏡クイッとかやりそうだし」


「おい」


とコントを繰り広げる竹下と山本。

すると隣で先に着替えを終えていた青木がスマフォでチームのデータを調べており画面を見ながら話を始める。


「えっと、去年の夏は3回戦敗退で秋も…同じく3回戦。チームの特徴としては打撃が良いみたいね」


「なんか微妙、まぁ仕方ねえか。」


と青木の話につぶやく竹下。

すると竹下は俊哉のほうを向くと話しかけてきた。


「トシ。この試合で俺らがどの位かが分かるな」


「第一段階としてはね。まずは試合が楽しみだね」


と笑顔を見せながら話す俊哉。

そんなワイワイと騒がしい部室から明輝弘が鞄を持ち帰ろうとドアノブに手を差し出そうとした時、俊哉が明輝弘に向かって話し出した。


「明輝弘はどう思う?今度の練習試合。」


「ん?勝つのは当たり前だろ?俺がいるしな。」


「おぉ自信たっぷりだね。」


「当たり前だろ。自信がなきゃ言わん。」


と振り返りながら話す明輝弘にニコッと笑みを浮かべる俊哉。

竹下ら周りの選手は明輝弘の自信に満ちた言葉に少し動揺したのか静まり返るが、すぐに山本が口を開く。


「そんなら期待してもいいのか?」


「あぁ。遥か遠くまでかっ飛ばしてやるよ。」


「まぁ、そのくらいやってもらわなきゃ困るがな。今度相手投手の情報探してみるわ」


「いらねえよ、そんなん。誰であろうと俺はストレートを叩く。それだけだからな。じゃあな。」


と言いながら部室から出ていく。

そんな明輝弘が出ていった後の部室は少し静かになったが内田が口を開く。


「庄山君って、なんか一匹狼な感じだね」


「まぁ言われてみればそうかもなぁ。群れるの好きでは無さそう。」


と内田の言葉に青木が返答し今度は明輝弘の話に移り変わると、あーだこーだと様々な話が沸き起こってくる。

だがこの話題はすぐに熱が冷め、選手らはゾロゾロと部室を後に後にしたのであった。

そんな中、先に部室を出た明輝弘はというと帰りのバスに乗りながら今度の試合の事を考えていた。


(試合か。俺は四番固定としても、他のメンツがどうなるかだな。少なくとも俺の前には出塁してもらわなきゃ…って何考えてんだ俺。これじゃあ野球してんのが楽しくて試合も楽しみみたいになってる。だけど、前に秀樹が話してたこと。俺はこの目で確かめるまでは止めん。俺のプライドが許さん。)


と考えにふけこみながら揺れるバスの座席に座り帰路へと着く。



そして時は進み日曜日。

練習試合の日がやってきた。

聖陵の選手たちは練習試合を受けてくれた沼津北高校のグラウンドへと向かっており、バスを降りゾロゾロと高校の正門の前まで来ると明輝弘がハァっとため息をつきながらぼやく。


「なんで遠くの沼津に。。。」


「まぁウチじゃあ試合できる広さないし、第一グラウンドは他の部活があるしさ」


「そんなら草薙借りれば良いじゃん?」


「ハハハ。君は実にバカだなぁ」


と明輝弘の言葉に笑いながら答える秀樹。

その秀樹の横には俊哉が歩いており、何気なくではあるが明輝弘の方から話しかけた。


「俊哉」


「ん?何?」


「あぁ~、なんだ、お前の実力を見せてもらうわ」


「あはは。そう大した力はないよ俺には。」


「ん?そうなのか?(だったらこんだけの人数が集まる理由はなんだ?)」


と素っ気なく返事をする明輝弘。

彼は未だに俊哉と言う人物が分からないでいた。

第一印象とは全く違う評価が周りの人間から聞こえてくることに疑問を持っていた。


(第一印象は、正直言って“ホントに野球選手?”ってのが答えだ。だが、実力も無いのに強豪でスタメン張れるわけがないしな)


と考えにふける明輝弘をよそに俊哉は秀樹と話をしていた。


「ヒデは今日投げるんかな?」


「いや。先発は俺じゃあねぇよ?」


「あれ?そうなの?」


「あぁ。今日の先発は…」


と話をする秀樹。

そして時間が飛び場面は変わりグラウンド。

グラウンドのベンチ前では両校の選手らが集まり監督から話を聞いていた。


「よし。今日のスタメンを言うぞ」


とオーダー表を見ながら話をする京壹監督の口からは今日の試合のスタメンが発表された。

そのスタメンはというと、


1:早川・遊

2:山本・二

3:俊哉・中

4:明輝弘・一

5:秀樹・左

6:桑野・投

7:堀・右

8:池田・三

9:竹下・捕


となった。

先発には二年の桑野をマウンドへと上げ秀樹はレフトで先発出場。


(俊哉が3番か)


と考えるのは明輝弘。

自分の打順は四番であるのは疑いも無いようで、他の選手らを見ていた。


(こりゃ。俺が決めねばな)


と考える明輝弘をよそに試合は開始され両校が整列する。

聖陵が十数人しかいないのに対し沼津北はベンチ入りが20名にボール拾いや外野での見学がおり約40名ほどの選手がいる。

また、沼津北の選手らは聖陵の選手らを見下すかのような表情をしており、退屈ささえ見て取れていた。

両校が挨拶を終えまずは守備に着く聖陵の選手らがグラウンドへと散らばる。

緊張からか内野のゴロ回しがぎこちなく、池田は大きく逸らしてしまい明輝弘はボールが取れずチッと舌打ちをする。


「クソが。緊張してんな。てか謝れや」


とゴメンとも言わずにオドオドと硬い池田を軽く睨みつける明輝弘。

投球練習を終えいよいよ試合開始となる。


「よっしゃ初回!!しまってくぞ!!」


竹下からの激が飛び内外野から声が飛び交う中、試合が開始された。

かっこよくズバッと初回を三者凡退に仕留める!!


とはうまくいくはずがなく、聖陵にとっては最悪の展開になった。

先発の桑野は先頭打者からいきなりの四球で歩かせると続く2番打者にはフルカウントからの四球、3番打者に対しては竹下の構えたミットとは真逆の内角真ん中寄りのボールを弾かれ2点タイムリーを打たれ2失点。

4番に対しても制球が定まらず歩かせると続く5番に対しては入れに来た棒球を打たれ、またも二人のランナーを返し4失点。


そして今に至るわけである。

この展開にはベンチの京壹監督も驚きと言うよりも半分呆れ気味であった。


(ブルペンや練習ではコントロールが良いのに試合になると途端に乱れだす。。。やはり治らないか。竹下が受けてて調子が良いかなとは思ったが…)


としかめっ面をしながらベンチに座る京壹監督。

またグラウンドの選手たちもこの展開にはシンと静まり返っていた。

だが、そんな静寂を破った者がいる。


「桑野さん!!バッチ集中。良い球放れてますよ!」


とグラウンド全体に響き渡るような大きな声が聞こえてくる。

余りにも大きかったのか選手らがその声の主の方を見ると、そこにはセンターの守備に着いている俊哉の姿があった。


「大丈夫です!!打ち取っていきましょう!!これからこれから!」


次回へつづく。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ