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青色の下で・・・静岡聖陵編  作者: オレッち
第壱章~新たな出会い~
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45話:お前らの負け

 4回が終わり4−0と桐旺がリードした試合。

 試合は5回に入るも、桐旺の攻撃は手を休めない。


 打席には3番打者が入る。

 マウンドには秀樹が上がっており投球をするが、ここにきてコントロールが乱れ始めストレートのフォアボールでランナーを出してしまう。


 先頭打者に四球で歩かせてしまう秀樹はフゥッと大きく息を吐く。

 また額には大粒の汗が出ており竹下から見ても疲れが出ているのが見てとれた。


「ヒデ、疲れか?」

「いや、まだ大丈夫だ・・・」


 竹下の問いにそう呟く秀樹に、竹下はベンチの春瀬監督を見る。


「藍野、望月の球数は?」


 竹下の視線を見て春瀬監督は記録員をしている菫に秀樹の球数をきく。


「えっと・・・86球です」


(結構投げたな・・・フルスイングをしてると言ってもカットしたりボールは見送ったりと上手い野球をしているな・・・あとは、望月のスタミナ不足の面もあるかもしれないが・・・)


 春瀬監督は秀樹の続投を決めると同時に、再び長尾に投げ込みをする様に指示を出す。

 試合は再開され、打席には4番の瀧澤が入る。


(ここで瀧澤。2安打2打点で1本はホームラン。こんな打者に初めて会うぞクソが・・・)


 サインに悩む竹下。

 散々悩んだ竹下はボール気味のコースで勝負することを選んだ。

 アウトコースに構える竹下に対し、秀樹はセットポジションから一球目を投じる。


(真ん中に!!??)


 秀樹の投じられたボールは真ん中よりに来てしまう。


カァァァン・・・・


 瀧澤の振り抜かれたバット。

 はじき返された打球はセンターへ高々と舞い上がり、追う俊哉の遥か上を通過する。


「マジかよ・・・」


 そう呟く俊哉の目線の先にはバックスクリーンにボンと当たる白球。

 今日2本目のホームランは点差を突き放すツーランホームラン。

 ここまで甘い球は投げてこなかった秀樹が初めて失投をしたのだ。


「くそっ・・・引きすぎたか」


 そう呟きベンチから出て来る春瀬監督は投手の交代を告げる。

 ブルペンからそのまま長尾が向かい、秀樹は長尾にボールを渡すのそのままベンチへと帰っていく。


「すいません監督・・・」

「こっちこそ、すまなかった・・・続投を選んだ俺のミスだ」


 謝る春瀬監督の言葉は秀樹に深く刺さる言葉だ。

 裏返せば、監督は秀樹の事をこん回に関しては信用していなかった事にも受け止められる。

 だが秀樹は、そんな自分が情けなくて仕方がなかった。


(夏に続いて俺は、何てザマだよ・・・明輝弘に偉そうな事言う資格はないな・・・)


 ベンチ裏へと入り俯く秀樹。

 だが彼は泣かない。

 次泣くときは優勝したときだと心に決めている。


(それまでは・・・泣かない)


 心に強く誓う。

 秀樹はベンチへど戻ると、一番前で身を乗り出す様に声を出す。


「長尾!!頼むぞ!!」


 力強い声が飛ぶベンチ。

 マウンドを任された長尾。

 対する桐旺打線は、長尾に牙を向ける。


 5番の佐藤に対して長尾はストレートで押していくが



「ストレートだけで、押し切れると思うなよ?」


 三球目のストレートを打ち返す佐藤。

 打球はライト線を抜けていく二塁打となりいきなりピンチを迎えると、続く6番打者に対しては制球が定まらずスリーボールとしてしまう。

 そして入れに来たボールを弾き返されレフトオーバーの二塁打でさらに1点が入る。


 これで7−0と大きくリードを許してしまう。

 後続をどうにか打ち取りチェンジとした聖陵だが、点差は7点と広げられてしまう中、5回裏の攻撃は5番の早川から。

 マウンドに上がる佐藤はギアが上がったのかストレートの伸びが上がっていき早川を空振りの三振に打ち取ると続く6番堀は見逃しの三振に打ち取りツーアウト。

 打席には明輝弘が入る。


「打て〜明輝弘〜!!」


 美咲やスタンドの応援団から声援が飛び交う。

 左打席に入る明輝弘を見ると佐藤はキャッチャーからのサインを何度か首を横に振る。


(ん?何で勝負するんだ?)

(コイツは確か自称ストレートに強いんだろう?そんなら、勝負してやるよ)


 何度か首を振りようやく頷く佐藤。

 振りかぶった佐藤から投じられたボールはストレート。


「!!?」

「ストライク!!」


 初球に投じられたストレートを見逃す明輝弘。


「おいおい、ストレート待ちならさ、最初から待っとけよ」


 そう呟く佐藤。

 続く二球目はスライダーを投じ、これも見逃してしまい追い込まれる。


(ストレートに強いってのはよ・・・変化球を混ぜられた中に投げられたストレートに対応できるって事なんだよ・・・お前はただのストレートしか打てない打者だ、まぁその顔じゃあ・・・分からなそうだがな!!)


 佐藤の投じたボールはストレート。

 明輝弘はバットを振り抜く。


ギィィン・・・


 バットに当たった打球はフラフラと打ち上がり、ファーストの瀧澤のグラブへと収まる。


「アウト!!」


 明輝弘をファーストフライに打ち取りチェンジ。

 佐藤は打席で呆然と佇む明輝弘を睨む様に見ると、明輝弘も佐藤の視線に気づいたのか目が合う。


「佐藤・・・」

「はっ、その目は止めろよ。別にお前なんか、気にしてねぇよ」


 薄ら笑いを見せあざ笑う様に目線を逸らす佐藤。

 明輝弘は彼の行動と自分のこの体たらくに怒りを覚えた。


(何故だ・・・何故ストレートが打てない・・・彼奴はストレートを投げたのに・・・何故だ・・・)


 次の打席こそは、そう思う明輝弘。

 しかしこの試合で明輝弘の打席はもう回ってこない。


 6回表の桐旺の攻撃。

 1番から始まる打席だが長尾は1番、2番となんとか抑える。

 しかし3番にライト前のヒットを許すと今日3安打の瀧澤に回る。


 ここは点差を開かせたくない場面、しかし長尾の投じたストレートを瀧澤は打ち返すとライトの頭を越えていく当たりとなってしまった。

 その間に一塁ランナーが三塁を回りホームインし6点目が入る。

 その動揺を逃さないとばかりに5番の佐藤もレフトオーバーのツーベースを放ちランナーの瀧澤がホームを踏み7点目。

 これで7−0と点差が更に開いてしまった。


「7点差・・・」


 5回で7点差が開いたスコア。

 この回の桐旺の攻撃は終わったものの聖陵ナインは意気消沈。

 スタンドの応援団も黙ってしまっていた。


 その後の聖陵の攻撃は淡白だった。

 8番桑野から始まる打線だが佐藤の前に空振り三振。

 9番の青木もストレートとスライダーに掠ることができずに三振を喫してしまう。

 これでなんと佐藤は12個の奪三振を奪う好投を見せていた。


「佐藤、もう降りるか?」


 ベンチに戻る佐藤に監督が降板をするかどうかを聞く。

 いつもの佐藤ならすぐに降板を承諾していただろう、しかし佐藤はすぐに答えを言う。


「いえ、投げますよ」

「投げるのか?」

「ええ。彼奴らに引導渡してやりますよ」


 そう話しブルペンで投げ込みを再開する佐藤。

 そして試合は7回の攻防を迎える。


 7回を終えて7点差のまま回を終えるとコールドが成立してしまう。

 聖陵の打順は2番の山本から。


「さて、終わらすか」


 マウンドに立つ佐藤。

 彼のピッチングは衰えることをせずノビのあるストレートを投じ山本をセカンドへ詰まらせるゴロで仕留める。

 アウトを一つとり次は3番に入っている長尾。

 代打を出したいところだが春瀬監督はベンチメンバーを見て断念し、そのまま長尾に行かせる。


 一球、二球目と空ぶる長尾。

 そして最後の三球目の変化球を打ち上げてしまいショートへのフライになってしまい、これでツーアウトとなる。


「俊哉・・・」

「トシ・・・」


 ベンチが見つめる中、打席に向かうのは俊哉。

 今日の俊哉は無安打。

 右打席に入る俊哉は佐藤をジッと見据える。


(コイツだけは、この中で諦めてないって顔だな。やっぱ面白えわ、横山だけは!)


 佐藤の投じた一球目はストレート。

 俊哉はこの球をファールにする。

 二球目、三球目とファールにする俊哉にベンチの選手のみならずスタンドの応援団も固唾を飲んで見守る。


「ファールボール!!」


(これで8球目かよ!!コイツしつこい!)


 若干イラつく佐藤。

 だが俊哉は意地でも食らいつく。


「ファール!!」


 なんとここまでで12球をファールにした俊哉にスタンドからはどよめきが起こる。


(くそ・・・次で決める!)

(次で打つ!!)


 互いの思いが交差する。

 そして佐藤の投じた13球目はインコースへのストレートは今日最速だった。



キィィィン・・・



 球場に打球音が響く。

 白球は舞い上がり佐藤は打球の方向を振り向く。

 そして打った俊哉は・・・


 悔しそうに俯きながら走り出した。


「ショート!!」


 佐藤の指差す先にはショートが手を上げて待つ。

 そして打球はショートのグラブの中へと収まると審判から「アウト」のコールがされた。


「ゲームセット!!」


 県大会初戦の桐旺戦。

 聖陵学院は0−7の7回コールド負けで秋季大会に幕を閉じたのであった。



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