第1話:坂道
桜が咲き乱れる4月。
静岡市北部の方にある小高い丘の上に広い敷地の学校が建っていた。
学校の名前は静岡聖陵学院高等学校
約60年前に開かれ、静岡でも有数の進学校としても有名である。
また部活動には力は入れてはいるが主だった功績を上げる部活動は多くない。
敷地は広く、グラウンドは大と小の二つを保有しており体育館が二つ、また剣道や弓道等武道系を行う建物がある。
校舎も広く作られており1年・2年・3年が学年ごとに区切られ、簡単に言えば校舎を半分に区切り前半分は1年生で後ろ半分は2年生。
そして三年生はその奥にある別の建物となっている。
そんな学校の校門の前から伸びる一本の大きい坂道があり、新しく新調された制服を身にまといながら上がっていく生徒たちが歩いており、その群衆の中に横山俊哉もいた。
テクテクと歩く俊哉の隣には彼の幼馴染である赤みのかかった髪と目がパッチリとした可愛らしい女の子の宮原マキと中学からの友人で、ロングツインテールでスレンダーな体格ながらキリッとした目が特徴の神宮寺明日香が一緒に歩いていた。
「ねみゅい・・・」
「もぅ~。寝坊するからだよ~」
と一つ大きな欠伸をしながら歩く俊哉にクスクスと笑いながら隣を歩く宮原マキ(以降よりマキ)そして神宮寺明日香(以降より明日香)はため息をしながら俊哉に向けて言う。
「ホントよ。入学早々からだらしないわねぇ」
「・・・そういう明日香もギリギリだったよね?」
「い、今はいいでしょ?間に合ったんだし」
とどうやら明日香本人も寝坊したのかマキからの突然の言葉に焦りながら言い訳をする明日香。
そんな中、俊哉は大きく伸びる坂道を眺めながらボンヤリと考えていた。
(長いなぁ・・・でもここでダッシュとかしたら足腰の訓練になりそう)
と考えながらようやく校門前に着いた俊哉らはある事実に気が付いてしまった。
「あるじゃん・・・道」
と俊哉が左の方を向くと、正面の坂道よりも断然緩やかで歩きやすそうな道があった事に俊哉もため息が出た。
そんな朝からお出来事が起こる中で、俊哉達は正門をくぐり同じ新入生が群がる所への向かうと下駄箱が沢山並んでいるスペースの壁に新入生のクラス表が張り出されていた。
「み、見えん・・・」
と沢山の生徒が群がる後ろの方で爪先立ちをしながらのぞき込む俊哉。
ギリギリ見えるか見えないかの攻防をしている中、ようやく先に群がっていた生徒らが各教室へと向かい出し人が少なくなると爪先立ちなしでクラスを確認できるようになった。
「俺は・・・あった。C組か」
1年C組と書かれた紙に自分の名前があるのを見つける俊哉。
次にほかの生徒の名前を軽く確認するとマキと明日香の名前も見つけ知り合いがいることに安堵の表情を浮かべる俊哉。
「あいつ等は、違うクラスか」
と呟く俊哉。
アイツらとは以前会い、この高校へ入学するきっかけを作ってくれた竹下隆彦と山本寛史である。
彼らとはどうやら違うクラスらしく早くても放課後か部活初めの日。
不安だらけの高校生活。
だが俊哉は期待に満ち溢れていた。
この後、彼がどんな出会いをし仲間を見つけていくのか。
俊哉の高校生活は今始まりを迎えたのである。
次回へ続く。