第6話 王都へgo
カフカ制作から1年半、僕が6歳半になった位に夕食の席で突然母に告げられた。
「雪解けがだいぶ進みましたし、そろそろ領主会議の時期なので私は明後日から王都へ向かいます。ユークリッド、貴方も一緒に来なさい」
この言葉を待っていた!これで退屈な篭の鳥生活に終止符が!別に不満な訳じゃないけど如何せん暇だから。外出れないし。外出れないし。それに…
「王都…ということは父上にお会い出来るということですね!?」
「ええ。お父様に手紙で王都行きの旨を伝えた所、成長した貴方に会えるのを楽しみにしてるとのことでしたよ」
「お前はジークフリート様とは六年ぶりになるな。お前が産まれた頃に参られて、その直後に常冬の季節に入る兆候があったから完全に雪に閉ざされる前に王都に蜻蛉返りしてしまったからな。きっとお前に会うのを首を長くしてお待ちになられてるに違いない」
「えぇ、そうでしょう」
父については会ったときの楽しみに、と言われて王都で働いてることと名前しか知らない。何しろこの地域は常冬の季節になると完全に領地を出ることも入ることも難しくなる。たまに母や叔父の間で出てくる話を総括すると地位もなかなか地位も高くて権力があるっぽい(宰相ぐらいのポストかな?)からこの地域に足止めされると国にかなり響くから泣く泣く中央に戻ったらしい。僕の意識が覚醒する前に帰ってしまったので実質会ったことも無いに等しい。
「という訳で明日1日は王都行きの準備をしましょう。といってもユークリッドは特にすることはないと思いますが」
まあそりゃそうだ。殆ど屋敷の人が準備してくれるさ。あっそうだ…
「王都にカフカを連れていってもいいでしょうか?」
「カフカ…というとあのスライムですか」
ちょっと悩むような仕草をする母。カフカはつい最近存在がバレた。サラマンダーでうろうろさせてたら使用人の人に屋敷のが逃げたと思われて、檻の中に捕まったのを擬態を解いて抜け出そうとしたらスライム化した現場を見られてしまった。使用人さんがパニックになったところを領地視察から帰ってきた叔父に見られて退治されそうになったから慌ててて止めに入り、存在発覚となった。
隠してるつもりはなかったけど、無断で魔法生物を作ったのでちょっとびっくりされてしまった。まあ、とくにお咎めはなかったけどね。
「まあ、良いでしょう。ただ嫌う人も少なからずいるので滞在中はなるべく別の姿をとった方がよろしいでしょう」
「やった!ありがとうございます!」
スライムはトラウマの人とかいるからね。パニクった使用人さんも目の前で食われているところを見たことがあるらしくて。悪いことをしたなぁ。
そしたら少しでも擬態可能時間を増やした方がいいか…機能追加のいい機会かもしれない、
よし、明日はカフカのメンテナンスを兼ねて術式追加をやろう。
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はい、明けて翌日。王都出発を明日に控えた今日は実験に費やすことにした。
…なんか屋敷中バタバタしてるなか申し訳ないけど手伝おうとしても全力で断られるし、心苦しいけど仕方ないってことで。
今僕は半年前カフカが見つけた屋根裏部屋にいる。かなり長い間誰も使ってないらしく、初めて入ったときは外の寒さであちこち凍ってた。サラマンダー化したカフカに溶かしてもらって外からの外気を結界(最近使えるようになった)でシャットアウト、老朽化してる部分と一時的に氷魔法で補強してなんとか時間潰しぐらいには滞在できるようになった。それでも僕は種族的に寒さに体制があるっぽいから大丈夫だけど一般の人、少なくとも前世の僕だったら5分と耐えきれないだろう。
でも引きこもって本を読んだりちょっと魔法の実験するには最適なので書庫から魔術理論や件の魔法生物の本を持ち込んで秘密基地みたいな感じになっている。今もメンテナンスのためにそこにいる。
カフカだけど、あれ以来地道に魔力を追加して無事に僕に擬態することが出来るようになった。作った時はどうやら術式の制御に集中し過ぎて実際に注いだ魔力はかなり少なかったらしい。今や魔力量は屋敷で僕と叔父を除いて一番多いアイザックに並ぶぐらいだ。
ちなまに母は生まれつきに魔力量が少ない。魔力は僕らの種族にとって生命力と変わらないからよく体調を崩してしまうらしい。
それは置いといて、今や1週間くらい放置しても干からびなくなってきた。それでも王都にどのくらい滞在するのか分からないから領地に置いてくのは不安。色々試したいし。
という訳で今回追加する述式は分裂と硬化にしました。
分裂というのはそのままで本体と分体に分けられるようにすること。本体と離れすぎると消えてしまうけど離れられる距離は魔力量に比例するので、うまく行けば監視カメラみたいな感じもできるかなって。
そして硬化。これもそのままだ。ぷるぷるスライムボディから水晶ぐらい硬くなるらしい。これも魔力量に比例する。
なんでこれかっていうと遠くから狙われた時に生体アーマーみたいな感じで防御出来ないかなって。狙われるとは限らないけど。
ちょこちょこといじって、魔力量も増やして、術式追加っと。はい終了。早速試してみよう。
まず分裂。うん、問題なくできる。ちょっと分体の方離れてみて。
分体が部屋を出ていく。カフカと分体の間に極細の魔力の糸が出来て…あっ、切れた。
部屋を出て確認すると廊下の向こう側辺りに残滓?みたいなのが感じられるので大体5、6メートルか。というより糸みたいなのが見えちゃうのか…気を付けないと見えないくらいだけどこっちの居場所バレちゃうね。糸無くしたりできないのかな。
ま、それは保留にしといて、硬化の方。
うん、結構硬い。こっちは特に問題点は無いね。
どうしよう、今日の予定終わってしまった。
そういえばこの部屋どうしよう。使ってた形跡残さない方がいいかなあ…?
とりあえず持ち込んだ本は返そう。あっでも魔法生物だけは王都に持っていこう。メンテに必須だからね。あとは…誰も入れないように封印しとこうかな?見られて困るものはないけど勝手に使って勝手に修復したからめんどくさそう。
たしか封印術はこの本の…あったあった。なるほどなるほど。あっでもここをこうしたらもっと強固な封印に…
なんてことをやってたらこの部屋に何を隠してるんだってくらい無駄に強い封印かかかってしまった。これ僕でも開けられるのかな…?てか逆に使ってたことがバレるのでは?うーん…
まあ、もとから誰も近づかなかったところだし、いっか。入れない?沢山余ってる他の部屋使ってね。
さぁ本棚に戻しに行こう。