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第三十一話 『ホームズと旧友』

 夏だ、夏休みだ。

 トイレの花子さん以降、七不思議の情報は一切得られなかった。

 東堂もそれなりに尽力してくれたらしいが、結果は無し。

 七呪が発動する不安は常にある、だが未だその時は訪れない。


 もしかすると七不思議の噂を桜木が手に入れるまでは、呪いの時間制限は発動しないのでは無いか。

 楽観的な思考ではあるが、可能性としては十分に高い。

 正直、常に気を張っているのも疲れるのだ。

 ということで、とりえずその仮説を信じて行動しているワケである。


 さて俺の夏休み、予定としては図書館に入り浸る事になるであろう。

 だが生憎我らが誇る、都城の図書館はショボい。

 なので隣町、三股の図書館に来ていた。


 田舎度合いは圧倒的に三股の方が高いのだが、なぜだが図書館は豪華なのだ。

 距離は少し遠いが、自転車で行けない距離じゃない。


 そうこう思考をしている内に、三股図書館に着いた。

 田んぼ道を自転車で漕ぐのは、実に気持ちが良い。


 駐輪場に自転車を止め、中に入る。

 エントランスホールを通って、図書館に入る仕組みだ。


 おお、涼しい。


 これだけで来た意味があるというモノだ。

 水分を補給するためホールの自販機でサイダーを買い、半分ほど飲んでから図書館に入る。


 夏休みということもあり、図書館は公共施設なりの賑わいを見せていた。

 皆が皆、ある程度の礼節を持って読書に浸かっている。

 静かな賑わいである、妙に心地が良い。


 ここの図書館は、推理小説だったり古典だったりのジャンル分けがされていない。

 児童文学とか、歴史書とか、エッセイとかの大ジャンルは流石に分かれているが。

 並び方は単純、作者名のアイウエオ順だ。


 さて、とりあえずア行を探すか。

 無かったらカ行だな。


 目当てのシリーズはスグに見つかった。

 場所はカ行。

 推理小説でもっとも有名であろう、コナン・ドイルのシャーロックホームズシリーズである。


 推理小説に興味を持ったのは高校からで、実はまだまだにわか側の人間だ。

 なので、こういう有名所も見たことが無かった。

 夏休みを利用して、ホームズシリーズを読破しようと思っているのである。

 ホームズ好きをシャーロキアンと呼ぶらしいが、もしかしたら俺もそうなるやもしれん。


 楽しみだ。


 とりあえず、シャーロックホームズの冒険を読んでみよう。


――――


――


 面白い。


 おっと、東堂の口癖がつい漏れてしまった。

 気付けばもう夕方、時間を忘れるとはこのことである。

 本当は読んでから宿題をする予定だったのだが、いやはや。


 また明日来るか、幸い我が部活動、オカルト研究部は夏休み中の活動はない。

 部費も殆ど無いので、合宿的な事も出来ない。

 まぁ、オカルト研究部に合宿も何も無いとは思うが。


 本を借りて読もうかとも思ったが、流石に宿題をしないとマズい。

 腐っても進学校と言うべきか、宿題の量が渇いた笑いが出てしまう程多いのだ。

 A組は更に多いというのだから、桜木が心配になる。

 まぁアイツなら終わらせるだろうが。

 瀧は、うん、無理だろうな。

 光貴は何だかんだ言って、成績は俺より上だ、宿題もちゃんとやって来る。そのあたりを拗らせなくてなによりである。


 さて。


 帰るか。


 ホールから出て、空を見上げてみる。

 梅雨が明け、すっかり快晴となった夕焼け空。

 トンボが飛んでいて、何とも田舎らしさがある。

 まぁ、嫌いじゃないが。


 視線を前に戻すと、青のパステルカラーの自転車を漕いでいる少女が目に入った。

 自転車か、俺も金があれば買いたいところだが……ん。


 その少女に、俺は見覚えがあった。

 遙か昔に別れたキリ一度も会っていないが、それでも見間違えるハズが無い。

 あどけなさの残る、元気の二文字を象徴したかのような……。


 少女は曲がり角で姿を消した。

 気のせいだろうか、可能性としては別人の方が高いだろう。

 第一、アイツは見た目に反して運動出来る様な体じゃ……。

 いや、やらない後悔より、やる後悔だ。


 追おう。


 ママチャリで追いつけるかはわからんがな。


――。


 全速力で自転車を漕ぎ、彼女を捜す。

 田舎の利点として、細道が少ないというものがある。

 特に三股は大通りばかりだ。


 きっと見つけられるハズ。

 何と話そうか、久しぶりだな、とか、元気にしてるか、とか。

 病気は治ったのかとか。


 見間違いの線は俺の中で無くなっていた。

 それくらい、俺はそいつと会いたくて仕方なかったのだ。


――居た。


 曲がり角を曲がった所、パステルカラーの自転車から降りて、自販機で飲み物を買っている俺の旧友が。

 きっと飲み物はサイダーだろう、うん。


 自転車を漕ぎ進み、自販機の近くまで来ると、彼女もコチラに気付いた。

 とりあえず降りる。


「アックン?」


 どうやら、彼女も俺を覚えていてくれたらしい。

 アックンか、懐かしいな。

 懐かしい。


「おお、久しぶりだな、ナツ」


 ヤマナカナツミ、あだ名はナツ。

 最初男だと勘違いして、この男みたいなあだ名になった。

 本人はあまり気にしていなかったが、子供の頃と言えど酷な事をしてしまったと思う。


 ナツは、口を大きく開け、手を添えている。


「ホント!? ホントにアックンなの? 嘘じゃないよね、夢じゃないよね?」

 

 自身のほっぺを抓り、顔を歪めるナツ。

 身長は桜木より少し低いくらい、髪は子供の頃と同じでショートカット、地毛の茶髪で子供の頃一悶着あったな。

 胸は、無いな、うん。

 桜木を見ている分そう感じるのかもしれんが。


「あ! やっぱりアックンだ! エッチな所変わってないもん!」


「いや、別にそういうつもりで見たワケじゃ――おぅ」


 俺、こんな声出るんだな。

 ……これ前にも言ったぞ。


「久しぶり! アックン!」


 つまりだ、ナツが俺に抱きついて来たのである。

 

「……それ、もう止めた方が良いと思うぞ」


「良いじゃん! 友達なんだから!」


 友達、まぁそうだな。

 俺がタイムリープを初めて使うことになった相手、ナツ。

 そして、初めて俺がタイムリーパーであることを信じてくれた人間である。


「でも、やっぱりスッゴい変わったよアックン」


「そうだろうか」


 自分ではあまり気付かないモノだが。

 ナツは俺から離れると、じっくりと俺の体を観察し。


「えっとね、まず背が高くなった! あれ、これあたり前だね、たはは」

 

 自爆ツッコミは健全の様だ。


「あと、喋り方がおじさんっぽくなってる!」


「おじさんじゃないだろ、普通の高校生だ」


「普通の高校生は、そうだろうか何て言いません」


 そうだろうか。

 と、ここで桜木なら「そうです」と間髪入れずに返してくるのだろうな。

 ……というか、おじさんか。


「あとねー、ちょっと格好良くなったかも」


「んなワケないだろ、だったら今頃モテモテの人生を送っている」


「んー、周りは見る目がないなぁ、もう」


 どちらかと言えば、ナツの見る目が無いと思うぞ。


「ナツは変わらないな、そのまま大きくなった感じだ」


 と、まぁ何気なく言ったつもりだったが。


「……やっぱり、そうかな」


 顔に陰を宿すナツ。

 思ったより間に受けさせてしまった様だ。


「特に胸がな」


「アックン、言って良い事と、悪い事があるって先生から習わなかった?」


 ああ、これもよく言われたな。

 ナツは子供っぽく、拳に息を吐いて温めている。


「立ち話もなんだ、どこかで話さないか、お互い話したい事もあるだろ」

 

 勉強は、まぁ、明日で。


「あ、うん! どこで話そっか?」


「実は三股に詳しく無くてな、ナツに任せる」


「オッケー! じゃあさっき見つけた公園で!」


「おう、というか、引っ越したのって三股だったんだな、分かってればタマには会いに――って」


 俺の話を聞かず、ナツは自転車を漕ぎだした。

 まぁ、ナツらしいと言えばナツらしいが。


――――


――


「たはは、迷っちゃった」


「いや、地元なら迷うなよ」


 結果、俺達は迷っていた。


 カー、カー。


 カラスに笑われた気がした。

 いやはや。


 


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