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箱庭劇場  作者: ヤマダ
5/7

魔女の役割

「ありがとう、魔女さん。私を生まれ変わらせてくれて」

 そう言って駆け去って行った彼女は、理想の姿を手に入れた喜びできらきらと輝いていた。

 でも、喜ぶにはまだ早いのよね。アタシは笑顔で手を振りつつも、胸の内にはほんの僅かな陰りがあった。


 アタシが「魔女」を演じる時はいくつかパターンがある。例えば、悪者を懲らしめる時、罰を与える時、善人を助ける時、面白そうだったから、などなど。あげていけばキリがない。

 その中でも、一番厄介なのが今回のパターン。生まれ変わりたい、ってやつ。その願いを、輪廻の輪から外れたアタシが叶えるというのも皮肉なものだけれど。

 アタシは自分も他人も自由自在に変身させることができる。これは、庭師が世界にドラマを与え、ただただ眺めているであろう神様を楽しませるために与えられた能力だ。生き物だろうが無機物だろうが、大きさも素材も思い通りに変えられる、まさに、おとぎ話の魔女そのもの。いい魔女か悪い魔女かは、時と場所と、あと気分によって変わる。

 ただ、勘違いしないで欲しい。アタシが変身させられるのは姿形だけ。いくら美しい姿、立派な体に生まれ変わったって、心が伴わなければ意味がない。

 さっきの彼女だって、思いを寄せる人を振り向かせたいとアタシに頼み込んできたけれど、入れ物だけ好きになって貰ったところでそれは本当に幸せなのかしら。変幻自在に望んだ姿を簡単に手に入れられるアタシだからこそ、よく分かる。今の彼女はまだサナギの状態、美しいチョウに羽化するためには、姿を変えただけではまだ不十分。幼虫は、一番脆く危うい状態であるサナギから、命がけでチョウへと姿を変えるのだから。


 どうか、彼女が上手く飛び立てますように。気の遠くなるほど繰り返してきても、魔女はワリに合わないとつくづく思ってしまう。

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