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011

 ☆



 マーサさんが手を叩いて講義の終わりを告げ、続いてアリシアさんが抗議の場に立った。


「ここからは――《騎士》について実践的な話をします」


「はぁ、実践的な……話?」


「ええ、先ほどマーサが《騎士》について――《ナイト・ヘッド》の騎乗ができることと言いましたね? あれは《騎士》の持つ力の一端に過ぎません」


「力の……一端ですか?」


「はい。基本的に《騎士》の力とは《ステイタス》と呼ばれる――“五項目(ごこうもく)”・“四系統(よんけいとう)”によって判別されます」


「……ステイタス? ごこうもく……よんけいとう?」


「ええ、マーサ――」


「はいはい」


 アリシアさんがマーサさんを呼ぶと――頭一個分くらいの大きさをした、“透明な球体”をもってマーサさんが現れた。そして、僕の机の上にその透明な球体を置くいた。

 

 透明な球体の一部には丸い穴が開いていた。


「さぁ、この穴の中に手を入れてみて……」

 

 マーサさんに言われて透明な球体に手を入れると――

 不意に帯電したように右手が痺れ、激しい熱をもった。


「いててっ、これ……なんです?」

 

 僕は罠にかかった獣のように、慌てて手をひっこめい言った。

 燃えるように熱くて痛い手を擦ってみると、そこには何の形跡もなかった。


「《エーテル儀礼》よ。この透明な球体は“エーテルの結晶体”で、《ステイタス》を判別するの」


「……《エーテル儀礼》? ……《ステイタス》の判別?」

 

 僕は首を捻った。


「……これは、また――」

 

 透明な球体に現れた文字を読み解くように頷いたマーサさんが、黒板に向かって何かを書きだす。

 マーサさんが描きだした文字の意味がよく分からなかったので、僕は口頭でその意味を説明をしてもらった。


 そして、自分なりの解釈をもって黒板の文字を読み解くとこうなる――



《ステイタス》



“五項目”


 筋力 F

 耐久 E

 敏捷 C

 技能 F

 神秘 UN


“四系統”


 強化 F

 放出 E

 接続 UN

 構築 F



「こんな偏った《ステイタス》は……初めて見るわね。これじゃ、そこらへんの兵士や《ヘッド》乗りのほうが……よっぽど有能かもしれないわね」

 

 マーサさんにそんなお墨付きをもらった。


「そんなに……ダメな《ステイタス》なんですか?」


「ダメっていうわけじゃないんだけど……歪すぎるわね」


「ダメに決まっていますっ」


 首を傾げるマーサさんの言葉をかき消すように、アリシアさんが声を上げた。

 不機嫌や不愉快を体現したかのような表情を浮かべていた。


「《騎士》となる者の“五項目”に、“Dランク”以下があるんて信じられません。一つならともかく、三項目がDランク以下だなんて騎士の恥です」


「ねぇ、アリシア……アオト君はこの《テラス》に来るまで《騎士》でもなく、《騎士》のこと……何も知らなかったのよ。そんなことを言っても仕方ないでしょう? でも“神秘”と“接続”のランクが“アンリミテッド”っていうのはさすがと言うか……信じがたいわね?」


「“アンリミテッド”って何なんですか?」


「“ランク”の最高位ってことよ。際限がなく、測定が不能って意味ね。一つ付け加えると、アリシアでさえ“UNランク”は一つも有していない」


「マーサ、余計なことを言わないでください」


 アリシアさんが声を上げた。


「通常“Sランク”の上に置かれる“UNランク”だけど、実際には規格外のランクとされていて、その存在を確認したものはほとんどいないの。私も実際に見るのは初めてね」


「《エーテル儀礼》の判別が失敗したんじゃないですか?」


「だったら、あなたの“瞳”で見てごらんなさいよ」


「……瞳で見る?」


 僕が尋ねると、アリシアさんは厳しい視線で僕を見つめた。


「後で……実戦をもって教えてあげます」

 

 なんだかとても嫌な予感がした。


「だけど“接続”がUNランクってことは、クラスの適正は《アビエイター》になるのかしら? もう少し《ステイタス》の成長を見てからのほうがいいような気もするけれど」


「《クラス》と……《アビエイター》?」

 

 僕は次から次へと現れる新しい用語や単語の波に飲み込まれ、自分がアリシアさんやマーサさんの話を理解できているのか不安になってきた。


 マーサさんに代わりにアリシアさんが答える。


「《騎士》には、その“特性”や“適性”に合わせた《クラス》が存在するんです。《アビエイター》は、《ナイト・ヘッド》の“騎乗”に長けた《騎士》のことを指してそう呼びます」

「他にもあるんですか?」


「ええ、《アビエイター》の他にも――戦闘に特化し、白兵戦に長けた《スレイヤー》。知識を武器とし、戦術に長けた《プロフェッサー》。武具の使用や、道具の作成に長けた《クラフター》が、基本の四クラスとして存在しています」

 


《クラス》

 

《スレイヤー》    特性は“戦闘”。

《アビエイター》   特性は“騎乗”。

《プロフェッサー》  特性は“戦術”。

《クラフター》     特性は“作成”。



「五項目・四系統からなる《ステイタス》を判別し、最も能力を発揮できる《クラス》につくことが――《騎士》の最良とされています。もちろん、例外はいくらでも存在しますし、どの《クラス》にも該当しない《騎士》もいます」


「アリシアさんは……どの《クラス》に該当するんですか?」


「通常、《騎士》が自分の《ステイタス》や《クラス》を他言することはありません」


 アリシアさんはツンと澄ましてきっぱりと言った。


「何か理由があるんですか?」


「理由は簡単です。《ステイタス》や《クラス》の漏洩は、その《騎士》の弱点をさらけ出すことになるからです。騎士同士の戦闘においては、相手の《ステイタス》と《クラス》をいち早く把握することが、勝利を手にする条件の一つとるからです」


「でも……戦闘中にどうやって相手の《ステイタス》や《クラス》を把握するんですか?」


 アリシアさんは翡翠の双眸で――僕を見透かし、見通し、見定めるように貫いた。


「それでは……ここからは実戦で、直接――アオサキ・アオトの身体とエーテルで感じ取り、学んでいただきます」


「――――、…………へっ?」



 僕は間抜けな声を上げて、アリシアさんが言った言葉の意味を推し量りかねていた。

 


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